KISS ME (1996)


 かつては”伝説の殺し屋”と呼ばれた男(藤竜也)が、最後の仕事で組織を裏切って追われる身となります。それというのも、男は偶然居合わせてプールに突き飛ばされた響子(山口香緒里)に手を差しのべた、その一瞬に彼女に心惹かれてしまったのでしょうか。それとも何の落度も無い女も殺すほどの、殺し屋の気力が失せたのでしょうか。。。
 組織の裏切り会計係から取り返すべき鍵が響子のバッグに忍び込まされたことを突き止め、相棒を連れて取り戻しに行きますが、相棒が彼女の恋人 裕司(阿部純大)を殺して響子も始末しようとすると、男はなんと相棒を撃って彼女を連れて逃げるのでした。
 殺し屋としての人生を最後の最後に狂わせて、女を逃がすことを選んだ男だけど、男が立ち寄る先々にまで組織の手は回ってくるし、体力的にも衰弱して厳しい状況になっていきます。最初は恐怖で連れ去られた響子だけど、やがて男を信じる気持ちが芽生えてきたようで、それでもいちどは逃げ出してみたものの結局彼の元に戻ってしまいます。そんな二人の逃避行はやがて、一途で苦しく出口など見えない刹那的なラブストーリとなっていきました。

 この作品、もうなんか雰囲気で観る映画だって思いました。UKIUKIとしては、伊藤英明の阿部純大時代 映画初出演作ということで観たかったわけですが、始まってすぐに殺されちゃう役ということで、それなら藤竜也の渋さも見どころに楽しもうと思っていました。藤竜也は伝説の殺し屋の成れの果て感が漂って見苦しいボロボロの姿になっていくんだけど、響子への気持ちだけは純粋でした。人は人生の最後に何を懸けるのか! ある殺し屋の場合・・・という、この作品の世界を一人で作っている感じでした。
 でも、正直言って響子には共感できないっていうか、上辺の言動だけを観ている感じで、裕司にも男にも心からの想いを感じさせてくれませんでした。

 ところで、阿部純大の出てるシーンは思ってたよりは長い時間で嬉しかったです。裕司と響子の気持ちは本気だったのか遊びだったのか、一緒に暮らそうとしてたのは確かで、結婚する?と問いかけてはお互いうやむやな感じなのは、若い二人の恋愛の過程として熟成していないってだけで、お互い好意は持っていると思いました。
 裕司の人物設定がわかんないけど社会人なのかな、それにしては幼い感じ、笑顔がカワイイしね♪ あんなふうに甘えた感じで響子に接しているの、男の人によってはキモチワルイ感じになるかもってところ、嫌な感じではなかったよ〜♪ 突然やって来た男らに銃を向けられ怯える様子は、ちょっといかにもって感じだったけど、全体的にいかにもって雰囲気漂う(演出の)映画だったような気もします。
 響子の裕司への気持ちがいまひとつはっきりしない感じではあったけど、男に連れ去られた時点では、男への感情は恐怖だけだったと思うんです。だから抵抗できなかったのはわかるけど、助けを求めようともせず、何より殺された恋人のことをひと言も口にしないのは、裕司の死への悲しみをかけらも見せないのは、あまりにも不自然だと思いました。殺された裕司が不憫やわ〜!
 そしてそんな響子は恐怖に震える姿も表面的なものに見えてしまって、その後の男への感情の動きも見た目だけって感じで、響子の内面を心で感じることができなくて残念でした。