23日目  札幌

樹齢1700年の松。1700年間生きている。
魂の器として使用できるのか?

あれ?なんだこれ?

気がつくと僕は泣いていた。

朝、留萌を出てから3時間ほど走ったころだった。

なぜか流れる、涙の訳が解らなかった。



「ナンダコレ?」

口に出して言ってみた。






そして、僕は突然理解した。

そして、その瞬間、目から再び涙が溢れてきた。



ヘンな感情。
コレははじめての感情。
なんかこう、解ったような気がした。
すべてのことが解ったような気がした。
言葉に上手く置き換えることが出来ないが、
もう考え過ぎないでもいいと知った。



これが「悟り」というやつか?







いや、 時速100kmで朝からすでに3時間走りっぱなし、という単純作業の仕業だろう。
しかも今日でこの旅も、もう23日目である。
こんな生活を毎日続けていれば「ナチュラルハイ状態」になって脳内麻薬が発生してもしょうがない。

その証拠にほら、バイクを停めてタバコを吸っていると、さっきまでの解った感、悟り感が、煙と一緒に消えてなくなっていくよ。
・・・記憶とともに。







なんだったんだ?さっきのは。
あぶないあぶない。





そんなこんなで、深川から夕張へ。
途中、樹齢1700年という松を見に寄る。
目の前で見るそれは、太かった。
ただ、太かった。

もし、「魂」とかそういうのがあって、「生まれ変わり」とかあるのであれば、こういう松にもナニかが宿っていても不思議ではないが、目を閉じて同調してみても、何もそういうのを感じなかったということは、つまりそういうことだろうか?








夕張に向かう道の途中で、道路の工事をたくさんしていた。5kmおき位に5箇所していた。
片側通行の工事だ。
200mほど手前から「徐行」という旗を持った人が一人。
そして現場手前には誘導灯を持った人が一人。
反対車線にも同じような仕組みで二人の人。
つまり1箇所に計4人。
それが5箇所で計20人。
深夜帯は時間式の自動信号を使うとして、2交代で計40人。
日当が一人9000円としても一日36万円かかるなあ。
1ヶ月で1080万円かぁ。
もし派遣会社を通していたらその1.8倍はかかるなあ。
1944万円。

とか意味の無い計算をしながら夕張に向かった。











夕張といえばメロンか。
自宅にもおみやげを買わないといけない。
JAでメロンの形をした屋根の建物があったのでそこで「優」という一番良いランクのメロンを2個選び、実家に送ってもらう。
しかし、三重県の自宅では稲刈りシーズン真っ最中である。それをほったらかして道楽している長男を許してもらうのに、夕張メロン2個で釣り合いはとれるのだろうか?







で、札幌を目指す。
14時頃に、目的地の二条市場に着いた。

その中にある「川岸太郎すし屋」という、ある意味「オレ流」な店名のすし屋に入る。
狭い店内のカウンターに座り、とりあえず羅臼で食べ損ねたホッケと瓶ビールをいただく。
次にスシと吸い物を。
食べていたら、顔の濃いこの店の大将に、人生とか仕事について語られてしまった。食べている間中ずっと。
話を聞いていると、このおやじはどうやらすし屋の仕事が好きらしい。
良かったね。

じゃあもうそろそろ行きます。

・・・もう行ってもいい?








天気予報によると、夜は雨が降るらしい。
どうする?
札幌のユースホステルに泊まるか、あるいはもう、明日に向かって小樽のキャンプ場まで走るか。
考えているうちに、ぽつぽつと当たりだしたので、札幌に宿をとることにした。

YHに到着した私は荷物を宿に預けて、バイクも置いて、札幌をブラブラする。ブラブラしてみる。
その街「札幌」は大都会だった。
ぼくはその大都会の一角にあるちいさなお土産屋で「白い恋人」など(送料込み¥5045)を買い込み、送り状に自分の住所と名前、電話番号を記入。それと自分用に豚豚ライターというのを購入。鼻の穴2つから火が出るのである。この火を点けるたびに、この旅を思い出すのである。


その後、るるぶにて旨いとウワサのラーメン屋に行くために地下鉄で移動。札幌の地下鉄。
切符を買おうと目的地の駅を探していたが、ない。
またしてもるるぶに騙されたのか?

どれだけ探しても地下鉄マップ上にその駅名が見つからないので、ちょっとまごまごしていた。
10分ほど「まごまご」と「人にチカラを借りるもんか、というプライド」が格闘。、ようやく「まごまご」が勝利し駅員さんのチカラを借りることにした。

駅員さんに話しかけると
「\290の切符を買ってください、どうやらこうやら・・・」
と次第にフェードアウトしていく話し方の駅員さんだったので、あとは自分で探すことに。
自販機で\290の枠を探すと、どうやら乗り換えないとダメらしい。

路面電車に。






人生初「路面」体験だった。

これは、あれだ。
バスと似ている。
一律170円で一定区間を往復している。
バスよりもエネルギー効率は良いのだろうか?
排ガスはゼロだ。




路面電車に乗り換えてから、目的地の駅にはすぐに着いた。
電車の外は、大粒でボツボツの雨が降っている。
その駅で降りたのは私と、小奇麗でスラッとした20代の女性が一人。
どうやら彼女は傘を持っていないみたいだ。
僕は折り畳み傘を常備していたので、「そこまで入っていかれますか?」などイロイロ思い浮かんだ運命の出会い的言葉を発しようと試みたが、なんだかできず。

女性は路面電車を降りると、雨の中を走り抜けていった。
その背中を見送る私。






目的のラーメン屋は「駅から徒歩5分」と書いてあったので、適当に歩けばそのうち見つかるだろう、くらいの軽い気持ちで、もうかれこれ・・・あれ?すでに45分くらい雨の中を歩いているよ!
持病のひざが痛い。
しかもくつはぐっしょり。
「どこにもないなぁ・・・。」
「本に載っていた住所のあたりは歩きつくしたのになぁ・・・。」
という感じで再びまごまご。
そしてあっさり一人で探すのを断念。
断念した時点で一番最初に目に入ったお店、山口酒屋店に入っていき、聞いてみた。
やはりすぐに教えてくれた。

歩いて5分。
地図にはそう書いてあったが、まさに歩いて5分のところにその看板はあった。
ラーメン五丈原」。
「歩いて5分」という単位を少し短く見積もっていた自分に反省。


るるぶには”常に行列”とあったが、店内を覗いてみると、席は半分くらい空いていた。
私はカウンターに座り、カウンターの下の隙間にある荷物置きに、豚豚ライターの入ったビニール袋、折り畳み傘、帽子を置いてから、醤油ラーメンを頼んだ。

味は、別に普通。
まだあんまりお腹が空いていないからだろうか?
今回、北海道で4回くらい有名店のラーメンを食べたが「ウォッ?!マ、マジ旨いッス〜!」というのは特に無く、どの店も中の上くらいだった。
並んでまで食べるようなのは無かったのでは。
並んでいる人たちは「るるぶ」、「マップル」等の旅情報雑誌を頼りに移動しているのだろうが(私含む)、まんまとやられているような気がするのです。
情報」というやつに。


食べ終わって外に出ると雨も止んでおり、私は来た道をそのまま帰る。
路面電車から地下鉄に再び乗り換えるため地下鉄の駅で、次の列車を待つ。
あれ?なかなか来ないなぁ、と思っていたら駅内放送が。
「人身事故のため、南北線はしばらく停止しております」とのこと。


その後、1時間ほど止まっていた。
自殺だろうか?
自殺する人の気持ちはわからない、という人がときおりいるが、
私は自殺しない人の気持ちもわからない。
さらに言うなら、自分の気持ちさえ、わからない。
なんだろう?
「気持ち」ってなんだろう?

考えてこんでいるうちに地下鉄の運転はいつのまにか再開され、列車が私の目の前にやってきて扉を開けた。
「さあ、乗りなさい」と言われているようだと思った。

私は「気持ち」について考えるのをやめて、言われるままに乗り込んだ。








そして列車は札幌駅へ到着。
やれやれ、結構時間かかったなぁ。そろそろ宿に戻るかな。と列車を降りる瞬間に、気付いた。
あれ?そういえばお土産がないぞ!?
確かラーメン屋のテーブルの下に置いて・・・。
忘れてきた!帽子と傘だけ持って・・・。

いつもなら、もう一度同じものを買ってしまう「ダメ日本人」な僕ですが、今回は「あとで取りに行きますので置いといて下さい」と携帯で電話をして、地下から地上に出ると雨。
バイクで取りに行こうと思っていたのに・・・。
さっきまで止んでたのに・・・。



雨がもう一度止むことを祈りつつ、とりあえず札幌のインターネットカフェに入ってやり過ごす。
3時間後、外に出てみると、祈りが通じたのか雨は止んでいた。


私はYHへバイクを取りに戻り、さっきのラーメン屋へ。
夜11時過ぎだったが、夕方来たときとはうって変わって行列が!
30人くらい並んでいただろうか。
外まで並んでいた行列の横を通って中に入った。
「何でこいつ並ばねえんだ!?」「殺しちまうど。」「それはアカンやろ?」とかいろいろ思われたかもしれない。

私はそのような呪いの思念その他を断ち切り、店内に突入。
で、お店の人に「取りに来ました、ビニールに入った忘れ物!」と言った。
よけてもらってあったみたいだ。わざわざすいませんでした、ありがとう。
で、手渡してもらったビニールの中をのぞく。
どうやらチャーシューおにぎりが2個入っている。
店の作戦か?

そんな不意打ちにもひるむことなく僕は「コレジャナイヨー!!」と
得意のフィリピン口調で、店の作戦を撃破!

そして無事に私の元へと戻ってきた豚豚ライター。

「置き去りにしてごめんね?怒ってる?淋しかった?」
と尋ねながらカチッとすると、
ボッと赤い火がついた。

「許してくれるんだね、良かった。」




その後もホテルで一人、カチカチして過ごす。







本日の出費

・ガソリン4g(@110)  \440
・夕張メロン(送料込)  \6300
・白い恋人×4      \2400
・バターあめ        \300
・カニ爪ライター      \400
・豚豚ライター       \580
・札幌ハウスYH宿泊代 \2940
・ネットカフェ        \1627
・川岸太郎すし屋     \4400
・ラーメン          \650
・地下鉄\290×2     \580


  合計   \20,617

走行距離    261km

総走行距離  5842km







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