DINO-MEDIAS

 

インタビュー企画第7回は、140のみなさんにお話を伺いました。

140

 

140 (L→R F-lager,Catarrh Nisin,RITZZZ,BEYOND) 


 

作品のリリースおめでとうございます。140としては初の作品ということで、まず140の皆さんの自己紹介をお願いします。

RITZZZ(リツ、以下[R])です。MC、ビートメイカー、ライブではバックDJも兼ねています。今回のEPではジャケや歌詞カード盤面のデザインなども手がけました。

兵庫県神戸市在住のCatarrh Nisin(カタルナイシン、以下[C])です。MCですがビートも作ります。

BEYOND(ビヨンド、以下[B])です。

MCのF-lager(フラッガー、以下[F])です。今回の作品では変名のWisemanでProduceとMix & Masteringも担当しました。


この作品は、日本でも数少ないJAPANESE GRIME作品ですよね。皆さんの中でのGRIMEの解釈と、GRIMEへ道を進めた動機を伺いたいのですが。なぜBPM140の世界にたどり着いたのでしょうか。背後に見えるHIPHOPカルチャーなどのお話も聞ければと思いますが。

[R] UK GRIMEに影響受けて作っていますが、なかなかどうもカルチャーとしてGRIMEは自称しにくいと考えてます。BPM140の制限の中でいかにラップの精度とフロウの彩度を高めてゆくかという意味でアートフォームとしてはGRIMEらしく表現できたのではないかと思っています。
元々色んなラップを聴くうちにGRIMEにたどり着きましたが、同時期に聞いていたカナダやドイツのナードラップにカウンターとしての魅力を感じなくなったこと、初めは享楽的な音楽と思っていたGRIMEが意外と技術にストイックなMC達に支えられていると知ったことが大きかったです。ブリティッシュイングリッシュ特有の「硬さ」とスタッカートの多いフロウとの相性が絶妙です。

[C] ただBPM140のビートに倍速でラップすればGRIMEかと言われればそんな単純なものではなく、ビートは勿論のことMCのフロウにもGRIMEらしさがないと"GRIME"と呼んではいけないような気がします。
日本のGRIME MCの先駆者であるDEKISHIさん、DUFFFさん、タキラッチさんが本場UKのGRIMEらしさを日本語に格好良く落とし込んでいるのを聴いて自分でもやってみようと思いました。

[B]大学の先輩だったDEKISHIさんというMCに教えてもらったことがきっかけです。最初は曲を聞くというより、BPM140のトラックに合わせて、あり物の歌詞を繋げていくというスタイル(セッション)でGRIMEと接点を持ちました。
最初は全く合わせることができず、なにが面白いのかわかりませんでしたが、何度もやっていくうちに、普通のHIPHOPとは違うスポーツ的な楽しさを覚えました。今でも、友達とセッションをしている時が一番楽しいかもしれません。

[F]僕はDEKISHIさんやRITZZZ君、BEYOND君達のGRIMEのセッションを見たのがGRIMEとのファーストコンタクトでした。正直最初は良さがよく分からなかったんです。で、ある時セッションに参加する事があったんですが、僕全然出来なくて。そこから悔しくて練習し続けてたら面白くなってきてって感じです。
あとはやっぱりタキラッチさんに140に誘っていただいたのが一番のきっかけですね。GRIMEをやり始めて昔より断然ラップが上手くなったと思うので、僕はトレーニングの意味でもラッパーにオススメしたいです。

140は、普段どういった場所を拠点に活動していますか。また、どのような場所が自分たちのスタイルに一致していると感じますか。どのような精神性でクラブカルチャーと接しているのでしょうか。

[R]活動は様々ですが最近ではUKのラジオでされているような30分~1時間程度のDJミックスに個々の持ちバースをランダムに乗せるセッション型のライブをやらせて頂く機会が多くなりました。持ち曲を順に披露するライブスタイルとは違うスリルや偶発性があって面白いです。

[C]今のところ大阪を拠点として活動しています。せっかく大阪/奈良/京都/神戸とそれぞれの土地から集結しているクルーなのでもっと関西全域に活動していきたいです。
あとベースミュージックシーンで声をかけていただく事が多いのですが、HIPHOPのイベントにもどんどん出演してHIPHOPのMC/DJ/リスナーの方々に僕達なりのGRIMEというものを少しでも伝えられたら良いなと思います。

[B] 僕とF-lagerは、大阪アメリカ村のG.R.Cafeterraceで毎月行われている『HeavyWeight』というドラムアンドベースのイベントに出演させてもらっています。その他には、不定期的に京都木屋町のカフェ・ラ・シエスタで行われているダブステップ中心のイベント『Golden Sunday』に出ています。HIPHOPのイベントよりも、ベース・ミュージックのイベントの方が親和性は高いように感じています。ですが、HIPHOPのイベントも出演はしてみたいです。
精神性というと、大げさかもしれませんが、一緒にイベントで遊んでいる間は、どんな人や場所でも楽しめるように心がけています。


[F]関西を拠点に活動しています。140が出演するイベントとしてはベースミュージック界隈の方に声をかけて頂くことが多いです。DIYな精神を持っている方達と相性が良いような気がしますね。

 

トラックメイカーを見ると、メンバーそれぞれがトラックを制作しています。これに加え外部からのトラックメイカーも採用していますが、どういった基準でトラックを採用し、どのような分担で曲作りを行っていますか。


[R] まずは自分たちの身の回りで構成しました。ラップもそうですがトラックもそれぞれアプローチが違うのでバリエーション豊かになったと思います。

[C] Double Clapperzさんプロデュースの"Dirty"は当初"Are U Ready?"のリミックスとして頂いたのですが、リミックスで終わらせるには勿体ないビートだと言う結論に至りオリジナルとして書き下ろす事になりました。

[B]一聴して格好いいかどうかですね。

[F]メンバーは全員トラック作れるので、とりあえず1人1曲出そうかという感じでした。外部トラックは、もともと親交が深い方だったり、(トラックを)送ってくれる方の中から選んで使わせて頂きました。

 

GRIMEはスピード感がありますし、トラックも派手で非常にキャッチーな側面があります。一方で歌詞を見てみると、知的な部分やねじれたユーモアもあり、玄人向けな表現が見られます。リズム構成などは複雑で技術的な印象を受けます。この作品はどういうリスナーに向けて作られているのでしょうか。作品を楽しむうえで注目すべきポイントとはどこなのでしょうか。

[R]GRIMEは「速い」というわかりやすい魅力があるので、聞き流されがちな歌詞についてはあえて趣向を凝らして組み立てました。引用や言葉遊びの他、自分でもペダンティックすぎると感じるほどの文章表現は文系ラップとしても新しいと思ってます。メッセージは愚痴や文句、自己憐憫に陥らないよう攻撃的でありながらもユーモアと前向きな気持ちを込めましたので面白がってもらえると嬉しいです。

[C]今回リリースした"140 E.P."はJAPANESE GRIMEと明記していますが全体を通して聴くとGRIMEの中でもHIPHOP寄りな作品だと感じます。なので、GRIMEを知らない・聴かない日本語ラップリスナーの方でも違和感なく聴けるのではないかと思います。

[B] 個人としては、周りの人達に面白いと思ってもらえるような物を意識しています。言葉の一つ目から、ギョッするような歌詞やフロウを入れようとしているので、そういう部分も見てもらえたら嬉しいです。

[F]僕は是非日本語ラップ好きに聴いて欲しいなと思ってます。日本ではFast Rapがあまり浸透してないので、まずFast Rapというものに興味を持って貰えればなと。速いフロウもカッコいいと思ってもらえたら嬉しいですね。


140の皆さんには、CAKRA-DINOMIXvo.7に出演していただきました。野外イベントでもソロのライブで何度も足を運んでいただいています。私たちの作った現場でライブをすることや、CAKRA-DINOMIXについて、どのような印象を持っていますか。また、ライブでCAKRA-DINOMIXのクルーと接する機会も多いのですが、私たちの活動についてなにか意見やアドバイスはありますか。

[R] いつも感じるのが地に足がついた生活感だと思います。いわゆる「郊外」とも少し違う独特のカントリー感が面白いです。
また、決しておらが村自慢で終わらないリリックやスキルへのこだわりに共感します。また一緒にライブしましょう!

[C]クルーとしてチャクラダイナミクスから見習うべき事が沢山あります。ライブでのパフォーマンスは特に見習いたいところで、ライブ中の迫力や楽しそうにラップしている様は見ているこっちまで笑顔になってきます。DIY精神があってオリジナリティー溢れる素晴らしいクルーだと思うので三重県だけに留まらずもっともっと外に向けて発信していってほしいです。

[B]地元に溶け込んだやり方をされているのは、素直に羨ましく、尊敬に当たると思っています。実際に出演して、地元の人との交流の豊かさなどを見るにつけても、「地元で活動をする」というモデルケースとして、もっと色んな人に知ってほしいイベントになっていると思いました。これからも継続して、より外へも発信をしていって欲しいですね。

[F]音楽に対してのスタンスが近いと思ってて、親戚みたいな印象ですね。自分達でなんでもやるDIY精神を僕ももっと見習いたいと思ってます。

140の皆さんはかなりのGRIME通とみえます。もし、私たちCAKRA-DINOMIXやリスナーの皆さん、三重県のみなさんにお勧めしたいGRIMEがあれば教えてください。

[R]一言にGRIMEと言ってもジャンル発生から10年以上もたって表現の幅も広がっています。マンチェスターのSHIFTYやBLIZZARD、バーミンガムのSOX、ロンドン周辺ではGHETTS、DOT ROTTEN、GRIMINALなどそれぞれ非常に個性的でテクニカルだと思います。
ビートメイクについてはサンプリングとは違った意味でアイディア一発勝負のようなところがあってZDOT、Slackk、SPOOKYなどがおすすめです。

[C]年に一度行なわれる"Lord Of The Mics"と言うGRIMEのMCクラッシュがあるのですが、そのクラッシュに伴って発売されるコンピレーションアルバムが色んなMCの楽曲を楽しめるのでお勧めです。CDで買うと現場でのクラッシュ映像が入っているDVDも付いてくるので本場の雰囲気も味わえて良いかと思います。
あと日本のMCだとPAKINさんが本場UKに行ってフリースタイルのビデオをシュートしてきたりThe Grime Reportでインタビューを受けたりと精力的な活動をなさっています。
DEKISHIさん、DUFFFさんに続きJAPANESE GRIME MCの要となる存在だと思うので要チェックです。

[B]JMEやSKEPTAの所属しているBOY BETTER KNOWのアルバムはどれもオススメです。

[F]僕はあんまりGRIME通じゃないので基本的にRITZZZ君とかからオススメを教えてもらってます。日本ではDEKISHIさんのアルバム、海外ではScrufizzerとかDevlinのミックステープが好きです。GRIMEもフリーアルバムやDJ MIXが沢山あるので取っ掛かりとして是非聴いてみてください。


今後の作品制作、ライブ、また将来の展望や期待など今後の活動について教えてください。

[R]コンスタントなリリースも目標ですが、まだまだ新しい作詞法やリズムパターンに挑戦して独自の解釈を確立したいです。

[F]今回EPを出したので次はLPを作りたいなと皆で話してます。今後はヒップホップ界隈の人にも、もっと認知してもらえるように頑張りたいです。


このインタビューを読んでくれたリスナーの皆さんに一言お願いします。


[R]最後まで読んで頂いてありがとうございます。より精密に、よりソリッドに、精進します。

[C]とにかくMAEMUKIに頑張ります。

[B]あまり身構えず、気楽に聞いてください。あと、ラップをやっている人は、試しにセッションをしてみてください。普段とは違う楽しみが味わえると思いますので。もしも慣れてきたら、一緒にセッションしましょう。

[F]最後まで読んで頂きありがとうございました。
作品をまだ未視聴の方はフリー作品ですので是非聴いてみてください。

 


140EP試聴とDL(AUDIOMACK)

 

 

 

 

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