リベラ・メ


 この作品の輪郭を知った時点で以前観た「バックドラフト」をすぐ思い出しましたが、炎や爆発の迫力は何倍にも巨大化しています。あれが実写だなんて信じられません。この迫力を味わうことは、この作品の一つのねうちです。でもこの映画が邦画だったら、つまり日本のどこかの街で日本の俳優さん(よ〜く似たタレントさんや俳優さんが思い浮かんでしまうのです。)が演じていたら、とても現実味が感じられなくて、あの世界には入っていけそうにありません。そんな意味でも、うまく言えませんがちょっと距離のある韓国映画だと、逆に違和感なく自然に感動できるような気がしました。

 なんといっても火災現場で闘う消防士たちの、勇気・命までも捧げる責任感あるいは恐怖心との葛藤には、かなり胸を打たれます。サンウ(チェ・ミンス)の場合かつてのパートナー、インスの殉職に対しての罪悪感を背負っていて、いっそう職務に没頭しているようです。火災現場で何者かの存在を感じ、放火を疑います。

 一方放火犯ヒス(チャ・スンウォン)の気味が悪いほどの異常ぶりには、背筋が寒くなりました。その原因が幼児期に受けた虐待で、その標的が虐待されている子供の家というのは、なんとも重くてやりきれません。でもその点さほど深く描かれていないので、私には心の叫びが聞こえてきません。単に異常な人格になってしまい卑劣な放火を繰り返すというのでは、同情のかけらも感じることができなくて辛いです。
 私としては、ただの爆弾マニアか、もっと別の状況での放火という設定の方が、エンターテイメントとしては楽しめたけど、それだとどこにでもあるようなストーリーということで、作品の質に問題ありということなのでしょうか。