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ガタカ


 遺伝子による差別を禁止している法など何の意味も持たず、遺伝子操作によって優れた頭脳と肉体をもって生まれた者だけが、エリートとして生きていくことのできるシステムで社会が成り立っている近未来の物語。

 ビンセント(イーサン・ホーク)は宇宙飛行士になる夢を抱き続けていたが、遺伝子操作を受けずに自然に生まれた“不適正者”の彼にその道は閉ざされていた。ある日、普通に遺伝子操作を受けて“適正者”として生まれた弟アントン(ローレン・ディーン)に初めて遠泳チキンレースで勝ったことで、彼は夢に向かって一歩を踏み出すべく一人家を出ていく。
 ジェローム・モロー(ジュード・ロウ)は優秀な遺伝子を持ちエリート中のエリートになるはずだったが、目標に達することなく自ら招いた事故で半身不随になっていた。完璧な遺伝子を持っていることへの重荷を持ち続けている彼もまた、社会の中で孤独だった。
 ビンセントとジェロームは、人間の価値を支配する科学的システムを利用することで、夢をかなえ或いは苦しみから逃れようと契約を結ぶ。

 この作品UKIUKIのお気に入りですが、久しぶりに観てこれを書いています。あっそうそう、そうだったーと観ていくうちに、やっぱりいいなって思いました。細かく見てると、あれっおかしいやんって気づくことがあるのはSFの宿命かも、でも気になりません。
 SFでありながら、ジェロームの遺伝子で“ガタカ”のエリート社員になったビンセントが“不適正者”であることを隠し通せるかというドキドキ感と絡ませて、上司殺害の容疑者にされそうになるサスペンスでもあり、“適正者”でありながらもハンディを持つアイリーン(ユマ・サーマン)とのラブ・ストーリーでもあり、両親や特に兄との関係、或いは適性検査の医師らガタカでの人との関わりにもドラマがあります。科学的なシステムに支配された未来の物語ですが、その中で描かれているのは実に人間的な感情で、それがこの作品の魅力だと改めて気づきました。