この胸のときめき (2000)


 ロマンティックコメディーでユーモアが楽しめて明るい雰囲気でいっぱいなのに、涙があふれてたまらないシーンもいっぱい、観終わった後はあったか〜い気分でいっぱいにさせてくれるとってもとっても素敵なラブストーリーです。

 メーガンを演じるBonnie Huntが脚本・監督のこの作品、無駄のない素直な展開の中にも細かい心遣いがあちこちに見られます。
 またDavid Duchovnyが普通の男の微妙な心の動きをうまく演じています。何度も出てくるキスシーンやダンスのシーンも、その時々の感情が自然に表れていてそれはそれは美しいのです。Davidがこの作品を選んで、見事にボブを演じきってくれたことがすごく嬉しいです。
 Minnie Driverも、大変な体験をしたものの、明るく活発な普通の娘グレースをかわいく演じています。
 また主人公たち(ボブとグレース)の 二人舞台でなく、周りをかためる登場人物(グレースの祖父マーティーや彼が経営するイタリアンレストラン ”オライリーズ”のおじいちゃんたちとソフィー、グレースの友人メーガンとジョーの家族、チャーリー、ウォーターガール、ベニントンさん・・・、もちろんエリザベスがいてこそのボブだし、忘れてならないのはボブとエリザベスの愛犬メルやゴリラのシドニー)が みんなそれぞれいいんです。そんなところも、この作品を私のお気に入りにさせています。

 ボブは、妻エリザベスとの幸せな日々から突然の辛く悲しい別れ、いつまでたっても立ち直れない苦しい日々を乗り越え、やっと新しい恋に目覚めます。グレースは、死の淵をさまよい、授かった新しい人生、夢に見た穏やかな日々のなかドナーやその家族を想ってふと幸せに戸惑い、恋愛に臆病になる・・・そして出会った素敵な人。ところがある日、突きつけられた真実に二人は引き裂かれるのでしょうか。

◎印象に残ったシーン・好きなシーン・・・(ネタバレです)
 ボブが二十歳で3歳年下のエリザベスと結婚してから17年を経て、いっそう初々しいほどに深く愛し合っている二人。きれいに整頓されあちらこちらに花が飾ってある室内。雨の中タキシードのままでメルの散歩に行き、びしょぬれになったズボンの裾をドライアーで乾かすボブに、「なんてかわいいの。」とエリザベスが声をかけ、じゃれ合う二人。

 仕事も充実し、ボブは大きなビルの設計を手がけ、エリザベスは動物園でゴリラを飼育、手話を教えたりして研究している博士。今日はゴリラ舎を3倍に広げるための寄付集めのパーティー。二人で早くダンスをしたくてたまらないボブ。ベニントンさんの女性を見つめるあの表情ったら。エリザベスにイタリア旅行とゴリラ舎建設の約束をして、絶好調の二人。ボブは"Return to Me"をリクエストし、いよいよダンスが始まりました。手を取り見つめ合う二人、こんなに素敵なキスシーン、ちょっとふざけあったりしながらの完璧なダンスシーンに何度観ても見とれてしまいます。それだけに・・・この時の二人が完璧なだけに、この後の悲劇がいっそう悲しく、なかなか(1年たっても)立ち直れないボブの辛さがひしひしと感じられる、そういうシーンでした。

 パーティー帰りの交通事故、病院で彼女の名前を聞かれても、なかなか「エリザベス・ルーランド」と答えられないほど混乱しているボブ。エリザベスが帰らぬ人となり、家に帰って放心状態のボブ。一人になって「彼女はもう帰ってこないよ。」と自分に言い聞かせるかのようにメルに話しかけるところが悲しすぎます。悲しみが込み上げてその場で泣き寝入ってしまうボブ。

 心臓移植手術を受けるグレースのために祈るマーティーおじいちゃん。彼はいつも信心深くてグレース思いです。メーガンとジョー、おじいちゃんたち、みんなグレースを心配して集まっています。心臓の鼓動。目覚めるボブ。別れを告げるようにエリザベスが見えます。

 1年後。元気になったグレースはオライリーズを手伝いながら、花を育て、絵を描き、自転車に乗って病院にも行きます。ドナーのことを想うと不満など持たず幸せに生きなければと思うけど、胸のキズを気にして恋愛にはまだ臆病になっています。ドナーの家族へのお礼の手紙をやっとの思いで投函します。

 一方ボブはまだ立ち直っていません。仕事でイライラするとシドニーに会いに行きます。そこにはもうエリザベスはいないのに・・・。プレートの Dr.Elizabeth Rueland の文字の汚れを手で拭うボブが切なくてたまりません。グレースとのすれ違いには気付かず、妻のためにシドニーに立派なゴリラ舎を建てなければと必死に頑張っています。
 散らかり放題の家。エリザベスを待ってドアから離れられないメルを叱り、キッチンまで半分来ることができたと誉めるときのボブがとっても好きです。メルの姿は自分そのものだと気づき、「おまえも立ち直れ。」と 自分に言い聞かせるように言い、携帯を取り出す。グレースの同僚だったチャーリーって本当にいい人。女性の好みはイマイチだけど、一生懸命ボブを元気づけようとしてくれる。

 ボブとグレースの”オライリーズ”での出会い、お互いなにか惹かれ合うものを感じた恋のはじまりです。
 忘れた携帯を取りに行って、4人組のおじいちゃんたちに、やもめ仲間として暖かく迎えられる。いつもあんなに仲良くって明るく賑やかに集まっているおじいちゃんたち、みんなといないと寂しいんだとふと思います。

 あの事故以来初めての恋をシドニーに報告しに行くボブ。
 突然の事故で最愛の妻エリザベスを亡くしたボブが、やっとグレースとの新しい恋に目覚めました。初めてのデートで、手術のことを打ち明けられないグレース。ボブは、初めて彼が現場監督をしたビルの屋上にグレースを連れていきます。私はなぜかこのシーンがすごく好きです。この映画はダンスシーンもキスシーンも素敵でたまらないけど、さりげないこのシーンも大好きなんです。なんとそこでボブがグレースに、エリザベスとの歴史を語るのです。ふつうそんなの嫌でしょう。ところが、それがなんて言えばいいのかとっても素直で正直で誠実で・・・、そのあと「手をつないでいいかい?」って、二人で夜景を眺めます。
 その後は、ウキウキ気分でノリまくりのボブ。ボウリング場でだってチューですもの。グレースのガーデンでのダンスも素敵。みんなで集まるガーデンパーティーも楽しそう。

 いよいよゴリラ館が完成間近になり、ボブの家でデート。グレースは今夜こそ本当のことを打ち明けようと出かける。妻の夢を叶えるために頑張ってきたことを話すボブ。「彼女は本当にあなたのことを誇りに思うわ。」と グレース。熱いキスシーン。二人の恋は加速度的に進むと思ったのに・・・。
 自分が出したドナーへの手紙を見つけたグレース。早々にボブの家を後にしたグレースが、自転車をこぎながら涙にくれるシーンは胸を締めつけられます。
 真実を告げられたボブの動揺。夜、ビルの骨組みの上で考え込む姿が痛々しいです。

 ところで、メーガンとジョーの夫婦もいい感じ。メーガンはずっとグレースのお姉さんって感じの相談役。そしてジョーって本当に優しい人。メーガンに怒られたり、グレースに元神父を紹介しようとしたりとおかしいけど、メーガンや子ども達をとっても愛していて、グレースが泣くのを見て早とちりしボブをやっつけてやると興奮してくれる。ボブもいいけどジョーもいいな。

 グレースはボブから離れる決心をしイタリアに行くけど、心はずっと沈んだまま。
 ボブはずっと考えています。チャーリーに相談するけど、彼っていっつもあんまり役にはたってない。オライリーズに出かけていき、エリザベスが亡くなって寂しい気持ちはずっと続くけど、グレースのことも愛しく、どうしていいか分からないことを告げます。ここでマーティーおじいちゃんの出番。心の整理ができたボブは、グレースを追ってイタリアへ。再会した二人のシーン、美しいです。

 ゴリラ館の落成式、エリザベスとの約束を果たしてスピーチをするボブがすごくかっこいいです。
 ソフィーたちのウエディングパーティー、ボブとグレースの幸せいっぱいのダンスにとっても嬉しくなります。
 この映画を観た後はいつも幸せを分けてもらった気分になって、なにげない日々の幸せをかみしめて大切にしなければと思うのです。