本の紹介

 

2013.10
『口ひげを剃る男』
作者 エマニュエル・カレール著
初版 2006年
出版社 河出書房新社

口ひげを剃ったかどうか?日常の何でもない事柄から発展して、読む者をぐんぐん引き込んでいく物語。

彼はある日、妻をおどろかせようとして長い間生やしていた口ひげを剃った。
だが、妻はおどろかない。周りの友人達も誰もおどろかない。妻は、口ひげは前から生えてなかったという。 証拠写真を見せても憐みの目で精神科医に診てもらうことを勧める妻。 口ひげは元々前から無かったのかもしれないと自信をなくし不安になる彼。
はたして彼は本当に精神を病んでいるのか?それとも妻が悪女で嘘をついて陥れているのか?
すべて彼の夢想なのか?それとも妻の錯綜的な仕掛けなのか?

彼の心理に付き合わされてついつい引き込まれてしまい、 題名が「口ひげを剃った男」ではなく「口ひげを剃る男」だったと後で気付く。結末は意外だった。
「あとがき」に作者自身の手により、この小説が映画化されたとあったが、一番映画化されにくい類の小説のように思うのだが・・。

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