くらしのなかで
―― 建築家の視点から ――

vol.52


建物を合わすか 建物に合わすか


私は住宅を設計をするにあたり
可能な限りお客さんからの要望を聞かせてもらいます
そして建物を出来るだけ
お客さんの要望に近づけるように考えます

しかし先日、お客さんがこうおっしゃいました。
『間取りはどうでもいいんです。
私が建物に合わせます

なるほど・・・ と思わされた言葉でした
そして、自分の生活を振り返って
そういえば私も建物に合わせてきたなあ・・・
とあらためて思い当たってしまいました

私の場合、(実家以外に住んだ)
現在までの5カ所の住まいは全て賃貸
アタリマエかもしれませんが、
決まっている間取りに向けて生活を合わせています。
このHPの中の『コスモハイム1-C』のコンテンツで
連載している内容も
『自分たちが間取りに合わせて生活している報告』です。

私はこのお客さんのおかげで、
そんなことを最近、再確認することが出来たのでした。


建物を生活に合わすことが出来るなら
こんなに良いことはありません。
私も出来る限りそれぞれの生活に合わせた
住宅を(設計を通して)提案しています。
しかし、100%にはなりにくいし、生活スタイルの変遷で、
そのうち建物に合わせないといけないことも
出てくるかもしれません。

このようなことを自覚しながら
建物を(自分に)合わしたり、建物に(自分を)合わしたり
することを楽しんでいくこと

きっと『自分と住まいの良好な関係』なのでしょう。

その昔、私が東京に住んでいた時の、公団住宅の間取りです
浴室前の廊下に全自動洗濯機を置いたり、
キッチン横の洗面台の上に板をわたしてガスコンロを置いたり
間取りに向けて生活を合わせていった典型例でした。

2005.02