愛をください <TV> (2000)


 遠野季理香(菅野美穂)は3年前、自殺しようとしたのを長沢基次郎(江口洋介)という男性に止められ、それ以来彼の提案で文通を続けてきた。けっしてお互いを訪ねあわない、絶対に恋の対象にしない、本当のことを書く、という約束で・・・。保育士になって3ヵ月の彼女は、親に捨てられて高校まで過ごした養護施設では園長の虐待が日常化していたそんな心の傷をずっと引きずっているけど、苦しい心の内や日々の出来事を正直に書いて、それを受け止めて励ましたり叱ったりしてくれる基次郎からの手紙に支えられて生きている。彼女は夜の街角で、基次郎にもらった詩に曲をつけて歌うことで心を癒そうとしているけど、ある日 ストリートミュージシャン月密中也(伊藤英明)と場所取りでもめたのをきっかけに出会い、言葉を交わすようになる。

 前半、季理香の”幸福な人や家や社会や世界を、壊してやりたい”などと湧き上がってくる復讐心はイヤな感じでした。憎むのは親と養護施設の園長だけでいいやん!って。確かに園の保育士や保護者の中にも彼女の生い立ちを理由に攻撃してくる人物もいるけど、対処の仕方はそれなりにあるはず。だから世の中の幸せな人を見ると腹が立って復讐の中に幸福を見つけようとしたり、他人の幸福にしがみついてしまい、幸せそうな家庭の男それも園児の父親と不倫をして、自己を傷つけるだけでなく相手の家庭を潰してやるみたいな行動は理解に苦しみます。愛情を追い求める季理香ですが、そんなことしていても彼女の望む”本当の幸せ、普通の幸せ”には出会えないよ。人を全く信じなくなっている季理香は、基次郎だけにすがって生きています。彼女の心の真ん中には基次郎がいて、彼は心からの言葉を送ってきてくれているわけですが、なんとも完璧な言葉でキレイ過ぎるような気がするのはUKIUKIの心が素直じゃないのかな。自分を見捨てて幸せな家庭を築いている父親との再会や、またある時 基次郎の手紙に嘘があること知ったことで、もう悪い方にばかり落ち込んでいく季理香が、なんとか基次郎を探し出すと意外な真実が待ち受けていました。
 もう早いうちから、もっと近くの人に気づいてよ! 本当のことを言える友達、ちゃんと聞いてくれる友達がいるじゃない! 季理香に寄り添って本当の愛を注いでくれようとする人が隣にいるじゃない!と思いながら観続けました。中也は自分が季理香に恋をしてしまったことに気づくのですが、その前だって後だって悲しいほどイイヤツだわ♪ 季理香に心からの気持ちでいろいろ意見を言っては支えてくれようとしているし、正直な自分の気持ちもちゃんと言ってます。
 ただその言葉もちょっと整いすぎている感じがしてしまうのですが、これは脚本的に几帳面というか、養護施設仲間のタミオとリサの”社会への復讐”から後半の展開へと、登場人物それぞれがみんな良い人になって落ち着いていくのも出来過ぎな感じでしたがまあいいです。
 ずっとプロを目指してる中也が、CDデビューを果たす季理香への羨望や嫉妬の気持ちに揺れる心を何度となく正直に話す姿が爽やかだし、それでも彼女を励まそうとする気持ちは変わらないところが素敵です。本気で季理香のことを心配する中也の気持ちがなかなか季理香に伝わらず・・・、でも彼が自分自身の人生を一歩前に進めたときに、季理香も本当の幸せがどこにあるか気づいたのでした。

 あの人もこの人もヒドイなズルイなって人たちばかりなのに結局ドロドロの展開になりきらずにキレイに収まっていく物語でした。その中で音楽プロデューサー柿崎(筧利夫)が意外(?)にも良心的な熱意のある人で良かったです。
 でもでも何と言っても月密中也は初めから終わりまで本当にいい人で出来過ぎなほどの人物だと思いますが、本当は中也自身も27歳になって自分の人生への迷いや焦りを感じているのがシクシクと感じられるのが伊藤英明らしいです♪ そんな思いと季理香への想いを胸に、ふと漏らす言葉が心に響く生きた言葉になって伝わってきてジーンとさせられる、そんなところも伊藤英明らしくて素敵でした♪ それにしても、役柄にぴったり合った歌唱力・・・、あまり上手だと何故彼がスカウトされないのかと不満を持って観てしまうし、まっ 分かりやすく十分下手なんだけど あれよりもっと下手でも不自然。UKIUKIはあの歌も絶妙な演技だったとみたゾ☆