2005年5月14日
イシガレイ・マコガレイ
通称名 カレ
(石カレ、モカレ)
旬の時期 秋、初夏
漁場 伊勢湾内外の砂底・砂泥底
漁法 底びき網、刺し網など(参考:三重の遊漁と漁業のルール)
小売の形態 姿のまま、内臓処理、切り身
品質ランク 活け(生きている、あるいは活け締め)、野締め(漁獲時に死んだもの)
下ごしらえ 料理方法によって異なる(5枚おろし〜内臓抜きのみ)
料理 刺身、唐揚げ、煮付け、塩焼きなど
イシガレイ(石カレ)2005年5月12日撮影
鱗がなく、有眼側の所々に石のような堅い付着物がある。大型になり、独特の風味がある。

マコガレイ(モカレ)2005年4月26日撮影
細かい鱗が体表を覆う。イシガレイに比べ体型はやや細長い。上品で甘みのある身質。

名前の由来
県内では、ほとんどのカレイ類を総称して「カレ」と呼んでいます。ひどいところではカレイ類はおろか、ヒラメまでひっくるめてしまいますが、そういうところでは往々にしてカレイ・ヒラメ類を重要視していないようで、呼び名はその地域における「扱い」も端的に表しています。
さて、伊勢湾近辺で「石カレ」、「モカレ」と呼ばれる今月のおすすめ品について、「カレ」の前につく「石」や「モ」が、これらの魚の特徴を示していることになります。これら2種は比較的大型になり、かつ私たちの身近なところに生息していることもあって、釣りなどの対象としても親しまれているカレイです。方や有眼側に石のような堅い付着物があるイシガレイ、方や内湾の奥にすむマコガレイのことですが、前者はすぐに名前の由来が想像できても後者は「?」ではないでしょうか。(実は担当者も知りません)
カレの秘密
カレイやヒラメについて「表」とか「裏」という言葉を使ったことや聞いたこと、ありませんか?
でも、改めて考えると、魚の表や裏って変だと思いませんか?・・・
なぜ表や裏というのかは、これらの魚が明らかに違う面を持つ、すなわち色も付いていて目もある「表」と、真っ白で目もない「裏」に区別できるからでしょう。一方で、煮付けを食べるときなどよく分かりますが、骨格はタイなど一般的な魚とよく似ています。背骨をみてどちらが「表」かは分かるでしょうか?カレも外見と裏腹に内面は裏表のないヤツなんでしょうか???。
カレイやヒラメは、タイなどのように左右に平べったい(側扁:そくへん)形のまま横になって海底に這いつくばっています。この形で内臓を手前にして置いたとき、頭が左側にあればヒラメ、右側だとカレイです。つまり、マダイのような形から体の左側を下にして目を右側に集めたのがカレイ、反対に右側を下にして目を左側に集めたのがヒラメということで、外見上の「表裏」は体の仕組みからは「左右」ということになるのです。ご存じのように、目のある側(有眼側、表)は体表の色や模様を変化させて周りの景色に巧みにとけ込む能力を持っています。海底に化けるのです。一方、目のない側(無眼側、裏)はカレイもヒラメも真っ白です。こちらは海底から離れたときに下から見上げる生き物が海面の乱反射と区別しにくいようです。なんと海面にも化けているようです。さすが、海の忍者といわれるだけのことはあるのです。
ところで、卵から生まれてしばらくの間、カレイやヒラメはふつうの魚のように体を縦にして海を泳いでいます。当然そのときには体は左右対称なのですが、成長とともに海底に移動して横向きに這いつくばるようになり、目も移動して「カレイ」や「ヒラメ」の姿に変化(変態)するのです。人間からすると奇妙に見えるこの変態、変化自体は詳しく観察されていますが、どうしてカレイは右でヒラメは左なのか、その理由についてはよくわかっていないようです。
カレのすむ海
かつて伊勢湾の浅場には、「アマモ場」、つまりアマモという海草の茂みが広がっていました。「アマモ場」は海の草原で、生き物たちにとって、隠れ家やえさが豊富にある「生命のゆりかご」でした。小さな生き物が豊富な海は、海底に這いつくばって上に餌が来るのを待っているカレにとって、すみよいところだったに違いありません。「アマモ場」やその周辺はカレの良い漁場だったことでしょう。ひょっとすると、「モカレ」の「モ」とは「アマモ場」のことだったのかもしれません。もっとも、現在の伊勢湾ではアマモ場はほとんど姿を消し、「モ」とカレイを連想することは難しそうです。
また、夏場の伊勢湾では「貧酸素」という厳しい現実が海底の生き物たちに襲い掛かります。(貧酸素について、詳しくは水産研究部のサイトやみえのうみの伊勢湾のページ(伊勢湾セミナーの記事など)をご覧ください。)
かつてたくさんとれていた「カレ」は特に伊勢湾内で漁獲が減少していると漁業者は口をそろえています。今の伊勢湾は「カレ」にとって快適なところではなくなっているのかもしれません。一方、美味しい「カレ」がたくさん捕れるようになれば、伊勢湾が本来の力を発揮している証拠です。伊勢湾に注目し、海に優しい暮らしを実践すれば伊勢湾は少しずつ元気になっていきます。たくさんの「カレ」を美味しく食べる日はきっと来るはずです。
カレを食べる
イシガレイ・マコガレイの産卵期は冬、産卵場所は湾奥の浅場です。その前後には岸近くで過ごし、夏場は深みに遠ざかります(近年は貧酸素になるため伊勢湾で夏を過ごすのは難しいようです)。一般的に産卵前の魚は美味しく、産卵後は美味しくなくなります。カレの旬は、産卵前の秋と、産卵後にせっせと浅場で栄養を蓄えた初夏になります。(夏は美味しくても捕れなくなるという理由があるかも・・・)
カレの醍醐味は背腹に長くのびる「鰭(ひれ)」ではないでしょうか。砂場で暮らすために発達した背鰭、腹鰭は「縁側」とも呼ばれ、うまさも最高です。そこでおすすめなのが丸ごとあげてしまう料理。一見もったいないようにも思いますが、身も骨も美味しく最後まで食べることができます。背骨や頭の骨は身を食べてからもう一度揚げればサックリと風味よく仕上がります。刺身をとった後の骨もぜひ揚げてお召し上がりください。捨てればゴミですが、食べればごちそう。美味しくて財布にも環境にも優しいエコクッキングを試してみませんか。
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