エボリューション (2001)


 アリゾナに落下した隕石から、生物が進化しだします。
 アイバン・ライトマン監督もはっきり言っているように、この作品は『SFコメディー』で、どのシーンにもユーモア満載、軽い気持ちで楽しめる作品でした。

 わりとはっきりとしたジョークの間にある、さりげなくあふれる微妙なユーモアが私は好きです。さらに、下ネタオンパレードで大騒ぎのシーンもありラストはぐちゃぐちゃのコメディーでも、絶妙のバランスで完全なドタバタコメディーにはならずに、SFとしての質も兼ね備え、シリアスな部分が垣間見られるところも私には気に入りました。

 それは進化の過程がけっこう正確にたどられていることや、軍や政府の機関に主導権をにぎられてその圧力と対抗するという軽い緊迫感があるからだと思います。また、過去の過ちを胸の中にひきずっている生物学者アイラ・ケインを演じるDavid Duchovnyが、彼の親友でとってもパワフルな地質学者ハリー・ブロック(Orlando Jones)と、親友としてのジョークを飛ばしまくりながらも確かな目をもつ科学者としての雰囲気をうまく出しているからだと思います。

 そんな中で、DNAが10塩基対でできていたり、C(炭素)が基本の生物にはヒ素が猛毒だから、N(窒素)だとセリンが毒だったりと、その発想がおもしろいです。すさまじい速さの進化が一転し、単純なものほどはびこるパターンで、このままでは人類を滅亡させる脅威となった超巨大生物の単純さが愉快です。アイラとハリーにウェインが加わり、アリソンも仲間になって、Cマイナスなドナルド兄弟までもが意外な知恵を出し、みんなで巨大生物と戦うシーンでは、鼻をつまみ目をしょぼつかせながら観てしまいましたが、危機的な状況でも陽気な町の人々と一緒の気分で楽しめて、やっぱりコメディーなんだと納得できて嬉しかったです。

 それに忘れちゃいけないのが、進化の過程をたどりながらも創造的に作られた、CGの生物たち。その姿や動きの綺麗さや気持ち悪さ、可愛さや迫力で、最初から最後まで楽しめました。ここでもよく見ると下ネタ生物に笑ってしまいます。

 ところで、Davidファンの私には、あの声・・そして大学で教えるアイラの姿は、ツボにはまる完璧な登場シーンです。生き生きと演じるDavidが見られて嬉しいし、ジープでリズムをとりながら歌っているシーンがすごく好きです。
 アイラがXFのモルダーに見えてしまうという感想には、すごく分かる気がします。それだけモルダーの存在が大きいのだと思います。当初からDavidは、『僕はモルダーとはちがうんだ。』と主張しているのは知っていましたが、私も初めはモルダー以外のDavidは想像できませんでした。でも、XF以外のいくつかの出演作品をビデオで観て、トークショーで話したりインタビューに答えたりするのをネット上で見ているうちに、Davidとモルダーの人格は完全に分離してしまいました。だから今の私には、アイラはアイラにしか見えません。

 「エボリューション」が「XF」と重なるかというと、地球外生命体を扱っているところはさておいて、ストーリーや映像的に全く違う作品のように感じますが、ただひとつ虫が体内に入って這い回るシーンだけはXFで見たのとそっくりで、残念でした。せめてチカチカと光りながら這い回るぐらいはしてほしかったです。
 それとアリソンが転けたり物を落としたりするところは、私には余分だと思えました。

 コメディーのユーモアのバランスは、人によって感じ方が大きく違うだろうし、自分の感覚とちょっとずれたときに、我慢するのがむずかしい、すごくシビアーなジャンルだと思います。
 私は、ジョークのネタにはときどきエッ!?と思ったりしたけど、アイラや他の登場人物から出てくる雰囲気は文句なしに楽しめたし、CGも楽しかったから、お気に入りの作品になりました。