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ストレイト・ストーリー


 ゆっくりとした感じのロードムービーということで、ゆったりとした気分のときに観なくては・・・と思っていましたが、正解でした。地平線まで続く畑や平原の景色のなか、ゆっくり進むトラクターのスピードに、私の気分を乗せることが出来てよかったです。そして退屈な作品かなという心配は、観ていくうちに消えましたね。私も歳を取ったとき、こんなふうに余分な力をぬいた頑固さと穏やかさをもって生きたいと思いました。静かな感動を味わうことのできた作品です。

 73歳のアルヴィン・ストレイトは、娘ローズと二人暮らし。健康状態もあまり良くありません。ある日、兄のライルが倒れたとの連絡が入ります。
 アルヴィンは、ライルに会うため旅に出ることを決意します。子どもの頃から仲が良く、遊びのように二人で働き、短い夏には外で寝て星空を眺めながらいろんな話をした思い出があります。なのに10年前に仲たがいし絶縁していたのです。

 腰やら目やらあちこち弱っているのに、トレーラーを引っ張ったトラクターで行くことにしました。困ったときは助けを求め、人の好意を素直に受け入れながら、あくまでも自力で行こうとする頑固さが、見ていて気持ちいいです。途中、出会った人々との交流は、何かを与え与えられていきます。アルヴィンの人生がだんだん見えてきます。戦争体験、妻との死別、娘ローズの不幸、仲の良かった兄との衝突など重い人生の記憶を背負っています。それでも人は歳を重ねれば、人生の経験が多ければ多いほど、無駄な力のぬけた強さを持って穏やかな生き方が出来るようになるのかという期待が生まれました。

 やっと再会した二人、ライルはトラクターを見てアルヴィンが自力で会いに来たことを知り、彼の誠意を一瞬の内に感じることが出来たのだと思います。最後二人が多くを語らず、カメラが星空に向けられていくところがすごく良かったです。