ぼくの魔法使い <TV> (2003)


 大手広告代理店エリート社員の町田道男”みったん”(伊藤英明)は、愛する妻 留美子”るみたん”(篠原涼子)と離れ離れにはなれないと単身赴任を拒否して退職、自宅に近いという利点だけの広吉代理店(便利屋)にしかたなく再就職します。一方、留美子は田町式記憶塾の塾長田町浩二(古田新太)に自転車で激突して以来、何かを思い出そうとすると田町に変身し、すごい記憶力を発揮します。
 妻の変身という怪現象と便利屋に舞い込む様々な依頼やトラブルに巻き込まれる道男を中心に、個性豊かなキャラクター揃いで繰り広げられるとにかく明るいし可笑しいしヘンテコな物語。全く受け入れられそうにない設定のドラマ・・・のはずなのに、なんだなんだこの面白さ、楽しーーーぃ。テンポが良くってそれはもうバカバカしいほどのノリなんだけど、それだけじゃないって1話目から確信しました。

 これは冷静に考えて宮藤官九郎の脚本が凄いんだと思いました。素人が考えてもコメディーは難しいと思うし、ラブコメなんて生易しいものではないほどの超ラブラブコメディー、おまけに変身モノなんてリスクがデカ過ぎだと思うんですけど・・・。冒険的で画期的な物語でありながら、いろんな要素が綿密にバランスをとって練り込められているというか、そこに描かれているのは身近な日常と重ねられる感情なんですもの、違和感なく共感してしまうという魔法にかかってしまいました。そしてその登場人物たちに命を吹き込んだ俳優さんたちの個性とそのコラボレーションが最高でした。

 伊藤英明の第一印象は、他の役とのギャップがハンパじゃないし、表情豊かだー!ってことでしたが、観ていくうちにそれは他のと全然違ってるというよりは、彼のすごーくデカいフトコロの中からここではユーモアのセンスを最高に発揮しているんだな〜と思いました。それは、可笑しいだけじゃないバランスのとれたユーモアで、あれだけハジけたことをしていても滑稽なだけって雰囲気にならなかったのが良かったです。
 ”みったん”と”るみたん”のラブラブ夫婦が、不思議と嫌味を感じさせないのがいいですね〜。正直な感情をストレートに出し切る彼らがなんとも微笑ましくて、応援したくなっちゃう。”みったん”の おもいっきりの笑顔や「幸せだ〜〜〜♪」って叫ぶのが大好きです。
 あんなにベタベタイチャイチャなバカップルぶりでも、なぜかカラッとした感じなのは、道男がめちゃくちゃカワイイ笑顔とデレ〜っとした姿だけでなく、マジメなカッコ良さやあったか〜い心をいっぱい見せてくれるから、それは二人の間だけでなく周りの人たちに対しても・・・、そのメリハリがものすごーくいいからだと思います。
 もちろん周りのキャラクターもすごくいいのですが、伊藤英明と篠原涼子のキャスティングなくして、彼らの演技なくして、この最高にノリのいい可笑しさオンパレードな展開の中にジーンとしたりホロッとくるようなちゃーんと心に響く感動を届けてくれる雰囲気は生まれなかったと思います。

 ということで、一話ごとに愉快な展開の中にもピリッと引き締まったところを見せてくれる”みったん”なのですが、特に印象に残ったのは6話目かな。造り酒屋の一人息子で一人前になるまでは・・・と彼女(それがきっかけでひどい酒乱になった道男の依頼人)の前から黙って姿を消しそのうち迎えにいくつもりだったという男に対しての言葉。「ふざけんなよ。仕事と彼女、どっちが大事なんだよ。すいません、出すぎたこと言って。でもねぇ、あんた何も分かってないよ。一人前じゃなくても、彼女を愛することはできるでしょ。僕はねぇ、妻との生活を第一に考えてるし、妻と一緒に二人三脚で成長したいと思ってますよ。あんたも彼女が好きなら、カッコつけてる場合じゃないでしょ。結婚ていうのは、一人でするもんじゃないんですよ。」 っで、そこにいるのが田町に変身した”るみたん”ていうのが辛いんですけど。。。
 だいたい留美子が田町に変身した姿なんてはっきり言ってキモチ悪いし、中身(心)は”るみたん”なのに体は田町を相手にして、はじめは道男も驚きと戸惑いで愛する気持ちが不安になったりするあたり同情してしまいます。そしてやがて姿にとらわれずに愛していることを確信していって胸がキュンとしたりするのですが、ラスト近くになってあの田町姿”るみたん”相手のシリアスシーンで見せる伊藤英明のマジ演技が凄い! バカップル夫婦の成長というか絆の深さに感動です。
 あと自分の変身体験を自分なりに解決しようとする留美子と彼女を大切に想う道男の心が離れそうになる危機にも陥りますが、魔法が解決してくれました。このお話の”魔法”って、”心の中の本当の気持ち”ってことなんだと思いました。留美子が“ミニみったん”を宿したことを心から喜ぶ”みったん”も大好き。ところが危ない出産になって、母を選ぶか赤ちゃんを選ぶかと迫られ苦しむ”みったん”も大好き。また社長の失踪で失業した道男が、結局胸張って便利屋を一生の仕事にしたい!と決心し、留美子も理解してくれる展開も良かったです。

 もうとにかく観ているだけで幸せな気分になってしまう最高にあったかい作品でした。実は外向きにはなんとなく真面目そうに振舞いつつ、家ではちょっとバカップルなUKIUKIたちなんですけど(笑)、もっともっとあったかくなろう自分たちも周りにも・・・♪って”みったん”と”るみたん”に憧れちゃいました。これって勘違い?!(爆)