今、放映中のテレビドラマ「アルジャーノンに花束を」を見ていて、
うろ覚えながらも自分が読んだ本の記憶とかなり違うので、又読みたくなり本を購入した。
久しぶりに読み応えのある小説だった。
物語はチャーリー・ゴードンのある実験の経過報告書から成り立っている。
パン屋で働くチャーリー。IQも低く、身寄りもいない。
そんなチャーリーがある実験を受けることになる。
その実験とは、簡単に言えば人間のIQを人工的に上げることだった。
すでに廿日ネズミ「アルジャーノン」で成功しているその手術をチャーリーは受ける。
IQが上がるにつれ、蘇ってくるチャーリーの悲しい過去。
幻想のように現われる幼い日のチャーリー。その過去を冷静に分析するもう一人のチャーリー。
二重人格者のような心理や、知能の成長に情緒がついていけず苦悩する様子などが経過報告となっている。
知識も広がり、周りの人々を観察する目も変わり、接し方も変わってくるチャーリー。
だが彼は「アルジャーノン」の行動から自分の未来を・・・。
”お利口”になった彼は、はたして幸せだっただろうか?
自分の未来を委ねなければならないはずの教授たちの愚かさを知った不安は・・・。
キニアン先生から無邪気に学ぶ喜びを知り、書物からいろんな知識を得、精神的にも成長し、享楽も覚え、
一人の男としてアリス(キニアン先生)に恋をし、お互いに愛し合う。が、やがそれらをすべてを忘れ去り、
初め学んだ時のキニアン先生(恋人)のセンターの、以前座っていた自分の席に座るチャーリー。
僅か8ヶ月余りの経過報告書は人生の縮図を見るようだった。
暖かな人間味あるチャーリーゆえに切ない。