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手紙


 以前テレビで刑務所でこの映画を上映したというのを見たことがあって、強盗殺人事件の加害者側の家族(弟)が差別に苦しむという 大まかな内容は知っていました。重そうだな〜、あまり観たくないやと思っていたのに、つい借りてしまった作品です。監督が生野慈朗さんなんです。先日観終えたドラマ『孤独の賭け』の演出されてた方です。

 最近、いちばん泣けた映画かな。大泣きというより、ず〜〜〜っと涙がポロポロと・・・。どうしてかな、心が揺さぶられていたっていう感じです。自分が加害者の関係者だったら、それよりたまたま近くにそういう人がいたら、また被害者側になったとしたらと、どうしても考えてしまいます。
 とっても厳しくて、でも いいのかな〜と思うほど救いのある優しい物語でした。

 武島剛志(玉山鉄二)は、弟 直貴(山田孝之)の進学費用を得るために強盗に入って、家人に見つかってもみ合ううちに殺人を犯してしまいました。それでもちゃんと犯した罪を後悔している様子で服役(無期懲役)していて、根っからの悪人ではないという人物設定なんですね。だから直貴は 剛志の面接にも行くし、近況報告や励ましの手紙もやり取りしていたんです。
 でも、被害者やその家族にとっては犯罪の経緯がどうであれ許せないことでしょうし、世間は殺人犯の弟ということで直貴を差別します。追い出されるように何度も引っ越しをしたし仕事を変えたし、兄のことを隠しても、逃げても・・・、その手紙が見つかったり どこからか噂話が出てきて、親友とのコンビでお笑いのプロで成功するという夢を諦めたり、好きな女性との結婚もダメになりました。ボロボロに傷ついた直貴は、いつしか剛志への手紙を書けなくなってしまうのですが、そんな彼に心を寄せる由美子(沢尻エリカ)が 救いを差し伸べてくれるのでした。彼女の愛と、勤める電気店の会長の言葉が、彼に現実から逃げるのではなく そこから始める勇気をくれました。そして、由美子と結婚して女の子ができて・・・。ところがなんと、妻や娘にまで向けられる差別。。。
 直貴は、家族を守るために兄を捨てる決意をし、剛志に最後の手紙を書きました。そしてその手紙が、初めて剛志に現実を突きつけることなりました。彼は、犯した罪の大きさや深さをほんとうに理解したのです。彼は真面目に服役していたし、毎月被害者の家族に謝罪の手紙を送り続けていたけど、もちろんそれは無駄ではなかったでしょうが それで許せる気持ちになるものでもなく、実は弟にも被害者の家族にも 罪を犯し続けていたことに気づいたのです。そして剛志も、被害者の家族に最後の手紙を送るのでした。
 この物語では、被害者側が「もう終わらせよう」という気持ちになることができました。それは”許し”の意味があったと思います。これって現実では、なかなか難しいことでしょう。。。
 直貴にとっては、何もかも知っていても ず〜っと親友でいてくれる 中学のときからコンビを組んでいたお笑いの相方も 救いでした。彼の誘いで出かけた兄の服役する刑務所への慰問では、捨てようとしても捨てられない剛志との兄弟の絆が心の奥にはあることを 直貴自身が気づいたし、舞台の上の弟に手を合わせて心からの謝罪の気持ちで泣き咽ぶ剛志にも それは伝わって救いになったと思います。