くらしのなかで
―― 建築家の視点から ――

vol.31


匂いの空間演出

 

ひと昔前からトイレの消臭剤がバカ売れしています。
これはまだ理解できましたが
最近は『部屋の消臭スプレー』が大好評のようですね
私はこの『無臭ブーム』に少し異常を感じます
匂いは『無』に向かうのではなく
匂いを『多様に楽しむ』方向に
向かうほうが良いと思っています。

私は少し前までしばしば海外へ旅行していましたが
その実感として、
旅先の匂いを、旅先の風景と共に記憶しています。
国によっては匂いが最大の印象であるぐらいです。

* 東南アジアのまとわりつくような湿度を帯びた匂い
* 香港の独特な香辛料の匂い
* 中東の少しざらつく(砂のような)匂い


『ああ、そうそう』と思う人も多いことでしょう
それらのどの匂いも、おおむね私は好きです。
そして、時々その国の匂いが懐かしくなったりします。

国々固有の匂いには文化の蓄積を感じますし、
国民性や人間性も感じます。
それぞれが良い匂いの記憶です。

毎日の個々の生活を文化論で語るのは
いささか広げすぎですが
匂いは意識して積極的に楽しむほうが
生活に拡がりが出てくるはずです


匂いは目に見えないものですが
空間を演出する重要な要素になるのです。


** 例1 **

例えばそろそろ春、色々な花が咲きはじめます
そんな匂いにも少し気を向け、一輪ざしなど
生活のアクセントにするのは如何でしょうか。

** 例2 **

一時期アロマテラピーがブームでしたが
それと同じ感覚でお茶の葉をのせてみると如何でしょうか
『茶香炉』というものがありますが、これの簡易版です
御茶屋さんのような爽やかな匂いが楽しめます。

写真は100円ショップで購入したアロマポットです
少し古くなったお茶の葉をのせて『茶香炉』的に
使ってみました。 ただし 
『火の用心!』 です。

2003.04