JSA


 (↓この作品はUKIUKIにとって「シュリ」に続いて2作目の韓国映画でした。この感想を書いた頃は北朝鮮のことがニュースに出てくることもほとんどなく、隣国韓国を意識することも正直ほとんどありませんでした。)

 こんなに近い隣国でありながら、ひとつの民族が二つに分断されているという事実に実感の持てない私がこの映画を観るのには、正直少し勇気がいりました。また、戦争映画とか銃撃戦はあまり好みではないので躊躇していたのですが、これを観た家族が「これはいいよ。」と言うし、ネット上でもかなり評価が高いので、思いきって観ることにしました。

 韓国と北朝鮮の軍事境界線(38度線)にある板門点の共同警備区域=JOINT SECURITY AREA(JSA)で、銃撃事件が起きた。北朝鮮の兵士2名が射殺され、容疑者は韓国の兵士イ・スヒョク(イ・ビョンホン)で自供もしている。事件の原因と過程を解明するため、中立国監督委員会からスイス軍少佐ソフィー(イ・ヨンエ)とスウェーデンのペルソン大尉が派遣されてきた。最終目標は中立を保つこと!

 事の始まりは8ヶ月前、地雷を踏んでしまったイ・スヒョクを、北朝鮮のオ・ギョンピル中士(ソン・ガンホ)が助けたところにあります。
 現代の若者らしく軽い気持ちで交流のきっかけをつくっていくスヒョク。それを受ける下地がギョンピル中士にあったのは、外国を垣間見た経験を持っていたからでしょうか。同一民族としての自然な友情が、JSAの南北四人の兵士の間に築かれていきます。食べたり飲んだり、たわいもないことを語り合いふざけ合う、時には子供じみた遊びに興じて共に時を過ごす。そんな彼らの姿を見るだけで感動を覚えるのは、国や軍の建て前では決して許されない行動を、彼らはやってのけているからです。
 もっとびっくりしたのは、北と南の部隊が雪原で出会った時、ギョンピル中士と南のピョ将軍とがタバコ交換しあい、兵士たちもそれを見ているシーンです。

 『板門点では・・・、事実を隠してこそ平和が保たれる。双方が望んでいるのは、事実が曖昧になること。』という言葉がありました。私は基本的には、物事はきちんと説明してはっきりさせてよ!というタイプです。でも、最後のショットを見た瞬間、大きな問題を動かしていく過程ではそれ(曖昧)もアリなのかと思えました。そしてそれを知っていたのがギョンピル中士ではないかとも思いました。何度か観るうちに、彼で始まり彼で終わった作品だと感じるようになりました。
 スヒョクが最後にとった行動の意味を、観直すたびにいろいろ考えてしまい、私の中で整理できないままです。でも少なくとも南のソンシク一等兵の自殺は、自分の行動を今の体制の中で説明できない恐怖に潰されたのだと思います。

 観終わって、わずかに開いた扉からもう一歩踏み出せなかったもどかしさを感じる一方、いやそれをしてしまうといっぺんに現実感がなくなるのだろうと思いました。そして権力の端っこ見方によっては権力の要(かなめ)にいる彼らの間で、確かに友情が築かれたことにすごく感動すると共に、感情だけではたやすく動かせない現実に彼らもまた呑み込まれていくという重い気分を感じる作品でした。こんなすごい映画を作ってしまった方々に感動しました。俳優さんたちの名前も韓国語も全然分かりませんが、無理なく引き込まれて観ることができました。本当の現実がどういう状況なのかはよく分かりませんが、南北両国の方々の交流が良い方向に進むといいなと思います。