Dream Lobby(ドリームロビー):第1話
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第1話:片腕のピアニスト 後編
ドリームロビー通信 無我夢中 vol.0047
やあみんな。いい夢見てるかい?ガルー@STAFFだよ。
今日からシステムのバージョンアップに伴い以下の機能が追加されたんだ。
・「イイ」システムの要領変更(このイイシステムは別の話で解説します)
ロビー内通貨「イイ」の配布要領が変更となりました。
ログアウト後「イイ」を配布→ログイン中でも受付にて配布可能に
一度に配布できる「イイ」を20→30に
一度のログインで配布できる「イイ」の総量を50→100に
・絵画ダウンロードサービス(ドリームタワー4階)
お絵かきボードで絵を描いた場合、描きあげた時間から24時間以内なら実生活でダウンロードする事が可能になりました。
ただし絵画の持ち込み(アップロード)は現在対応しておりません。
絵にパスワードをかければ描いた本人のみダウンロード可能、という事も出来ます。
・楽器録音サービス(ドリームタワー7階)
ピアノ等で演奏したデータをmidi音源として実生活でダウンロードする事が可能になりました。
これは曲を弾いた本人のみダウンロードが可能です。
仲間内などでセッションした場合、その演者全員に全体録音したファイルが送られます。
・アバターに「格闘技」の服を追加
ドリームタワー2階の「スポーツ」カテゴリ住民から要望が高かった「格闘技」にまつわる服を用意しました。
値段は以下の通りです。
柔道着 20イイ
空手着 20イイ
ボクサーパンツ 20イイ
忍者衣装 30イイ
8月は待ちに待った夏祭り月間だ!特別アバターも用意するからみんな期待しててね!
ドリームロビー スタッフ一同
お、いよいよ要望の高かった録音サービスが始るんだな。
まだまだ左腕も動くしCD作れるくらい弾きまくってやる。
システムの都合上連日とまではいかないけど行く度に期待されて色んな曲を発表したりたまにセッションしたりと有頂天気味なピアニスト「フォルテ」。
夜は演奏して昼はmidi音源という慣れないデータと格闘する日々が続いた。
しかし・・・・・・無常にもその「時」はやって来る。
♪♪♪♪♪♪♪♪♪ ♪ ♪ ♪
あれ?
♪♪♪♪♪♪♪ ♪ ♪
・・・何だ?
♪ ♪ ♪♪
・・・オイオイ・・・まさか・・・
左手が・・・どんどん感覚が無くなってきている!!??
ちょ、ちょっと待ってよ!折角手に入れた左手なのにもうお別れなのかよ!
ダメだ・・・こんなんじゃ弾けない・・・・・・
フォルテさんへのメッセージです。
*「どうした?スランプか?」
*「いいピアニストがいると聞いてやって来たのに・・・」
はぁ・・・もうおしまいだ・・・・・・
ボクの左手が・・・夢の中でも動かなくなってきてる・・・・・・
[しばらくは休業、聞き手に専念します]
周りも無常なもので、フォルテが弾けないと見るや否やすぐに別のピアノ弾きの所へ注目を集める。
聞き手として来ていたフォルテは周りの心配メッセージも受け入れてはいたが、動かない手だけはリクエストに応える事が出来ない。
そんな事が何回も続き、フォルテ自身フラストレーションが溜まっていた。
そんなある日の夢での出来事。
「たまには右手だけでもいいから弾くか・・・」
そう思ったフォルテがピアノの椅子に座った時
「隣、よろしいでしょうか」
え?誰?
「フォルテさん・・・ですよね。お噂はかねがね。」
「はぁ・・・」
「どうされたのですか?左手がうまく作用しないようですが」
どうしよう・・・今まで左手の事は黙ってたけど喋ってしまおうか・・・
「片腕・・・なんですね」
え?
「あなたの事は新聞で読みました。将来を有望視されたピアニストの卵が交通事故で左手を失った、と」
・・・あ、そうか。そいや新聞読んでないから自分が記事になってるなんて知らなかった・・・
「私もピアノの経験はあります。私が左手パートを弾きますから一緒にセッションしましょう」
「いいけど、自分は創作 つまりオリジナルだから」
「解ります」
「は?」
「だいたいのメロディーからコードを読み取って、即興でベースパターンを作ることなら出来ますから」
そんな事出来るの?
「いいから、私に預けて下さい」
♪
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
な・・・なんだこの人は・・・
まるでこの曲を予め知ってるみたいだ・・・・・・
♪ ♪
「今日はとても楽しかったです。またご一緒して頂けますか?」
「はい・・・」
[ログアウト]
フォルテさんへのメッセージです。
*「セッション ありがとうございます
またご一緒しましょう」
*「久々の演奏、お疲れさん。やっぱりアンタでないと盛り上らないぜ」
*「隣にいた人ってだれ?初めて見たぞ」
誰だろ・・・・・・・
[ログイン]
「あ、また会えましたね。またセッションしましょうか」
「あの、アナタは 誰なんですか?何で僕の曲を」
クス・・・
「私は アナタの すぐ近くにいます。いつも聞こえてますから 解ります。」
「じゃあ夢から覚めたら会えますか?」
「それは・・・ちょっと。」
「どうして?僕は会いたい!会って話がしたい!!」
「・・・・・・解りました。 それでは、私は夢から覚めたら胸のポケットに『トランプ』を入れます。それが目印です」
「解った。解りました。探し出します。」
[ログアウト]
あ、カード。カードの「主」は誰だろ。
僕は病院内の隣の部屋や看護士さん達の胸の辺りを見たが「目印」を入れた人が見当たらない。
まぁ胸元を見られるから怪訝そうに見られるというのは言うまでも無いけど。
数時間後、部屋に戻って一人イライラしていると
コンコン
誰?先生かな?
「どうぞ」
ギィ・・・・・・・・・・
あ
胸ポケットにトランプのカードが
それを見て
僕は
思わず
泣き出してしまった
だって
その人は
僕の
父さん・・・・・・・・・・・・
アナタだったんですね。
名声は世界に届く名ピアニストの
僕の
父さん。
「悪かったな。なんか見ていられなくなって、つい手を差し伸べてしまった。」
「いいよ・・・・・・・・そんな事」
「CD製作したいんだろ?私も手伝えることなら何でも手伝うぞ」
数ヶ月後
「夢の欠片/フォルテ」というCDがリリース。
ピアノを中心とした夢の中にいるような幻想的な曲を集めたCDだ。
最初は売れ行きもパッとしなかったが、口コミと「同じ夢」を見た人がこぞって買うようになり、数ヶ月かかって目標の倍の売り上げを記録した。
フォルテは今も と言っても回数は減ったがピアノを弾いている。
しかも
「では、今日のレッスンを開始しようか」
「はーい 先生」
若き作曲家やピアニストに作曲やピアノの指導。
フォルテは右手だけで器用にピアノを弾き続ける。
「先生、今度CD出すんです。良かったら推薦文書いてもらえますか?」
「いいよ。夢から覚めたらメッセージ入れてくれる?」
「ありがとうございます!」
今日もやさしいメロディーがフロアに響き渡る。
終