第5回探検

2002.1.13-14
三峰山再び

 YSK2探検隊は、2001年の年末、再びあの「三峰山」に登頂する計画をたてていた。隊長が隊員達に言った、「今回の登山は気をゆるせない・・」それは、前回と違い、三峰山が雪深いことだった。「遊び半分では命取りになる。」その言葉は隊員達の胸に重くのしかかった。隊長は言った「まず、足元はアイゼンにスパッツが必ずいる。」その時、隊員S氏は言った「アイゼンって何ですか?」隊長「・・・・」

 そして決行の日は2002年1月13日になった。登るのは隊長、H氏、D氏、S氏だった。D氏は言った「穏やかな小春日和になりましたね隊長」「しかし霧氷がみれるかな」隊長はいった。
三峰山の登山口に着いた探検隊は、登頂の準備にかかった。見るからに山には雪がないのを見て、S氏は「隊長、アイゼンなんていらないですよね。」隊長は「S氏、アイゼンは持っていくべきだぞ。」まず隊長は30kgもあるテント等の装備をリュックに背負い、H氏、D氏、S氏は寝袋、食料、酒等をリュックに背負って、隊長の「さあ、いこうか!」の掛け声とともに探検隊は登り始めた。登り始めての約30分は非常にきついのぼりだった。

 1時間ほど登ったときだった。「隊長!雪発見!」先頭を登るD氏が叫んだ。皆が見るとそれは10cmほどの残り雪だった。H氏は「しかし、こんなにいい天気で本当にアイゼンがいるのかなぁ」
そして「八丁平まで900m」の看板を横目で見て自分を元気付け、時には下山者に「こんにちは!」と声を掛けあい隊員達は登り続けた。登るにつれ、山道はアイスバーンの様になっていった。八丁平まで400mの看板を通り過ぎた時、それまで口を開かなかった隊長が「皆ちょっと止まって、アイゼン付けろ」と言った。隊員達はアイゼンと足元にスパッツを付け、そして再び登り始めたのだった。

 そしてようやく八丁平に到着した隊員達は、薄っすらと雪化粧したその八丁平に感動するまもなく、「隊長!どこにテント設営しますか!」S氏は言った。「せっかくやで雪の多い北斜面(奈良県側)に設営しようか」隊長が言った。そして隊長先頭に隊員達は設営場所まで進んで行ったが、進むたびにひざ下まで深い雪に足を踏み込みながら進んで行った。

 30分程歩き、「ここがええな」隊長は言った。「皆で雪を踏み固めてくれるか」皆、ひざ下まで雪に埋もれながら約3m角にその場所を整えた。そしてテントを設営し終えた頃には皆を照らしていた太陽は山々の間に隠れ始めていた。今夜の住まいを確保できたD・H・S氏はほっと一息ついたその時、隊長が言った。「水の確保にいくぞ!」「どこへいくんですか」S氏が言うと、「水くみ場へ行くぞ。」

 隊員達全員、隊長の後に従った。進むたびに険しくなる道に隊員達は不安になっていった。雪の急斜面をすべり落ち、谷にちょろちょろと流れる雪解けの岩清水をコップにとってペットボトルに入れている隊長に隊員たちは目を疑った。キャンプ場の水道から流れるような水くみ場を想像していたS氏は「隊長!水くみ場ってここですか」と聞くと「S氏も降りて水を汲んでくれ。」と隊長は言った。

 S氏は躊躇するまもなく深い谷底の水くみ場に向かって、赤いお椀をにぎり、決死の覚悟で雪の斜面を駆け下りて行ったのであった。

 無事、水汲みを終えた隊員達はテントに戻り、夕食の準備にかかった。
各自持ち寄った食材は鱈、ふぐ、鮭、ほたて、ずわいがに、鳥肉、牛肉、白菜、白ねぎ等野菜の他があった。(いったい何泊するのだろうと思うほどの量であった)

 隊長が言った「今夜は寄せ鍋だ!」そして隊長がコンロ(コールマンスポーツスター508A)に火を入れた。鍋に湯が沸く間、H氏が「登頂を記念して乾杯しよう!」S氏「雪にうずめたシャンパンでしましょう!」雪でよく冷えたシャンパンで隊員達は乾杯したのであった。この他に隊員達が運び上げた酒は日本酒1升+2リッター、サントリーの角瓶、ワインがあった。(いったい、誰が飲むのでしょう・・)

 数日前から「冬山で凍え死んだらどうしよう」と心配していたD氏は、暖かい鍋の前でトレーナー1枚になっていました。外は凍てつくような寒さでもテントの中はそれほど暖かいのです。

 湯気が沸き立つ寄せ鍋に隊員達は舌鼓を打っていた隊員の中でただ一人、生卵をつけて食べているD氏がいた。出発前に「僕は寄せ鍋や水炊きは生卵で食べるんさぁ」と言って皆を驚かせていたD氏。それを聞いていたS氏はD氏のため密かに多気町の藤原さんの超〜卵を持ってきていたのであった。

 H氏が言った「もうお酒ないの?」S氏「サントリーの角瓶がありまっせ!」隊長「ウイスキーを雪で飲もう!」とテントの外に純白の雪を取りに行ったのであった。
純白の雪を入れたカップの中にウイスキーを注ぐと「パチ、パチ」と小さな音がし、それはあたかも雪の妖精がささやいている様であった。

 雪山での初めての宴に十分満足した隊員達に、隊長が言った。「山頂に登ってこい!」S「え〜?今何時です〜?」H「11時過ぎてますよ・・・」D「やめとこに〜」隊長「冬山の意味がわかるで登ってこい!」S「真っ暗やないですか〜・・」その時H「隊長が言うとるんやで!行くんさ〜!!!!!」D(いややな〜)。

 隊長を除く隊員達は頭にヘッドライト、トレッキングシューズにアイゼンを付け、ガリガリ凍てつく雪にアイゼンの刃をくい込ませ、山頂を目指し三人は登って行った。
D「むっちゃ、寒い!」S「話し掛けるな!」H「けんかするなよ」そうこう言いながら、山頂に到達した3名は暗闇の中、山頂の三角点で記念写真を撮ったのであった。

 隊長が言ったとおり、空には満天の星達が輝き、3名の心に話し掛けるようであった・・・・辛い登頂であったが隊長が言う「冬山の意味」が何となく理解できた3名は凍てつく顔、暖かい心でテントに戻って行った。

 テントに戻ってみると、とんでもない事が起こっていた。隊長「突然、コンロが火を噴いた!」「え〜!大丈夫ですか!」すばやく消化した隊長は「寒い中戻って来ると思って、復活したコンロでテント!暖めておいたぞ!」
それ程寒くないテントの中で4名は寝袋に入りそれぞれの思いを胸に眠りについたのであった。