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 それはヒドイよ〜ってことばかり、心が痛くて堪らない、なのに何故だかいい気持ちにさせてくれた幼馴染みの友情と恋の物語でした。
 熊川鉄矢と水代元(:ドン)は、二人だけで秘密基地を作るほどの仲良し。10歳のある日、二人は杉山エミという少女に出会いました。心臓病で友達のいなかったエミを加えて、二人はエミへの淡い恋心を持ちつつも、三人で仲良く楽しい時を過ごしていたのでした。ドンには人の考えていることが分かる不思議な力があって、そんな人の心の中やある時は自分の心の中だって、絵に描くことで自分の気持ちを伝えているのかなって思えてくるのでした。

 どこまでも純粋なドン(エディソン・チャン)。子どもの時のままの気持ちを持ち続けています。その気持ちはかつて、友を大切に思うばかりに自分が傷つき、ついにあの日、不審火の罪まで人殺しの汚名まで被っても鉄也を庇おうとしたのでした。そして7年後の今、鉄矢(窪塚洋介)とエミ(黒木メイサ)が結婚しようとしているのを知って、刑務所を脱走したのでした。
 鉄矢は子どものときから、ドンの気持ちに甘えていたし、あの日もそうだった。確かに友情で結ばれていたと思うけど、なんだかねじれていたって気がします。ズルイよ鉄矢! それから彼は、エミの心臓病を治すために一生懸命やってきて今は研修医、恋心を現実のものに結ぶところまでになって、ドンの存在が大きな不安になってます。

 ドンをずーっと観ていて、心が痛くて痛くて痛くて堪らなくなりました。ドンの今も変わらない気持ち。。。ドンにだって、エミを想う気持ちもあるけど、鉄矢と競おうとするつもりなどないんですね。それはもう早い段階で感じられるのですが、鉄也にはわからなかった。そしてそれがはっきりするのは、悲しいラストだったんです。
 心の中だけにある熱く燃える感情を描いた絵の凄まじさ!!でも、ドンはそんな感情をずーっと我慢して押し込めていたのではないと、UKIUKIには思えました。どこまでも穏やかでお人好しなドンの中にある優しさと強さは、偶然出会ったチンピラの優作(山本太郎)が傷つくのを放っておけなかったし、優作の心の中にある汚れていない部分を感じたのではとも思えました。そして鉄也やエミと自分の友情は、時には汚された形になってしまうけど、本物の気持ちが確かにあることを不思議な力で読み取っていたのかな〜、それが嬉しいというか何を犠牲にしても守りたかったのかな〜とも思えました。
 いつもは、あまりにお人好しな人見るとなんだか腹が立ってしまうんだけど、ドンはそれでよかったのかな〜と思えてきました。この作品で彼に出会えてよかった〜♪ どんなことがあっても悔しさとか怒りとかに支配されないこんな人、いるわけがないと思ってしまうし、他にもこんな人がいたらいいのになんて全く思わないけど、彼の存在を受け入れることのできたUKIUKIにとっては、とっても素敵な作品になりました。

 ということでこの作品、ひと言でいえばドンのキャラクターが全てだと思いました。
 ところが、UKIUKIにとっては初めてまともに観た俳優 窪塚洋介も、すごく良かったです。今だから言いますが、前はたまにチラッと見かける彼のクセのある話し方というか雰囲気がすごく苦手で、それが彼の個性なんだろな〜ファンの人はそれがいいのかな〜、どの作品に出てもこの雰囲気を充満させてるんだろうな〜なんて想像して、絶対観たくないと思っていました。でも、転落事故からの復帰後、今思うとこの作品関連のインタビューだったのか、どこかで話している彼を見て、なんだか別人のようにナチュラルになったという印象で、絶対拒否って気持ちがすーっとなくなったような気がします。
 そしてこの作品では、彼ではなく鉄矢を観せてくれた。上手い!と思いました。カッコいいヒーローでもカッコいい悪役でもなく、なんだかな〜って嫌なヤツ。エミに対しては一生懸命なんだけど、ドンにはいつだって酷いこと押し付けたり関係ないように避けたりして・・・。さり気ないけど、嫌なヤツ。だけど考えてみたら、自分はドンよりはずっと鉄矢に近いのかもしれない。だから、ドンに出会えて心が洗われるような心地良さを感じるのかもしれません。でも鉄矢ったら、真実を告白する勇気はなかったにしても、ドンにだけは「ごめん」とか「わるかった」とか「ありがとう」とか言えばいいのに・・・。まあ終盤の鉄矢の心境の変化、というよりずーっと隠してきた気持ちが出てきたところには、ちょっとは救われましたけど。そんな鉄矢を、窪塚洋介は「これだけ魅力の感じられない、自分にとって共感できなくはないけど、共感したくないヤツ」と言い、そんな人物をあえて演じきってくれました。そして彼は「(この作品、)ドンに会いに来てほしい。」とも言ってました。鉄也とドンの微妙な心の綾が、ドンをより表現しこの作品を素敵なものにしていると思いました。
 ドン役のエディソン・チャンは、UKIUKIにとっては最高にお気に入りのひとつ「インファナル・アフェア」シリーズでラウ(アンディ・ラウ)の若き日を演じたのを観て印象に残っている俳優さんです。ふだんの彼と違って、口数の少ないドンだけど、繊細な感情をいっぱい見せてくれました。また他の出演作も観たいな〜と思えてきました。

 この作品の原作もコミックだそうで、なんだか最近いいな〜って思う作品の原作がコミックというのが多いんです。UKIUKIの知らなかった世界だけど、すごく豊かな才能にあふれているんですね。