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小説家を見つけたら ネタバレです


 久しぶりにゆったりした時間を過ごしたいなと思って、何気なく観ていた作品なのですが、そのうちに心地いい気分を意識し始め、あれっと思いました。映画の中でよく?見かける高校生は、問題を抱えてすさんだ様子です。家庭や学校や社会で、彼らの抱える問題や一部で存在している現実をさらけ出すのが映画だっていったようなものです。そんな時、多くの場合飲酒や喫煙や暴力や荒れた学校、退廃的な生活や男女関係などの映像に、ずっしりと考えさせられるか観ていて嫌になるかのどちらかです。
 でもこの作品では、友人とバスケットボールをするのに夢中だけど、家では本を読むのが好きで自分でもノートに何かしら書きためている、16歳の普通の高校生ジャマール・ウォレスと、たった1冊だけ出版して姿を消した幻の作家ウィリアム・フォレスターとの偶然の出会いが、二人の人生に大きく関わっていく様子を描くのに重きが置かれているので、特に主人公のジャマールが美青年で上品な雰囲気を持っているだけでなく、彼の遊び仲間や学校の生徒、親や町の様子なども、それぞれに問題や悩みを持っていることは想像できますが、あえてその事を表面に出さずに作られています。それで嫌な場面を見ることなくゆったりと物語に浸れたのです。

   ジャマールはいつも仲間とバスケを楽しんでいましたが、それを見下ろすかのようにいつも窓際から覗いているけど、決して姿を現さない謎の人物がいました。彼らはその男をウインドウと呼び、実は殺人犯だといったようなミステリアスな伝説を作り上げていきました。
 ある日仲間にけしかけられてウインドウの部屋に忍び込んだジャマールは、ウインドウに見つかって逃げるときにバッグを置いてきてしまいました。この時ジャマールをけしかけた友だちが、彼が本当に行く気になっているのを見て、マジに心配し始めるのが微笑ましいです。
 何日かたってバッグが投げ落とされ、中に入れてあった彼のノートを開くと、彼の文章に丁寧な添削がされているのでした。ジャマールは、ほかにも書いたものを見せたいと思い、ウインドウを訪ねるのでした。するとウインドウは、ここに二度と来ないって文章を五千語で書けなどと注文を出すのでしたが、やがてジャマールを部屋に入るようになります。
 ある時ジャマールは、ウインドウが幻の作家ウィリアム・フォレスターだと気づきます。ウィリアムは、自分のことを誰にも何も喋らないことを条件に、ジャマールに文章の書き方を教え始めます。
 その頃ジャマールは、普段は中くらいの成績だったのが、優れた学力試験の結果とバスケの才能で私立高からの誘いを受け転校します。そしてついに文学的才能が開花しすばらしい作文を書くのですが、教師はそれを受け入れることができません。
 ジャマールに誘われて、なんとウィリアムが街に出かけました。ウィリアムがジャマールに心の内を語るシーンに感動しました。二人の間に確かな友情を感じました。
 友情を守ってウィリアムのことを何も話さないジャマール、彼を救うためについに人前に出ていくウィリアムを見て嬉しくなりました。
   君に教えることはもう何もないと言ってウィリアムは去っていきました。最後にジャマールに届いた彼の手紙には、ジャマールに出会って『人生の冬に夢が実現した』とありました。
   ウィリアムはジャマールの文学的才能に影響を与えたけど、ジャマールもウィリアムの人生に変化を与えたのです。
 最後にジャマールには才能を生かした明るい未来が想像されますが、昔の仲間が彼を受け入れ、以前と同じようにバスケを楽しむ姿に、この映画を観たことへの大きな満足感を感じました。

 この作品には、ウィリアムを演じるショーン・コネリー以外はほとんど私の知らない俳優さんばかりが出演しています。彼は当然すごく存在感がありましたが、それ以上にジャマールを演じるたぶんロブ・ブラウンとのバランスを上手くとっているところがすごいなあと思いました。