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アイランド


 わーぃ面白かった〜! 大人の体で製造されるクローン、表向きは植物状態に作られているはずのクローン、しかし実用面での質を高めるために彼らは”人のように”生かされた。なぜ臓器個別のクローンじゃないんでしょうね、まぁいいや。重いテーマでありながら、みごとエンターテイメントとして割り切れる作品です。近未来SFとして進んだ科学システムのあれこれにワクワクさせられるし、迫力ある映像でとびっきりのアクションも楽しめるし、何と言ってもユアン・マクレガーの魅力をたっぷり味わえました。商品のクローンとしてこわれ物のように扱われている姿から一変して激しいアクションでの逃走劇、そして彼の持つ雰囲気や演技がヒューマン(クローン)ドラマの要素をほどよく膨らませてくれたように思います。

 リンカーン・6・エコー(ユアン・マクレガー)は選ばれたスペシャルな者たちのひとり、彼らは汚染された世界から守られて安全で穏やかに暮らしている。彼らはやがて抽選で当選した者からひとりまたひとりと、地上最後の楽園”アイランド”へと旅立っていくのだった。しかしリンカーンは何度も同じ悪夢に苦しみ、管理されすぎている生活への疑問や抵抗感にも悩んでいた。この辺りのユアンが好きです。リンカーンの内面を感じさせて後の展開での共感を誘ってくれました。
 ところが自分の存在は作られたもので、知らされている過去や夢のような未来は嘘で本当は殺される宿命であることを知ってしまったリンカーン、この辺りのユアンもいいんですよ。彼は淡い特別な感情を抱くジョーダン・2・デルタ(スカーレット・ヨハンソン)が次の犠牲者に決まってしまい、彼女を連れて施設から脱走します。
 リンカーンとジョーダンは自分たちの存在がクローンであることやどのように作られたかやその目的について知らされていきます。彼らの疑問は観ている者にとっても次々沸いてくる疑問で、彼らに説明されるというやや多いめのシーンを通じて、練りに練られた作品の設定を押さえることができるようになっています。
 彼らにインプットされた限られた知識では、施設外の現実生活では間に合わずその反応がなんとも可笑しいし、本物の子供に出会ったときの反応など微笑ましいのですが、それがまたなんとも切ないです。
 しかし、彼らのあるグループでは思考力や感情が予想外に発達していたことや、リンカーンの記憶に保険契約したクライアントであるオリジナルのトム・リンカーンのものまでもが復活してきていて、それがリコール&抹殺の対象になるのでした。
 リンカーンがトム・リンカーンに出会って、お互いもっと驚いて気持ちを探りあい生き延びたい本能との葛藤があるのでは・・・なんて、その辺りもう少し深く描いてほしかった気もします。でも、ユアンの二役は良かったです。スコットランド出身のユアンがイギリス訛りを真似するところなんか、ひとときのユーモアにニヤリとしてしまいました。
 ところで、リンカーンとジョーダンの関係も、もともと男女間の関係を持つことは必要ないこととしてインプットされていないし、接触することも禁止されていたので、その感情の進み具合も興味深かったです。キスなんて知らなかったでしょうに・・・、ぎこちないファーストキスが素敵なの〜♪
 ところで、もちろんジョーダンや他のキャラクターにも印象に残るシーンがありますが、感想は省略しちゃいます。あっ肝心のアクションシーンについてもね、落っこちてもうダメーッってとこなんか引っかかり具合が好きだったし、あといろいろ・・・あの興奮を言葉にするのは難しいってことにしちゃいます。
 ラストはクライアントやクローンたちの問題に結着をつけることなく終わって、またリンカーンやジョーダンの今後も不明なわけで、スッキリしない感じもするけどあれこれ思いを巡らせられる余韻を残してくれました。