陰陽師 II (2003)


 「陰陽師」の続編。平安の都では、”天の怪しき兆しがあった”という頃から身分高き者たちが次々鬼に襲われて、体の一部を食われるという恐ろしい出来事が相次いでいた。一方苦しい生活にあえぐ庶民たちは、謎の術師 幻角(中井貴一)という人物を神のように崇め、彼の力に救いを求めていた。

 前作に続いて、安倍晴明(野村萬斎)と源博雅(伊藤英明)二人には、かけがえのない絆が結ばれていて、ますます深まっているのが感じられました。博雅は相変わらずで失敗もするけど、何気に前より芯がしっかりしたような、物言いなんかも大人な感じになったのを ふと感じたりします。

 またまた晴明に悪戯されて博雅のあの驚きようったら、さっそく笑わせてもらいました。
博雅「また鬼が出た。4人目だ。もはや祈祷も何もあてにはできぬ。・・・」
晴明「鬼も世の乱れも人の迷い心があって生まれるもの。」
その例えで「女に恋焦がれる男がいる。・・・男は鬼を出さぬよう笛を吹いて心を静めるのだ。」と博雅の恋心をひやかす晴明と、博雅の反応も最高! 博雅が鬼も恐るる男姫と呼ばれるほどのおてんば姫 日美子(右大臣安麻呂の娘:深田恭子)に惚れてしまったのを、すっかり見抜かれていたのです。
また晴明は、「神もまた人の迷い心から生まれるもの。」と言うのでした。

 ところが天の怪しき兆しがあった日の夜から、日美子が夜中に覚えなく歩いていることで、世の出来事とのつながりを感じて恐ろしいことまで勘ぐってしまう安麻呂が、晴明に助けを求めます。

 琵琶の調べに笛の音が加わって・・・。なんという素敵な出会い。それぞれが何者かなどは関係なく、二人の協演は もの悲しい調べでありながらもとっても美しく、共に奏でる喜びがじわじわ〜っと感じられます。博雅と須佐(市原隼人)は管絃の友となったのです。友を得た喜びが、協演する度に増していくようだったのに。。。

 物語は、大和が出雲を滅ぼした時に強奪したという”アメノムラクモの剣”に 晴明が注目して謎を解いていくのと共に進んでいきます。
 日美子と須佐には同じ痣が腕にあって、それが何を意味するのか。。。二人の生い立ちと悲しい宿命!が解き明かされていきます。
 鬼が正体を現し、晴明が結界に閉じ込めるも、なんともおっちょこちょいな博雅が石を蹴飛ばしてそれを破ってしまうのでした。でも鬼を正気に戻したのは、博雅の笛の音♪ そして晴明を救ったのでした!! 「須佐は喰らうのをためらった。あいつにはまだ人の心があるのだ。晴明、頼む!須佐を人の姿に戻してやってくれ。」

 日美子と須佐の父 幻角は、大和の国を滅ぼして出雲の新しい都を作ろうとしているのでした。そのためには、娘さえも生贄にするというのです。でも日美子はそれを受け入れることで、須佐を救おうと穏やかな世界に呼び寄せようとするのでした。

晴明「アマテラスを甦らせる。天岩戸を開けるのだ。」
博雅「そのようなことをすれば、おまえの命が・・・。清明、俺も行くぞ。」
晴明「いや、お前は来るな。これからは神の領域。・・・お前を死なすわけにはゆかぬのだ。」
博雅「それは俺とて同じこと。お前が命を賭する時に、黙って見ている俺であると思うか。お前が死ぬと言うなら、この博雅も共にいく。あの世であろうと、お前がいるなら恐れはない。行こう、晴明。」
晴明「ああ、行こう。」おぉ〜なんと素晴らしい友情☆
 晴明は、幻角の神をも鬼にせんとする怒りと壮絶な死闘を繰り広げることになるのでした。幻想的な映像に晴明の舞と、博雅の笛の音が重なります。さすが能楽師ですね、野村萬斎の妖艶な舞で幻角との戦いまで美しく描かれているのでした。そしてこのときの博雅は美しくも力強く、魅入ってしまいました。そうなんです いつになく笛の音がとっても力強く、それは須佐の心を揺さぶり、そしてなにより晴明に力を注いでいるように感じました。

 アマテラスが甦り、須佐を呼び寄せます。「愛しき父様、私も須佐も恨んではおりませぬ。あなたは偉大なる、出雲の王。」素晴らしいシーンでした。

 前作と比べ特に終盤は よりいっそう幻想的な映像に包まれて、現実感のない世界に吸い込まれそうな物語になっていました。
 物語を通して、博雅はやっぱり純粋な気持ちのままの人でした。人の心を読めてしまう晴明だから、下心の無い博雅とだったら、気持ちよく酒を飲み交わすことができるのでしょうね〜。微笑ましいラストでした。