蔵の漆喰

※ 壁材料の練り置き

 壁を塗る場合、壁材料の練り置きをする事があります。特に漆喰壁の施工をする時は、壁材料の練り置きをします。水と混ぜて直ぐの材料は、壁材料と水が完全に混ざっていない為、練り上げてからも水分を吸収し、丁度良い硬さに練ってある材料でも乾きが早く、使っている間に乾き始め施工し難くいからです。練り置きの材料は水分をしっかり吸収している為、乾燥が遅く、同じ質感の材料を継続して使用出来ます。また沢山の漆喰壁を施工する場合、予めある程度の量の同じ材料を準備して置かないと、壁材料の練り上げ方等によって施工後の質感が違って来る事があります。昔から漆喰練りは大変な作業で、木や棒で水を混ぜながら練っていましたが、親方から 「漆喰は水を使わず汗で練れ!」 と、教えられました。今は攪拌機で練っています。

               注) 壁材料には練り置きが出来ない材料もあります。


      春から夏にかけて施工の蔵の漆喰壁です。屋根、鎧仕
     上げの外壁、構造材などを修繕された後の施工でした。
     施工中の暑い日中でも蔵の中は涼しく快適です。日本建
     築で土の壁が使われる理由は、夏を涼しく過ごす為と言
     われていますが、蔵の仕事をさせて頂く度にその通りだと
     思います。蔵の荒壁の厚みは約15cmです。一般住宅の
     荒壁と比べると2倍以上の厚みになります。
     玄関の敷居と柄の部分には石を貼りました。施工前、
     敷居は木、柄の部分は洗い出しでしたが、この後もずっ
     と蔵を使って頂けるように強度を考慮して石を貼りました。
     柄の上の石のサイズは60cm×20cm×3cmです。この
     石を4枚使いました。
     蔵の玄関土間はコンクリートで施工しました。以前は土
    の土間でしたが、土の場合、雨の日などにどうしても土を
    蔵の中に上げてしまいます。靴脱ぎ石の固定と蔵の中の
    汚れ防止です。コンクリートの厚みは一般住宅の犬走り
    と同様で約10cmにしました。
    
      

      蔵の漆喰壁が割れない(クラック防止)ように、昔から壁材料を薄く何度も塗り重ねまし
     た。今でも仕上げまでは何種類かの壁材料を何度も塗り重ねますが、昔とは違うクラッ
     ク防止の良い材料あります。しかし、漆喰壁の角の部分は昔と同じ施工法です。左官定
     規と言われるまっすぐな木を使います。
     ブログ(6月)にも掲載しましたが、今回手伝って頂いた職人さんの中で、左官職人三代目
     の方が持ってきて頂いた左官定規は、100年以上前から使われていた道具です。


   鎧(よろい)で蔵の外壁を覆
  ってしまうと荒壁は完全に見
  えなくなってしまいますが、荒
  壁の壁材料は一般住宅と殆
  ど同じです。
  しかし、壁を厚く塗る為に水の
  量を減らしだんご状態の荒壁
  の土を投げつけて施工します。

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