――傷跡――
深い傷、消えない傷、癒えない傷...........
胸の傷は主の爪痕――
私の胸に刻まれた、人形としての傷跡
その傷跡をカイムは消そうとしてくれる
でも、どんな治療をしても消えない傷
どんな治癒魔法も消せない傷
何故なら、その傷は私の心の傷だから....
裏切られ、傷つけられ、そして捨てられた心の深い傷が具現したものだから
その醜い傷跡を見るたびに、深い悲しみに打ちひしがれる
その汚い胸を見るだびに、悔しさに胸を焦がす
恨んではいない、憎んではいない
ただ悲しいだけ...........
忘れてしまいたいと思うのに、それを許さぬは悲しみ.....
逃げてしまいたいと思うのに、それを許さぬは哀しみ.....
それを消すことが出来るのは、主だけであるもの
私の真の姿である短刀を壊すことが出来るのも主だけであるもの
でも、私はその重さを今は相手に課すことが出来ない
カイムにしか出来ないことも、それを相手に望むことは出来ないでいる。
その重さを架すことになってしまうから
誰かに凭れかかりたいと思っても、それをすることが出来ない
それは強さなのか、弱さなのかわからない
人と接することが怖くなっている自分に気付く
誰かといることが怖いと思う自分に気付く
カイムと過ごす時間の長さの分だけ、また主に捨てられたら、と思う自分がいる
主といいながら線を引く自分がいる
何時捨てられてもいいように
何時いなくなってもいいように
毎日覚悟している自分がいる
だから消えない傷跡
だから癒えない傷跡