利家とまつ <TV> (2002)


 やっと観ました。NHK大河ドラマということでその回数と雰囲気を思うとなかなか取っつき難かったのですが、雰囲気は意外にも堅苦しくなく観やすい感じで、これでこんなのなら現代の時代劇は押し並べてこんなふうなんだ〜って、子どもの頃に観ていたのとは違うなって気がしました。しっかし全50話、長〜〜〜い! とても一気にというわけにもいかず、ボチボチ観ていました。伊藤英明登場は24話からという情報をいただいていましたが、一度はちゃんと通して観ておきたかったので・・・。
 世の中が激しく動いた戦国乱世の時代を生きぬいて加賀百万石の礎を築きあげた前田利家と妻まつが主人公の物語。歴史に疎いUKIUKIにとっては信長、秀吉、家康がその時代の中心人物ということで、前田利家の存在はほとんど知らなかったし、この作品を観てもやっぱり彼は歴史の脇役だと思いました。こういう人物が主人公の作品ですから、信長、秀吉などはもう思いっきり絡んでくるわけで、同じ時代を描いても、視点が変わるとまた彼らの人間関係の描き方が面白いなと思いました。焦点のあて方脚色によっていろんなふうに見せられるんですね。利家の残酷な部分など描かれていないと、どこかに書かれていました。まつやおねといった女性の描き方なども、かなり脚色されているような印象を持ちましたが、どうなのでしょう・・・。歴史に詳しい方はどのような感想を持たれるのか、史実に必ずしも忠実ではないということUKIUKIとしてはそれはどの部分なのかとか気づかず、だったら全て正しい歴史だとは思わずエンターテイメントとして楽しむしかないです。
 時代の重なる部分が多い「国盗物語」と、人物像などつい比べてしまったりします。なかでも光秀は、俳優さん自身の雰囲気が全然違うというのも大きいですが、全く別人のようでした。先に製作されたこの作品を後から観ているので、どう表現していいのか、信長はあの口癖「で、あるか」やあの舞い”敦盛(っていうのかな?)”桶狭間に向けてのシーンなど、わりと重なる感じもするけど、こちらの方がより強引で したたかで 策略家に描いているように思いました。天下統一というだけでなく、”新しい世を作る ”というのは、「国盗物語」の信長の方が強く出ていたと思います。また秀吉はもう比べものにならないほどこちらではたっぷり、中後半はほとんど主人公のように描かれていました。

 これは、突き詰めればとにかく利家(唐沢寿明)と まつ(山口美香→松嶋菜々子)の愛の物語でした。そしてまた彼らの周りにいる秀吉(香川照之)と おね(酒井法子)、佐々成政(山口祐一郎)と はる(天海祐希)、他の登場人物それぞれの愛の物語もたっぷり。友情もたっぷり。つまり、愛する者や生涯の友の存在や行動で、彼らの行動や生き方が方向付けられていった、この時代の歴史が作られていったという感じでした。女性が意外に強く、家の主である方が男もよく働いたようですし、なんとなく違和感を感じるほど女性も歴史の事象に深くかかわっています。またそれでいて、特に前半などは、子に先立たれたり子と別れなければならない母の寂しさ悲しさに、涙するばかりの物語でした。

 利家は戦人(いくさびと)です。でも彼は”まことに中途半端”な戦人でした。信長(反町隆史)の忠実な奉公人だったし、続いて柴田勝家(松平健)にも心から仕え、秀吉とは五分と五分の親友でしたが、戦人として天下取りを夢見ることもありました。そのつもりになって何もかも割り切れば時代が動くその狭間に彼が天下人になるチャンスは何度かあったようです。利家は、秀吉や終盤秀吉亡き後 家康(高嶋政宏)ともどちらが天下を取るかを競った男だったのです。取ろうと思って策を練ったりすれば取れたし、チャンスはあったし決意ひとつだったことも・・・、でもそんな時誰かを救う方を選んだり、もちろん汚い手を使わないし・・・。その時々で、何かしらもっと大切にしなければならないことを優先したのです。
 中心的な人物はもちろん大勢の登場人物にそれぞれ物語があっていろいろキリがないので、ほとんど省略しちゃいますが、とっても印象に残った人物といえば・・・、利家の弟 佐脇良之(竹野内豊)です。ずっと影で生きた男。損な役回りを引き受けてしまった自分の人生を、天命だと思って生ききった男。物語の三分の一ほどのところまで、三方ヶ原で亡くなりましたが、心に浸みる存在でした。

 さてさて、利家の長男 孫四郎→前田利勝→前田利長(山田一樹→小野賢章→郭智博→伊藤英明)ですが、登場シーンが少なくってちょっと残念やわ〜。気を取り直して・・・、青年時代の利勝(郭智博)はいよいよ初陣となって出ていったものの当時流行のバテレン寺に通い戦人になることを悩むという、繊細な人間像が描かれていました。若くて壊れそうな線の細さを感じました。それをふまえて、それを克服して成人になった利勝として24話から伊藤英明の登場でーす!
 早々に、利勝は信長の娘 栄姫と祝言を挙げます。子供のような栄姫と、いかにも若くそして美しい利勝。不吉な感じの空を見て「利勝さま、こわい空でございます。」という栄姫の肩にそっと手を触れ、「うん、案ずるな!さっ・・・」のところ、キューン♪としてしまいました。なんとも初々しい夫婦です。
 秀吉との戦では、利家先陣の一番(先頭)にて直ちに出陣と・・・、利勝はもう戦への迷いが消えた血の気の多い若者です。飛び出していったものの勢い余って(?)行方知れずになって、しばらく経って帰ってきましたが、頭に血が上った感じはこの頃まででしょうか。その後は落ち着いた大人の武将で、後には利家の息子ということで城持ちになっています。でも・・・敵は作らない雰囲気。ラスト近くで「戦が大嫌いな利長」と言われていました。
 戻ります。。。秀吉が一人でやってきて、利家との「友はどちらが上でも下でもなく五分と五分」の話のあと、秀吉の味方になっちゃった。
 柴田勝家の首を他の者に捕らせることはできないと自ら行った利家と共に、殺陣もやってるよ。かっこいい! でもちょっとしか映らないよ、もっと見せて〜。後の末森城の決戦でも、利勝の殺陣は一瞬だったよ。もう〜〜〜。
 冷静に見て、利勝の存在感は薄いかな。利家の律儀さは受け継いでいるけど、歌舞くのは受け継がず、義姉の連れ子 慶次郎(及川光博)に任せたって感じ。九州攻めでは「弱虫の利勝が手柄をたてた」などと言われてた。
 終盤になって、いつの間にか利長に。。。だんだんいい顔になってきました。血の気の多かった若い頃と違って、思慮深い感じ。次の天下人は利家などという噂で、父や前田家に危険が及ぶのを危惧してました。家康とよく似た考えかな? ちょっと性格似てるのか、どうなのかな? 利長は、前田家のため、揉め事を避けようとする考えです。
 伊藤英明は、「国盗物語」の織田信長では戦う男にぴったりだと思わされたけど、ここでは「前田家は天下の騒乱にかかわってはならぬ!」という利長にぴったりと思わせてくれました。
 それから姿は出なくても話題に出たりしてて、秀吉が亡くなりどれだけかたって利家が病の床に就くと、秀頼の子守は利長の役目になったようです。
 それでも、利家に天下を取らせるのが我が人生という家臣たちの気持ちに、利家が「秀吉の遺言を守るために家康を切る」という決断を下すと、自分がそれをすべきだと名乗り出ます。以前の戦でも先頭を名乗り出ていたし、利家の決断には跡取りとして真っ先に忠実に従う姿に、自分がどうこうなろうという野心は感じられないけど、また歌舞くことも全然なく面白味はないけど、律儀な性格は父親譲りなんですね。こう観てみると、(歌舞かないあたり)素の伊藤さんとはずいぶん違う人物のようですが(笑)、ピッタリなように見えてしまうのがすごいな☆
 ところが、利家は家康暗殺を「止めた!」とまたしても天下を取る最後のチャンスも手放してしまった。それは、”安寧な世を築くため”。そして「利長のこと、頼みまする」と言い、徳川と前田家の末永い付き合いのため、まつが人質になり江戸に行くのでした。武門は安寧な暮らしのため! 家のことがいちばん!というのが、利家とまつの生き方なのでした。
 利長は関が原の戦いでよい働きをして、120万石の大名になったらしいです。その後まつより先に亡くなったそうです。前田家の後を継いだのは、まつの子ではない猿千代でした。