LIMIT OF LOVE 海猿 (2006)


 鹿児島沖で座礁、船底から浸水を始めた大型フェリーの乗員乗客救出のため船内で避難誘導中、積載車両の爆発炎上に巻き込まれて、潜水士になって2年目の第十管区機動救難隊員仙崎大輔(伊藤英明)と大輔のバディ吉岡哲也(佐藤隆太)が乗客の海老原真一(吹越満) 売店販売員 本間恵(大塚寧々)と共に船内に取り残される。
 スケールのでかい海難事故の現場に放り込まれた大輔たち。絶体絶命な状況にみまわれながらもわずかな可能性に賭けて脱出を試みるが、やがて外部との通信が途絶え、二次災害の危険も高まり4人を残しての撤収命令が出される。孤立した4人は生還できるのか。そしてついに沈没へのタイムリミットとなる。半端でない迫力満点のシーンが繰り広げられますが、そこに描かれているのは揺るぎない意志と胸の奥に秘めた繊細な感情という、海洋サバイバルアクションとヒューマンドラマが見事に溶け合った作品になっています。
 良かった〜!海猿の精神は裏切られなかった!!というのが、観終わって真っ先に思ったことです。命を救うことを最後まで絶対に諦めない! 愛する人のもとに生きて帰る(還る)! そして信じて待つ勇気!は愛とか信頼とか絆とかに支えられ、それに応える気持ち!がそこにある。 というのが、始めの映画から続いている海猿の世界です。でもときにそれが叶わず、大切な命を失ってきた。その延長線にあるこの映画で描いていたものは、やはり海猿の精神でした。最高の物語でした☆ ありがとーぉ!と叫びたい気分でした。

 映画、TVドラマ、映画と足かけ4年間「海猿」に携わってきた俳優・監督・スタッフの方々の熱い思いをいろんなメディアで目にするこの頃、時には意見を戦わせながらも気持ちはひとつというファミリー的(部活的)集団となって、何もかもがそのレベルを上に上に積み上げてきたというのが、実際映画を観て実感できました。
 ”限界”とか”極限”をこれでもかこれでもかと見せてくれる映像の凄さ。特に水をこんなに使ったセットや仕掛け、そしてなんといってもその中での生身の演技、それを撮ったりサポートするスタッフも水の中で、そして爆発や炎、船の転覆・・・といろんな要素も加わって、そこに音楽、CGほかいろんな効果が加えられていったそうです。また物語的には、今までの出来事を胸に秘めたうえでの人と人のかかわりを繊細に深く描いていて、大輔と環菜、大輔と吉岡とのバディ、大輔や吉岡と要救助者、大輔とドラマでは隊長だった本庁救難部専門官 下川(時任三郎)、大輔と今の隊長北尾(石黒賢)や仲間、他の海猿たち、現場の人間と陸上の人間・・・、それぞれの想いや葛藤を感じては胸が痛み、決断を見届けては感動に包まれます。


 オープニングいきなりの飛行機事故、なんだなんだこれは〜・・・。凄まじい嵐の中の映像観始めたら、体が熱くなってくるのが分かりました。大輔が・・・。あぁ〜要救助者が・・・。
 人を救いたくて潜水士になった大輔が、救えなかった命。。。大輔は自分を責め続けてきたってこと、後になって分かってきました。この事故の伏線があって、この映画はただの海洋パニックムービーにとどまらずヒューマンドラマとしても見応えのあるものに深められたのだと思いました。

 環菜といるときの大輔は、本当に楽しそうにおどけたりしてホテルのロビーでも「チェック・イーン♪」なんて可愛いし、ドラマのラストなんかを思い出しても、ここにきて急に結婚に踏み切れない大輔を見て、いったいどうしてなの!?と不思議で、環菜と一緒になって唖然としたし悲しかった。後から分かってきたのは、それは遠距離で会えないから心が離れたとか、環菜への愛が小さくなったとかではなく、大輔が潜水士としての自分を見つめるが故の葛藤だったのです。こんな自分が、心から大切に想っている環菜をほんとうに守っていけるのか、また結婚して幸せに浸ってしまっていいのか、という気持ちを抱えていたのではないでしょうか。ホテルのロビーで「少し、時間をくれないか。」としか言えず、理由をきちんと説明できない大輔はもどかしく、心の深いところに閉じ込めてしまっている気持ちは環菜に伝わらなくて、彼女は彼女で苦しみます。そんな大輔を伊藤英明は演じすぎないけど後から思えばじわじわ〜っと想いが滲み出ている感じに演じているところが好き♪ ここは公開されてリピート鑑賞する時の重要なポイントだと思っています(笑)
 そのときの環菜の混乱した気持ちはすごく理解できる気がします。でもその後、大輔が船に取り残されてただ待つことしかできないなか、自分が大輔を愛しているって気持ちは間違いないと思えたでしょうし、大輔を選んだときのことを思い出したのだと思います。仕事で精神的にも辛い思いをすることのある大輔への「私が支えになる!」という自分の気持ちを取り戻した環菜が、”生きて帰る約束をしてくれた大輔を、信じて待つ!”ことこそ今の自分がすべきことだと思ったのでしょう。彼女の切なくしかしちょっと強くなった姿と一緒になって、きっと大丈夫だからって自分に言い聞かせながら観ていたような気がします。そして環菜の気持ちは下川にも伝わったし、彼女の存在は下川自身の彼らを生きて還すことを絶望的な状況になっても諦めない気持ちをいっそう強くさせたと思えるのです。

 この映画が”愛”をテーマにしているらしいと知って、正直少しの抵抗感を抱いていました。だってUKIUKIは、命をあずけ合う男どうしの絆とか命の重みとかを描いていくなかで、大輔が潜水士として成長する姿に心惹かれてきましたもの。もちろんそこには環菜の存在があって、大輔にとって大切な人になってきたのは全然嫌じゃないし、素敵だな〜って思うし、二人が幸せになればいいな〜って思っています。でも、ラブ・ストーリーが中心なんて・・・と思ったのです。
 でもこの作品は、UKIUKIの望んでいた”海猿の世界”を描ききってくれました!!しかも、ラブ・ストーリーです。ほんとうに嬉しくてたまりません。
 大輔は、吉岡と一緒に2人の要救助者を抱えながら、どんなに困難が続いて体力的にも精神的にも限界に近い状況になっても、ほんのわずかな可能性に賭けて脱出ルートを探り続けます。撤収命令が出たことを知って、一人で脱出ルートを見つけに出て呼吸も苦しくなって水に浸かりながら倒れこんでしまうところは、大輔が一番弱気になった時だと思うのですが、このときの大輔がお気に入りなんです♪ そんな完璧でない姿を見せてくれるところがUKIUKIは好きなんです。それから環菜のことを想い”生きて帰らなければ!”と気を取り直して、北尾隊長が残してくれたボンベを見つけ、下川専門官の言葉を思い出して、前向きな強い気持ちの大輔になっていきました☆ ところが身動きの取れなくなったバディの吉岡を残していくという辛い決断をすることになって、でも見捨てたのではなく助けるためにだから、自信を持って吉岡に「信じて待て!」と言える自分、みんなの命を救うこと全員で生きて帰ることを最後まで諦めない自分を確信したから、はじめて環菜との愛を進めていく自信ができて、あの状況の中あんなに素敵なプロポーズができたのだと思うのです。環菜を愛する気持ちはずっと変わらず、大輔も言ったように結婚に踏み切れなかったのは”自分の問題”だったのですから。。。潜水士としての葛藤を抱えていた大輔が、精神的に逞しくなっていく姿が見どころな物語でした。
 しかし、観ていて堪らなく切なくて涙が溢れてくるのは、客観的にみたら助かる可能性は少ない状況なのに、大輔は吉岡に「・・・待ってろ。必ず助けに来てやる!」「・・・信じろ。俺はおまえのバディだ!」と言うし、環菜には「・・・もうすぐ帰るからさ。そしたら結婚式挙げよう。・・・」とプロポーズしているからなんです。でも大輔には、泣くのをこらえたり言葉をふり絞るようにというような悲痛さが表れていないというのが凄いんです。感情を高ぶらせることなく、あんなに落ち着いて吉岡に声をかけ、あんなに穏やかに環菜に話しかけてプロポーズをする大輔が、たまらなく良かったです。電話を切った後の潤んだ目元、・・・客観的な状況は分かっていると思います。でも自分が死んで彼らのもとに戻れなかったら・・・ということを考えるのではなく、この状況では前に進むしかない!という強い意志を固めています。しかも大輔は一貫して、そして極限の状況と体力の限界を迎えても”誰も見捨てない”で「全員を助けます!全員で生きて帰るんです!!」と みんなで一緒に生きて帰ることを諦めないのでした。そしてその姿に説得力を持たせてくれたのが、大輔の”ながれ時代”(ドラマ)よりいっそう逞しくなった肉体です。海老原を背負いハシゴをよじ登るシーン、さらに水に押し流されてきた恵を離さず降りかかる水圧に耐えようとする腕に感動です☆
 それでもとうとう4人を閉じ込めたまま、船は海にのみ込まれていくのでした。。。

 ところで”ながれ時代”から時間を経て、大輔と吉岡がバディとして時には暗黙の了解という雰囲気で分かり合える関係が築けているようです。大輔も吉岡も、要救助者に対する態度や口調などから、あれからだいぶ経験を積んできたのだろうと間接的に分かります。池澤にはあったけど大輔には身についてなかったあの雰囲気、言っていいこと悪いこととか言い方かな、要救助者に対してどんなふうに言えば安心させられるか勇気を出させられるか信頼してついてくるか、要救助者を誘導する術が身についている姿に、彼らの成長を感じました。なんかとってもいい感じで、頼りになる感じが嬉しかったです♪ そのなかで恵や海老原にさり気なく向ける大輔の笑顔が良かったです。状況ではありえないんだけど、意識してるんだけどわざとらしくなくて自然な感じに出てくる笑顔に優しさがあって頼もしかったです♪
 そんな大輔も飛行機事故を引きずって迷いがあるし、撤収命令が出て取り残されたことを知ったときには身も心もクタクタで一瞬だけど挫けそうになったようにも見えたし、吉岡だって冷静に判断して自分を置いて行くように言いながらもほんとうはすごく怖くてビビッてるんだけど、お互いにそんな自分の弱い部分を支えてくれるバディの存在、絶対助けに戻るぞ! 戻って来てくれる!と自信をもって信じられる関係っていうのが最高です。

 撤収命令ですが、救助活動中の隊員にケガ人が出てきて、大きな二次災害も予想されこれ以上犠牲者は出せないという判断は客観的にはたぶん正しく、大輔らを知らない者だけでなくよく知る者も従わざるを得ないけど、どちらの海猿たちにとっても気持ちは正反対。仲間や要救助者を残して船を離れなければならない海猿たちの苦悩にも、心が痛みます。
 下川専門官の「一緒に空を見よう!」もグッときましたが、北尾隊長がボンベとライトを残してくるのも「諦めるな!上がって来い!」というメッセージが感じられて胸を打ちました。その気持ちは大輔に伝わったと思うし、実際あれで1人の命が救われたのではなく4人の命を救ったのだと思えるのです。あのエアがなかったら、大輔は、要救助者2人の命を預かってるというものの・・・バディを残していけたのでしょうか。。。UKIUKIには答えが出ません。
 そして4人が生きてさえいれば、沈没してしまったことで救助ができるようになった。彼らの決断が遅かったのではなく、今まで観てきた者にはわかる理屈ですよね!? 本庁(?)が絶望視するなか、現場にいる海猿の誰もが、下川が、彼ら4人の命を諦めていなかった。そして諦めかけていたみんなの気持ちに広がっていくのが良かったです。4人の救助に向かう海猿たち。ひとつの映像の中に納まっている海上の船舶・ヘリ・ボートや、沈没船をめざして泳ぐ潜水士たちって、ハンパじゃない数だし、その迫力とスピード感のある映像から海猿たちの熱い思いが感じられます。
 また、沈没してしまって極限も越えるような絶望の底に沈み込んでもなお、安全を確保して救助を信じて待とうと判断した大輔。とことん闘った大輔が、さらに仲間を信じてじっと待つ勇気と、それに応える仲間。あの大輔の背中でもう涙ボロボロ。大輔一人だけがヒーローになる物語でないところがいいんです。これこそ、海猿の世界です。そして残してきた仲間もけっして見捨てない。もう体力が限界ギリギリでも自分を信じて待っている吉岡の所に戻ろうとするところから感動の嵐でした☆ 吉岡の所に戻って二人が手を握り締め見つめ合うシーンが最高に感動でした☆ 大輔と吉岡のあの表情は、忘れられません。大輔の目はいつも潤んでいるようで素敵なんだけど、あの時はじめて涙が零れるのを見たような気がします☆

 そうそう、要救助者のことをあまり書かなかったけど、強がってる海老原が精神的に弱くて、妊娠5ヶ月で弱々しい恵がユーモアもあってわりとしっかりしているのがおもしろかったです。UKIUKIは大塚寧々はYASHAの母さん役しか知らないので、彼女がここでお笑い担当キャラとは・・・意外でしたね。二人が特に海老原が、嫌々大輔や吉岡と行動するうちに信頼感を持つようになってしだいにそれが強くなっていくのも嬉しかったです。だから二人も最後には、大輔と共にしっかりした気持ちで一緒に生きて帰ろうとし、最後は救助を信じて待つことができたのだと思います。

 信じて待ってて良かったね〜、環菜。彼女もこれから大輔と共に人生を歩んでいく自分に、自信ができたと思います。大輔と再会した環菜ったら、”チェックイン♪”って・・・可愛いね〜♪

 っで、あぁ〜大輔 素敵過ぎ♪ 環菜が羨ましい〜〜〜(笑)と思ったのですが、・・・そのあといろんなシーン思い出したりComent書いたりしながらなんとな〜く考えてて、とにかくやっぱり大輔がものすご〜くカッコ良かった♪と思うのですが、UKIUKIは大輔に環菜のように愛されたいのか、恵のように救われたいのか、なんかそれ以上に吉岡のようにバディになりたい!ってすごく思います。あの関係に、憧れちゃいます☆


 以上、試写会で鑑賞後の感動と興奮を忘れないうちにと書いた例によってまとまらないComentですが(2006.4.23)、その後『プロジェクト 海猿』を読んで一部追記(2006.4.28)しました。また劇場公開されてリピート鑑賞したら、試写会後に書いたComentはちょっと違ったふうに書いた方がよかったかなと思い当たるところもあって、少しだけ書き直しと追記をしました。

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