イサキ
通称名 いさぎ
春から初夏
熊野灘
みえのうみホームページ 海の恵み情報で県内漁協の水揚げ量を公開中
釣り、定置網など(参考:三重の遊漁と漁業のルール)
一匹丸ごと
旨み、歯ごたえともしっかりとした白身
目や体表に透明感と張りがあり、体つきががっしりとして腹に弾力があるもの
刺身、焼き物、煮物、蒸し物、揚げ物など
イサキは姿も身も美しく、大きさも手頃で扱いやすく人気があります。もちろん味も上等で、生はもちろん、煮炊きしても大変美味しい魚です。三重県ではいさぎと濁って発音され、標準和名で呼ばれることはほとんどありません。濁らないイサキという呼び方は東日本で使われているようです。
イサキは大変プロポーションが整った魚で、特徴はと言われるとかえって言葉に詰まってしまうほど標準的な体型をしています。体側にある3本の褐色縦帯が特徴と言われることもありますが、この模様がはっきりしているのは若いうちだけで、大型になると不明瞭になって全体が茶色っぽくなります。いっそ、「かわいい顔したスタイルのよい魚」というような抽象的な表現の方が似合うかもしれません。ところで、小さくて縞模様がはっきりしているイサキのことを、おなじ縦縞模様のあるイノシシの子どもの名前を拝借してうりぼうと呼ぶことがあります。その年生まれの小さいイサキは、しばしば沿岸のイワシ定置などで大量に水揚げされてしまうことがありますが、残念なことに商品価値もほとんどありません。イサキの成長はそれほど早くはなく、生まれた年の翌年あるいは翌々年になってようやく食卓に上る大きさに達します。
平成18年5月30日 イサキ 鳥羽産
イサキはそれほど大規模な回遊は行わず、岩礁域に居着いている魚と考えられています。春になって産卵が近づくとまとまって接岸するようで漁獲も増え、型も良くなります。また、産卵後の夏にはやせてしまいますが、秋になって体力が回復してくるとふたたび美味しくなり、ちょうどそのころになってまとまって獲れることがあります。いわゆる旬ではありませんが、十分に美味しいイサキが堪能できる幸運な秋もあるのです。
平成18年10月13日 イサキ 和具産
イサキは定置網のほか、一本釣りの対象として漁業者が狙う魚です。一匹ずつ丁寧に釣り上げられ、船の生け簀から漁港の活魚水槽、活魚運搬車、市場内の水槽と長い旅を経て、せりの直前に活け締めという最高の状態で販売されています。かつては考えられなかったことですが、今では生きている魚はできるだけ活魚で出荷するようになっています。活けの魚はそれだけ値段が違うということなのですが、お金さえあれば都会にいてもまるで漁港にいるかのような新鮮な魚が味わえる時代になっています。イサキは活魚としての取扱いにも適した、人間にとって大変優れた魚です。
平成18年10月18日 イサキ 和具漁港にて
先にも書きましたがイサキという魚は成長が早くありません。いくら優れていると言っても人工的に育てる養殖には向かない魚でした。ところが、中国のイサキを日本に持ち込むとビックリするくらい成長が早いことがわかり、近年養殖用として注目を集めているようです。日本の海に逃げ出した場合、在来のイサキに影響を与えるおそれなども考えられますのでしっかりとしたリスク管理が必要ですが、これは中国原産だからというより、養殖用として開発した品種すべてにいえることでしょう。市場にも各種養殖魚が入荷しており、このイサキもその一つです。欲しいという需要があれば何とかして供給しようとするのが市場の機能であり本来の姿ですが、そのために生じる自然界へのさまざまな影響については後回しにされてきた感が否めません。特に、養殖から生ずる問題は私たち人間による自然への負の影響を端的に示す傾向にありますが、だからといって養殖魚だけを目の敵にするのはまったく当てはまりません。問題の根は深く、食の問題、環境の問題、そして私たち自身のライフスタイルを見つめ直す必要があるのではないでしょうか?
平成19年2月19日撮影