21日目 旭川健康ランド

寝ていたら、なにか濡れたシートのようなものが頬を撫でる。



・・・・何度も撫でる。





すでに顔がベタベタだ。



「まさか、出た?幽霊出ちゃった?いよいよ幽霊初体験?」




ドキドキしながら思い切って目を開けると、あれ?・・・なんだかテントが低いような気がする。

テントの天井が目の前にある。 ・・・?
これはもしや幽体離脱?!しかし背中は地面の感触を捕らえている。ヘンな違和感だけがある。



体は動く。金縛りはない。


服の袖で濡れた顔をぬぐい、「いったい今何時なの?」
と、暗い中腕時計を見たら午前2時である。ジャストウシミツドキ。






チャックを開けて外にクビを出してみると、外はなぜか嵐だった。


テントの外側カバーが吹き飛んでしまったのか、なくなっていた。っていうか凄い風だ。轟音。雨もバラバラと叩きつける。まるで台風の中にいるようである。
どうやらテントの柱が、風でグニャリと曲がって折れてしまっているようだ。そのせいで、天井が低くなっていた。このテントはもうダメだ。



「このままこの嵐の中にいても、どんどん濡れてきて、荷物もすべてべたべたに濡れてしまうし、激しい突風・強風で、何か傘とか木の枝とか飛んできて頭につき刺さって死ぬかもわからないので、とりあえずどこか避難できるところを探さなければ。」とか考えてどこか避難できそうな場所を探す。

トイレには、すでに4人避難していた。4人で一杯だ。昨夜一緒に呑んだくれたオバタさんはトイレの裏側の風の陰になるところにちゃっかりテントを移動していた。
私は、近くにあるホテルの玄関口(外側)が屋根が広かったのでとりあえずそこに移動。それにしてもなんだこの嵐。
そこにも一人先客がいた。すでに彼はカッパを着て、荷物もバイクに搭載完了していた。


彼と二人、玄関口で午前5時ごろまで2時間ほど寝て、彼は5時過ぎに行ってしまった。嵐の中を。
AM5:00、僕はぼんやり地図をみたり、「明日からどこで寝よう?」とか、途方に暮れたりしていた。




そんな感じで1時間ほど途方に暮れていると、ホテルの人が中から声をかけてくれた。
「もしよければ、600円で夜9時まで休めますよ。」と。お風呂ももう入れます、とのこと。
私はそのとき、「なんて優しいホテルでしょう」とか感激したが、確かにホテル側からしたら、玄関口でボロボロのテントと一緒にションボリされていては迷惑だ。お客様の目の着かないようにするにはそうやって声をかけるのが最善策であったのだ。とか、お風呂に浸かりながら思ったりもしたが、1番風呂は最高でした。ありがとう。お風呂に入っているうちに、壊れて使えなくなったテントのことなど、どこかへ忘れてしまった。



お風呂を堪能し、休憩室にテレビがあったので、天気予報を見たら、お昼過ぎにはやむでしょうとのこと。
なので、そのままゴロゴロTVを見たり、本を読んだり、タバコを吸ったり、ゴロゴロしたり、ゴロゴロしたり、そんな感じで快適に過ごしていたら、次第に客が増えてきて、居場所も減ってきた。しかもオバちゃん率高し。

若い男性が珍しいのか話しかけてきます。物をくれようとします。
私はオバちゃんからもらったとうもろこし(昨日買ったばっかりだから大丈夫だよ!とのこと)×2本を朝食にいただき、再び隅っこでゴロゴロ。


結局、朝の6時からお昼の1時半まで7時間半ゴロゴロしていましたが、雨がいっこうに止む気配を見せてくれない。
このままずっとここにいて、オバちゃん色に染まってしまっても良かったのですが、そろそろ出発します。
さよなら、オバちゃん軍団。





根室名物エスカロップっていうのがあって、なぜか根室から離れた旭川で美味しいお店があるとのことで、行ってみる。15時で一旦閉まるのですが、到着したのは14:30.。
30代後半の夫婦とバイトの女の子との3人でやっていた。
お客はもうひけてしまったのか一人もおらず、私は「まだ、大丈夫ですか?」と入っていった。

メニューを見てみると、カレー数種とエスカロッップ、ピザ、あとはドリンク類の普通の喫茶店でした。僕はるるぶで見つけたそのエスカロップを頼み、雑誌を取りに。

ここのマスターはバイクが好きなのか、本棚にはたくさんのバイク雑誌が入っていた。
そのなかで、「OUT RIDER」っていう、アウトドアツーリングライダー向けの月刊雑誌があったので、それを見ながら料理を待つことにする。


バイク雑誌「OUT RIDER」には「イタチョーのコーナー」っていうアウトドア料理のコーナーがありまして、私はそこで発見しました!昨夜失敗した「ポトフ」の作り方!
イタチョーこと太田純さんが言うには、水50ml・白ワイン150mlと記されている。昨日は水しか入れてなかったなぁ。さらに粉チーズもかける、とある。ベーコンも入れると良いらしい。

なるほど、なるほど。これで次は美味しいポトフが作れそうじゃないですか。
しかし、またキャンプする機会ってあるのかな、テント壊れたし・・・。


そんな感じでややションボリしていると、エスカロップが来た。
「エスカロップ」とは、そもそも根室のが有名なのだが、その根室のものを少しアレンジしてあるらしい。味は、・・・うまい!サフランで黄色く色づけされたサフランライス(たけのこ入り)の上にとんかつがで〜んと乗っかり、デミグラスソースがどばっとかかっている。横にサラダ(ドレッシングだばだば)もそえてあり、これで900円。ごちそうさま。


お腹も満足したので、「パッチワークの丘」で有名な美瑛に行く。
しかし空がどんより曇っており、パッチワークもイマイチ。

道沿いに農家の直営販売がやっていて、ここでお土産のジャガイモ「北あかり」5kg×4箱を購入し、それぞれの人へ、配送してもらう。
送料が高かった。本体より。 送料だけで4400円も払いました。
今回、オミヤゲだけですでに2万円以上使っているが、今後の人間関係を円滑にこなすためには必要な出費なのだ。と、自分に言い聞かせたりしてみる。


お土産も買ったし、とりあえず安心して、テントのない私は本日の宿を探しに旭川に向かう。
旭川市は都会だった。
地図で「24時間営業健康ランド」っていうのがあったので、「最悪そこで泊まるかなぁ」と思い、場所だけ確認し、アウトドア屋へ新しいテントを物色しに行く。安いテントがあれば、健康ランド泊は中止して、川べりにキャンプでも・・・。
とか思ってたんですが、テントが異常に高い!平気で3〜4万円します。あるいはそれ以上。貧乏な私はそそくさと諦め、またしてもションボリしてしまったテンションを無理やり引き上げるため、「旭川ラーメンを食べに行こう!」と叫び、「旭川ラーメン村」に行った。



しかし到着した「旭川ラーメン村」は、土曜日の夜7時というのに、どの店もがらがらで、すでにすさんでいた。
全部で8件あったが、客が全くいない店も数件あった。すさみきっていた。

るるぶでは「山頭火」っていう店の塩ラーメンがオススメと書いてあったので、そこへ。
二十歳前後の男女が10人ほど働いていたが、そこも客は5〜6人しかおらず、従業員数のほうが上回っていた。。人件費は旭川市の税金から出ているのだろうか?
余計な心配はよそに、注文した塩ラーメンは、スープ・麺ともにまあまあ旨かった。チャーシューがパサッとしていてイマイチか。梅干は要らない。

そんなこんなでラーメン通を気取り、同じ敷地内にある本屋でジャンプを立ち読みして時間を潰し、21時過ぎに健康ランドへ。
受付でお金を支払いザバっと入浴。サウナでしなしな。
深夜の健康ランドというとホモのおやじが潜んでいるイメージがどうしてもあるのだけれど、出くわさず。


仮眠室に入ると40ほどのリクライニングチェアがあり、20人ほどが寝ていた。
すでに薄暗く、TVではヒット映画「ゴースト〜ニューヨークの幻」が静かに流れていたが、誰も興味ない様子。

私も見るつもりも無く。

すぐにみんなと同じように毛布をかぶって眠りに落ちた。











本日の出費
吹上げ温泉日帰り入浴・・・・600円
DAKARA・・・・・・・・・・・・・・160円
エスカロップ・・・・・・・・・・・・・900円
お土産(北あかり5kg×4)・7940円
山頭火塩ラーメン・・・・・・・・・700円
健康ランド宿泊料・・・・・・・・2835円
ウーロン茶・・・・・・・・・・・・・・120円

合計 13055円

本日走行距離  150km

総走行距離   5472km





本日の風景                  旅日記 北海道編トップへ




通常時のテント

本日のテント