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コールドマウンテン


 もう涙なみだ・・・のラブストーリーで、切なくて辛くて悲しくて、こんなに涙したのは久しぶり。いろんな表情を見せてくれた主演のジュード・ロウとニコール・キッドマンがすごく良かったし、ほかキャスティングもみんなぴったりで、約2時間半の作品に最後まで見入ってしまいました。南北戦争末期が舞台で、酷い戦場シーンはかなりのものだし、長閑だった過去のシーンと行き来することでいっそう悲惨で空しく思われたりもして、いつもだとこんなの見たくなかったな〜と思うのですが、この作品ではだからこそ、登場人物たちの愛の強さやその愛を支えに困難な状況で生き抜こうとしている姿に、いっそう胸がいっぱいになってしまい感動しました。主人公だけでなく周りの人物にもドラマがあって、相乗効果で感情が溢れてくるって感じで、ふと感情移入しては涙してしまうのでした。

 戦うことを喜び合う男たち、南北戦争特有の戦う意味が男たちにあったのかもしれないけど、それでも愛する者を残していくことで心の中では''必ず帰ってくる''と誓っていたでしょう。3年後の戦場では、南軍北軍入り乱れての地獄絵のようなありさま。この中のいったいどれだけの人が故郷に帰れるというのか・・・。その中にエイダ(ニコール・キッドマン)から渡された本に彼女の写真と届いた手紙を挟んで故郷コールドマウンテンを想うインマン(ジュード・ロウ)もいました。

 インマンとエイダは一目惚れで、そしてしばらく経っても二人は気持ちを通わすことに不器用だったけど確かな愛をお互いの心に育んできたのでしょう。いよいよインマンが戦に出ていく日、彼は見送りに来た彼女を引き寄せたった一度になるかもしれないキスで気持ちを表しました。エイダはコールドマウンテン辺りのことが書かれた本と微笑めなかった表情の写真を渡して『帰りを待っているわ』と言い、彼は何も言わずに微かな微笑みを残して戦場へと行進して行きました。

 とにかくこれは何があっても待ち続けたエイダの物語。実際に役に立つことはするなと言われて育った彼女は生活労働の術や知恵を持ち合わせてないので、父を亡くしたことで窮地に立たされますが、それでもこの地でインマンを待ち続けようとするのです。そしてサリー(キャシー・ベイガー)の援助もあって、ルビー(レニー・ゼルヴィガー)との生活が始まり、ルビーに助けられ、徐々にたくましさを身につけていくエイダがまたいいんです。ニコールは、生活感のないお嬢さんがその環境を無くしたらろくなコトもできないのが、やがて生きる力を身につけていくっていう役、「遙かなる大地へ」でもそうでしたね、そういうの似合います。そしてここでは、どんなことがあってもここでインマンを待っているのだという一途な気持ちに支えられてこそっていうのがいいんですよね〜。
 レニー・ゼルヴィガーはこの役でアカデミー助演女優賞を受賞しただけあって、存在感のあるいい味出していました。勝ち気で男勝りな生活力があって、エイダをぐんぐん引っ張っていくけど、やがて夢を分かち合う友情で結ばれていきます。また、今まで散々辛い目に遭わされた父親を拒絶しながらも、ついには必死になって命を救い受け入れていくところや、ついにインマンが戻ってきて喜ぶエイダへの複雑な感情を押し殺す姿には、すごくジーンとさせられます。

 一方これは瀕死の重傷から生き延びたインマンの、エイダが待つコールドマウンテンへの旅の物語。脱走兵となったインマンには、脱走兵狩りなどに遭いながらの危険で過酷な道程なのでした。人を殺しまくり自らの人間性も捨ててしまったようなインマンにとって、エイダへの愛だけは揺るぎないものだったのでしょう。
 乳飲み子を抱えた戦争未亡人のセーラ(ナタリー・ポートマン)が、インマンに一晩の寝床と食べものを与えますが、夜半になってセーラがインマンに『私の隣で寝てほしいの。でも何もしないで。。。』と頼みます。インマンが『自分にはとても愛している大切な女がいる。』と話し、それぞれが想う人に涙して寄り添います。このシーン、UKIUKIにとってこの作品で一番のお気に入り、思い出すだけでも泣けてきます。翌朝北軍兵士の略奪に遭って半狂乱になるセーラにも共感、母を演じるナタリーに見とれました。インマンが撃退してくれますが、セーラが最後の一人を銃で撃ってしまうのを見て、インマンが何ともいえない寂しげな表情をするのが印象的でした。嫌というほど人を殺して汚れてしまった自分だけど、セーラという女性もまた戦争で変わってしまったことへのショックを感じました。

 いろいろあった後、ついに二人の再会! でもやはり銃を手にするエイダを見たインマンは戸惑っているようでした。自分もエイダも変わってしまって・・・と、動揺しているインマン。二人がお互いの気持ちを確かめ合い、しだいに以前の気持ちが甦ってきて喜びが高まってくるのが良かったです。そして物語の結末は。。。
 ラストは、インマンとの宝物に支えられて新たな未来に歩み出したエイダの姿、インマンの旅が報われた証ですね。周りに、共に苦境の時を過ごした人たちがいるのが救いでした。