修羅雪姫 (2001)


 500年に及ぶ鎖国が今も続く国がある。隣国で近衛兵としてミカドに使えていた建御雷(たけみかづち)家は帝政の崩壊とともに国を追われ、この国で反政府組織の鎮圧組織として雇われるが、今では報酬さえ受け取れば誰をも殺す暗殺集団と化していた。

 伊藤英明は映画の内容を聞いて、アクションができると思ったけど自分の役にはなくてガッカリしたって、どこかで読んだ(聞いた?)ような気がします。確かに!なんか分かる気もする。でもいいんダ。隆(伊藤英明)は反政府組織の一員です。ところが行きがかりで、自分とは敵の存在である建御雷家から逃れてきた雪(釈由美子)を匿うことになります。彼は悲しい過去を背負い、希望を持たせてくれた反政府組織の城所(佐野史郎)を信じてテロを実行しているけど、自分が起こした連邦府議会爆破で一般市民に犠牲者を出したことで、自分のしていることに疑問を感じていくという、この物語のなかでは貴重な人間味のある役柄です。この作品のメインの売りは釈由美子のアクションでしょうが、隆や雪の心情を味わうのもいいものです。
 隆が雪に「・・・おまえ、人を殺しても平気か?何のために殺してんだよ?・・・」と問い、雪は「・・・体が勝手に動く。・・・」と答え、・・・隆が「おまえらは、何の理由もなく人を殺してる。・・・・・、俺には、理由があった。俺の場合は理由があった。殺す理由が。。。あったはずなんだ。。。」と呟くシーンが、一番のお気に入りです。
 「隆はいつも、悲しい顔ばかりしてる。」・・・「悲しいときは悲しむよ、俺は。何時間だって、何日だって、何年だって。」のシーンも好き。
 日本語の会話や看板、でも日本ではない。過去と未来が混在した時代設定。バーチャルな世界でありながら、あくまでも現実っぽさを出そうとしている映像のなかで、隆(伊藤英明)の存在が欠かせません。
 冷徹に人を殺す刺客として育てられた雪は、母への想いを除いては人間らしい感情など持ち合わせていないふうだったのが、隆と接していくうちに感情というものが芽ばえていく。「悲しみと痛みは消せる」と言っていた雪。。。笑顔が見られるようになり、優しく隆の妹の世話もできるようになる。でも、「大切にしたいと想う人なんて誰もいない」と言っていた雪。
 そんな二人のラストは、思いっきり切なかったです。もう城所の言いなりにならない隆。雪に残す言葉。。。人間らしさが芽ばえた雪には、心の底から溢れる悲しみを消すことはできなかった。彼女にとってそれは、幸せなことだったと信じたい。