くらしのなかで
―― 建築家の視点から ――

vol.9


くつを脱ぐという日本文化


日本ではアタリマエですが、家で靴を脱ぐという民族は
世界中を見渡しても珍しいのです

私がずっと気にしていることなのですが
この靴を脱ぐという文化、
おそらく日本人の美意識にも影響を与えています

皆さんも部屋を歩いていて、
板張りの廊下と畳の和室とカーペットの洋室の区別は
足の裏の感触でわかることでしょう。
床に小さなセンベイのかけらが落ちていても
踏みつけたら発見するでしょう。
無意識に足の裏の触覚器官が繊細に物をさぐっているのです。

日本人は、靴を履いて生活している国の人たちよりも
繊細な感受性を持ち合わせているように思います

そう考えていくと、通常住宅の床に使う
合板のフローリングというものは
木ではありますが表面がコーティングされていて
足ざわりは木ではなくてプラスチックです。
手入れが楽であるとはいえ少し残念です。

これが理由ではないでしょうが
最近は床にムクの板を使うことも“ブーム”になっていることは
とてもいい現象だと思います。

なにはともあれ、これからも『足の裏の感性』
大切にしていこうと思っています。
そろそろハダシの方が気持ちが良い季節です
たぶん健康にもいいし、足の裏の感性も磨けます・・・
2001.06