カムイ外伝 (2009)


カムイ (松山ケンイチ)
スガル(お鹿) (小雪)
不動 (伊藤英明)
水谷軍兵衛 (佐藤浩市)
半兵衛 (小林薫)
サヤカ (大後寿々花)
大頭 (イーキン・チェン)
吉人 (金井勇太)
ミクモ (芦名星)
アユ (土屋アンナ)


◆2回目観たら・・・

 UKIUKIとしては、前よりいっそう不動は悪〜く見えたし、カムイの無機質感は少し和らいで、よかった〜って思いました。

 カムイは前より、半兵衛やスガルやサヤカの思いは心に届いていると思えました。それで少しずつ心がほぐれていっても、サヤカへの想いも芽生えてはいても、だからといって やはり心が夢や希望にどんどん流されていくことはなかったのだと思います。そういう心の孤独を保つことで、忍びの血が生き続けて、生きるために人を殺したり 地獄を見てもめげずに生き抜く旅が続けられたりできるのだと思いました。
 スガルの印象が少し変わりました。スガルには時として 忍びの血が流れていると感じましたが、でも お鹿として生きている彼女はもう孤独ではなく、忍びの血が薄くなっているんや〜とも思いました。カムイをひと思いに殺せず急所を外したし、自分はこの島で生きて死んでいくしかないという思いにもなった。カムイの見果てぬ夢を、彼女は叶えているようだったのに・・・。

 終盤カムイに正体を明かした後の不動が、前よりもっとワル〜★に見えて、ゾクゾク〜!! 前はどんな最期だろう?っていうのを気にしつつだったけど、今度はどっぷり観てたからかな〜。獲物を見るように瞳がギラッ★ 表情からして嫌みがあって、挙句の果てにイヤらしい悪態をつく。そんな不動の悪役ぶりにすっかり嵌っている伊藤さんが凄い!! それでも不動は 信じた”正義”を貫いて死んでいったんだと思いました。チラッと映った死顔が、なんていうか素敵だな〜♪ 迷いがなかった!!って気がするんです。
 伊藤さんは 演じる役ごとに 別人に見えて、それぞれに違う人生を生きて 楽しませてくださる俳優さんですが、不動はこれまた今までとは異質な人物だったと思います。よく言われている ”新境地”を 確かに切り開いたんだとつくづく思いました。最後の悪役ぶりだけでなく、不動という人物全体の人物像が すごく見応えありました!! 『善悪で割り切れない人物』・・・本当に その通りでした。(Comment 2009.9.30)


◆初めて観たときの感想です↓↓

 物語的にその時代(17世紀)その社会で身分階級による差別 或いは掟といったものに囚われて生きる者たちの苦しみや悲しみが解消されたわけではないし、人がいっぱい死んで 惨かったり切なかったりもするのに、こう言ってはなんですけど UKIUKIとしてはなんていうか・・後味がいい作品でした。

 物語を終えて、カムイの何が変わったのか。ほんのひと時 心を許しかけた人々のあたたかさも 彼らの命も、信じかけたのかな〜(どうかな〜?)って不動に裏切られて その全てを失った。何も変わっていない。悲しい記憶が増えただけ。仕方なく人を大勢殺した。幼なじみも殺した。そして初めて自ら人を憎んで殺した。また孤独。これからも追われる。でも「俺は生きたい!」と、生き抜く旅を続ける。。。
 そういう物語だと思いました。なんていうか、後に残る救いといえば そういうカムイの意志だけのような物語だと思いました。
 そうそう、カムイは想像していたよりずっと精神的に強いと思いながら観ていました。悲壮感のようなものは、あまり感じませんでした。また、もう少し心揺れる心情描写があるのかな〜と思っていたのですが、例えば逃げて逃げて逃げているときも 人を何人も殺しても 半兵衛の哀願にも そして村での平穏な暮らしに身を置いてみて・・・とかですけど、何事もないかのように 心乱されているふうでもなく見えました。UKIUKIにはそう見えて意外だったんですけど、脚本・演出・演技的にそういう描かれ方をしたのでしょうか? UKIUKIの感受性が乏しかったのでしょうか? また観たら違うのかな〜。っで そう描かれていたのなら、カムイはそういうことに心揺れる心境になることと、とっくに決別し また諦めきって 開き直っている感すらあるように思いました。でもそれがカムイなんだ! 彼の辿ってきた人生が彼をそうさせた!ってことでしょうか。それでもサヤカや子たちとは和やかな時を過ごすようにもなって・・・。

 今 制度としての身分階級はなくなっても、いろんな差別や格差による辛さに苦しんでいる人もいることを思えば、この物語で後味がいいなんて言ってしまうのってどうなの!って気もしますが、UKIUKIとしては その時代、今と違ってそういう不条理なことがどうにもならないこと、あたりまえのこと、もっと言えば正義であるような捉え方さえさせられていたという前提で観てたな〜と思います。

 っで、何を観たのか・・・登場人物それぞれの 生き様を観ました!! そして その要素のひとつが ”アクション”でした。そういうエンターテイメントだと思いました。
 正直言ってカムイはなんていうか無機質な印象でしたが、周りの人物には切なさを感じたりして それぞれ人間味のあるドラマ(生き様)を観たという印象です。半兵衛は、お鹿が抜け忍だと知っていて妻にし、妻も子も命を賭けて守りたいのに、なんで殿様の馬を殺すかな〜と思ってしまうけど、まぁだから物語が展開するんだけど、彼には 漁師の血が流れていたってことでしょう。スガル(お鹿)はかつて忍びを抜けた実の父を斬って殺したけど、やがて自分も抜けて半兵衛の妻として子たちの母として追忍に怯えながら生きていて、そんな彼女にはやはり忍びの血が流れています。彼女が最期に 夫や子たちを「守れなかった」と言ったときは 泣けました。ほんのちょっとしか出てこなかったけど ミクモも、幼い頃同じ思いを共有した者どうしなのに、切なかったです。かつてのカムイもスガルも あんなふうだったのかな。抜ける者と抜けない者の違いはなんだろう。カムイの〈 飯綱落とし 〉にかかって死を悟った瞬間の潔さが強烈です。大頭については、まだなお謎めいたところがあるな〜という印象でしたけど。そして 他は省略ですけど、UKIUKIの照準は不動なわけで、不動の生き様が見事に描ききってあって大満足!! 後味がよかったのです。

 不動の存在感は凄かったです。ギラギラ光る眼差しの強さに ドッキドキ〜☆ 重みのあるお声が、体の芯に響いてきます。貫禄ありまくり〜☆ それでいて大らかで、人の心を掴んでいきます。UKIUKIも乙女・・いえオンナ心をギュ〜ッと掴まれてしまいました♪ 男気溢れる豪快さというか人としてデカイ存在感に圧倒されっぱなしです!!
 渡衆の頭としては、鮫狩りで見せる長刀使いの技が 神業的に見事で芸術的なカッコ良さです。統率力に長けているようで、威張り散らしたりはしてないふうでも、仲間の信頼を得て尊敬されています。
 また奇ヶ島の人たちとのかかわりでも、貫禄を見せつけながら 自然と頼りにされ時に親しみさえ感じさせていく。


 ところが不動って・・・その全てが偽りの姿だったのでしょうか。
 いえ、少なくとも ”やまもも”になってた不動は心から子たちを可愛いって思っていた。そう演じたと伊藤さんがインタビューで話してみえましたし、監督さんもそれでOKだったのでしょうから、そういうことです。ツグミ役の子役ちゃんがブログに 「いとうさん(やまもも)・・・」って書いてあったの何?と思っていたら、これだったのね〜って楽しいシーンでした。おどけた不動の本物の笑顔が とってもいいの〜♪
 それで他のシーン観ててもね、本物の不動が存在してるって思えるんです。でも時に・・自分も抜け忍だから力を合わせてとか、カムイの身を心配するサヤカに自分が一緒だから大丈夫だとかね・・嘘もついているし、不動は自分の正体を隠して密かな策略を企てていたんですよね。
 それって、UKIUKIは不動の表と裏って気がしないんですよ。彼のシーンのどこを切り取っても、不動という人物そのものなんだと思いました。渡衆の仲間や島民たちの心を掴んで、人と心を通わせている不動が、正体を隠すための偽りの姿ばかりではないというのは、普通だったら辻褄が合わないことのようだけど、そういう不動の人物像を成立させたのは、伊藤さん持ち前の魅力♪と 俳優伊藤英明の確かな演技力☆です。
 そして、そういう仲間や人との関係をものの見事に惜しげもなく捨てる不動★ 仲間や島民たちの皆殺し(毒殺)とは、それだけでも惨い殺戮だけど、心通わせた相手に 可愛いと思った子たちにまで あんな残忍なことするなんて、あれは残忍非道極悪人の仕業です。それなのに、なんであんなに魅力的☆なんでしょう・・ ゾクゾクしちゃいます♪ っで思ったんです。UKIUKIなんかの物差しだと あんなことするのは極悪人だけど、なんかね〜あれは不動の物差しだと”悪”ではないんだって気がします。不動の物差しだと、あれは掟破りの抜け忍と 抜け忍を匿った者たちに対する”正義”で、不動としては、その時が来たから 自分の使命を全うしたのにすぎないのだと思いました。不動にとって ”忍びの掟は正義”で、それが不動のコアな部分に揺るぎないものとしてある。でもそれだけではない懐の大きな男なんだと思いますし、それが彼の人としての魅力ですけど、優先されるべきは その”正義”、だから そのための武器にもなっているところが恐ろしい。 標的はカムイだけで周りを巻き込んだのではなく、渡衆らも抜け忍だし、スガルも抜け忍、カムイやスガルを匿って安住の地を与える島も 忍びにとっては当然標的です。不動は忍びの世界で生まれて育ったんじゃないかって、三つ子の魂を植えつけられたうえに 技を磨き、またいろんな能力に長けていたのであの不動になったのかな〜などと ふと想像しました。不動の辿ってきた人生を、不動と大頭のかかわりなどを絡めて、作品として観たいものです。

 ところで、UKIUKIは原作を知らないのですが、不動の最期だけは英友さんに紹介していただいてチラッと読んでました。また先日何気にチャンネルを次々送っていて契約してない有料チャンネルでアニメが映ったときに(日に1〜2分だけは映りますよね)、「殺してくれぇ」の声が・・・これって!と映像が消えるまで見入ってしまいました。不動の最期だったと思います。「軍兵衛にしたように鮫に喰われて苦しんで死ね」のようなことカムイに言われて、両腕を切断された不動が海面を引き回されていました。映画は違っていましたね。原作やアニメでは、そこに至るまでどんなふうに不動が描かれていたのでしょう。海のシーンにすると、撮影や制作費の負担が大きくなりそうって気もしますが、海か陸かという違いではなくて、不動の描かれ方が違うと思いました。
 映画では あの壮絶な最期も、小賢しい悪人の成れの果てという哀れな不動ではなかったですね。いえね、UKIUKIは何気に カッコ悪くて哀れ極まりない不動を伊藤さんがどう演じるのか?!俳優さんとしてそんな不動を演じるのも悪くないかも〜と思っていたので、「殺してくれぇ」が出てこなくて 一瞬肩透かし感が・・あれっ?と思いました。でも次の瞬間、瞬く間に不動に魅入っていました。「殺してくれぇ」と叫びまくって苦しみから逃れようとするのではなく、カムイに『・・・(淡々と人を殺して生きているってことでしょうか・・お前も俺と)同じ血だ!』って言ってのけたのが見事っていうか、忍びの世界を生きる信念を通したというか、不動の”生きざま”を裏切らない彼の最期で、ブレない描き方が凄くよかったです!!

 さて、アクション抜きにしてこの映画は語れないはず。
 なんといっても最後の カムイと不動の死闘は凄かった!! なんていうか 気迫が充満している感で、結果は分かっているのにドキドキして観ていました。正直UKIUKIの目は不動に釘付けで、とことんカッコイイ〜☆ 二人が刀を合わせたとき、不動がグッ☆と押す あそこが好き!! ずぅ〜っと観ていたいって思いましたが、不動に〈 変移抜刀霞斬り 〉を崩されたカムイの あれが〈 十文字霞くずし 〉(?) とうとう技がキマッて、不動は のた打ち回る姿まで見応えありまくり!! アクション的にも 不動らしい最期で よかった!!と思いました。

 改めて、そこに至るまでの アクションについて。カムイは、演出も演技もほとんどのエネルギーがアクションに投入されてたようですし、スガルも話題になっていましたし、さて・・・彼らも追忍たちも、実写ではあるけど、どこかアニメ的な動きが・・忍者的な動きともいえるかな、とっても楽しめました。監督さんはリアルさを追求したそうですけど、リアルっていうのはどうかなぁ。ワイヤーやVFXを使ってる〜というのが はっきり分かるリアルさはありますけど。UKIUKIはアクションに こだわりがあるわけではないので、この作品の場合、迫力はまぁ不動に任せたと思って、少しぎこちなくても気にせず、忍びっぽいところに注目して観てました。
 そうだカムイの場合、UKIUKIは心情的な部分をあんまり感じられなかったことを書きましたけど、アクションを通して、ただひたすらに「生きたい!」カムイを描いていたのかな。


 以上、初めて観て感じたまま、あやふやな記憶のまま書きました。島や技の名前など覚えてなかったけど、映画館で買ったパンフを参考にしました。何度か観たら、もっといろんなことが観得てくるかもですけど・・・。(Comment 2009.9.26)


VFX : Visual Special Effect、もしくはVideo Special Effectのことであり、主にコンピューターグラフィックスの技術を使用したSFX(Special Effect=特殊効果)を指す。