くらしのなかで
―― 建築家の視点から ――

vol.36


バルコニーについて

住宅を設計していると建主から様々な要望が出てきますが、
ここ数年の私へのバルコニーの要望率は100パーセント!!!
(ただし平屋は除きます)
これは最近、私が気付いた恐るべき現実のデータです。
それほどにバルコニーは大人気!!!
しかしそのバルコニーについて、私は最近しきりに考えます。
先日、家を新築された夫婦からこんなことを聞きました

うちのバルコニー
あそこにテーブルを置いて
お茶でも飲もうと思ってたんだけど、
そんなこと一度もしていないよね。
その代わりに洗濯物を干し始めたら
これが、楽でずっと物干場になっちゃった。

これはとても興味深い話であり、これが
日本に存在するほとんどのバルコニーの現状でないかと考えます
私の知る限り、本当にバルコニーに出て
お茶など(団欒らしきこと)をしている人はいません。
せいぜい夏の花火大会の夜、バルコニーでビールを飲む程度です。

これには原因があります。まずバルコニーの狭さ。
たいていのバルコニーの内法は1メートル弱
この寸法ではとてもテーブルなどは置けません
オマケに夏はバルコニーに置かれたエアコン室外機の排熱で
暑くてとてもいられない・・・ 逆に冬は寒い・・・
少しずつ物も置かれ、ホコリも吹き溜まる・・・
かくしてバルコニーは物干場&布団干場となるか、
あるいは全く使われなくなる。
この説は、家の新築後しばらく経った数家族に話しましたが
皆一様に同意していただいた話題です

とはいえ、共働きが多い現在、バルコニーに
洗濯物を干したまま外出できるという
物干場としてのメリット
は大きいと思います。
しかし、メリットがそれだけだとなるとやはり
現在、私への100%の要望率とはなんなのか???
それほどまでにバルコニーは必要なのだろうか???

と考えてしまうのです

ただ、バルコニーから派生するメリットはあります。例えば

バルコニーをつけると2階の窓が履出し窓(床までの窓)になる

採光条件を良くする上で、これは大きなメリットです。
しかし、これは必ずしもバルコニーがなくても実現できます。
実は、私の設計した私の実家にバルコニーはありません。
しかし2階部分に履出し窓を付けました。
さすがにこれだけだと危険なので
手摺代わりの板を4枚横に渡しました。
この家は、ちょうど高台に建っていることもあり、
バルコニーをつけるより室内からの見晴らしは抜群。
手摺には布団も干せます。
これはバルコニーが履き出し窓をつける為の
絶対の条件にはならない一つの例です。

ちょっと長くなってきたので、そろそろ結論。。。
私は決してバルコニーを否定しているのではありあません。
でも、あなたの家には本当にバルコニーは必要ですか???
家を計画する時、自動的に 『ただバルコニーが欲しい』 と考えずに
もう一度 『バルコニーにあなたが求めるもの』 
考えてみるといいと思います。

また、もし本当に快適なバルコニーを実現させるなら
ある程度の奥行き(2.5メートル程度)を満たした上で
最低4畳半ぐらいの大きさが必要かなあと思っているところです

我の実家に付いている掃き出し窓です。
ここはバルコニーにしなくて正解だったと
今でも思っています。

2003.09