八月のクリスマス


 ソウルの街中で小さな写真館を経営しているジョンウォン(ハン・ソッキュ)は、好きな女の子の写真を拡大してほしいとやって来る近所の小学生たちや、家族写真を撮りに来る人たちや、葬式用の写真を頼みにくる老婦人など、店を訪れるどんなお客にも優しく笑顔でゆったりと接していた。淡々とした日常を過ごしている彼が、実は重い病気を抱え死が近づいているなどとは、その物静かで穏やかな表情からはなかなか想像できなかった。それは私だけでなく、ある日彼の店を訪れるようになったタリム(シム・ウナ)も同じだったでしょう。

 駐車違反の取締員をする彼女は、違反した車の写真を現像しに毎日写真館を訪れ、ジョンウォンと何気ない会話を交わしながら身も心も安らぐひとときを過ごしていく。それはやがて二人にとってかけがえのない時間になり、お互いがかけがえのない存在になっていきます。

 さり気ない日常の中にほんのりと芽生えた淡い恋。その落ち着いた雰囲気の中で刻々と人生の終わりの時に近づいていることを受け入れて生きているジョンウォン。近づく永遠の別れを知らされないタリム・・・。
 彼が死への準備を静かに進めるシーンが印象に残りました。父にはビデオのリモコン操作のメモを残し、店を継ぐ者のために現像機械の取扱方法をノートに書いて、そして自分の葬式用の写真を撮影しているシーンにはもう胸がいっぱいになりました。そしてタリムには1通の手紙を・・・。こんなふうに死を迎えられたらどんなに素敵でしょう。
 正直言ってUKIUKIにとって評判のように感動作!!というのとはちょっと違う印象で、でも見届けずにはいられない物語でした。それはラブ・ストーリーとしてだけでなく、ジョンウォンとその家族の生き方に惹かれたのかもしれません。そして観終わってからあれこれ想いが広がって、考えさせられる作品でした。ジョンウォンにとってのあの二人の季節は、愛を胸に死を迎える幸せがひしひしと感じられて良かったです。タリムにとっては・・・・・。UKIUKIだったらという思いは、胸の内にしまっておきます。