くらしのなかで
―― 建築家の視点から ――

vol.45



虫のこと


先日、県外出身の奥さんたちの声を聞く機会がありました。
その奥さんたちは、この地域の店頭に並ぶ殺虫剤
種類が多いことに驚いているようです。

気になって薬局やホームセンターの店頭に
見に行ってみると、なるほどなるほど・・・
最初に目に入るのが殺虫、防虫剤の陳列棚です。
季節柄、特にそうなっていることもあるのですが
やっぱり売れるから店頭に並んでいるのでしょう。

なにやら『ハッ』とさせられて
それ以来、虫について考えています。

人はだいたい、虫が屋内に入るのを嫌がります
屋内に入ってくれば退治します、
私はあんまり殺したくないので
出来るだけ追い出します。
でも、蚊は殺します・・・ゴキブリも・・・

『家の中をできるだけ虫のいない環境にすること』
現代生活の通念になってきていますが。
急に違和感を覚えはじめています。

どんどん家から虫を排除するくせに、
人間は自然というものを尊びます
TVに映る自然番組は録画します。
映像的にキレイな自然が人を癒します。
しかし、身体感覚のない都合のいい自然です。

私にも思い当たることが・・・
半年前に旅したペルーのマチュピチュ
マチュピチュはTVで見ていた美しい自然そのものでしたが
実際に行ってみると虫にさされまくりました
TVでは絶対、想像できなかった現実の自然でした
考えてみれば自然界で虫の存在はアタリマエのものです。

現在、住宅の『高気密高断熱化』は虫をさらに排除しています。
空気を人工的にコントロールし、
虫を薬剤にて都合よく退治する・・・
そして、ファッション雑誌に出てくるような
体感的に気持ちのいい、美しく快適な暮らしに向かいます。

しかし、そのことで人間がドンドン弱くなってきている。
人間の抗体がドンドン落ちてきているとも聞きます。
また、それを加速させている現状もあります。
今年の夏はこの『虫のこと』をテーマにして
少し気にしながら過ごそうと思い始めたところです。

そして、(わざわざ蚊に刺されたくはありませんので)
今年の夏は、せめて虫を入れないまでも
窓を開けて網戸にして自然の風を入れ
外の虫の声でも聞きながら
暮らしていこうとも思います。


近所のホームセンターの入口の陳列棚です
見事な殺虫剤、防虫剤のコーナーです

2004.07