252〜生存者あり〜 episode.ZERO <TV> (2009)


 映画「252」の2年前という設定で、特救隊(レスキュー隊)の技術研修に挑む若き消防士の第3小隊《早川勇作(市原隼人),西村純(阿部力),水城マナ(上原多香子),榊圭吾(福井博章),木村光太郎(蕨野友也)》に焦点を当てて、彼らの成長を描いています。

 episode.ZERO OAのリアルタイムで初めて観たときは、時々TVの前を離れたりして落ち着いて観てなかったのもあって、レスキュー研修生とりわけ早川勇作の気持ちの熱さや彼らの摩擦が目だって、またハイパーレスキュー隊副隊長の篠原祐司(伊藤英明)はやたらカッコイイな〜って印象でした。まぁ描こうとしているのは、レスキュー隊員としてのプロの”魂”だと思って、研修生たちの気持ちがひとつになっていくのを観ていきつつ 彼らの中にレスキューの”魂”が育っていくのを、大雑把に感じていたような気はします。
 ところで、映画「252」を何度か観てから、改めてepisode.ZEROを観てみました。何ていうか、前にUKIUKIが感じた以上に 綿密に作られたドラマで、ちゃんと観てよかった〜と思いました。

 早川勇作は、阪神淡路大震災で母と消防隊長だった父を亡くしました。そのとき父は火災現場から少女を救って爆発に巻き込まれましたが、レスキュー隊は父を助けに入ってくれなかったという思いから、 「何が起こるか分からない災害現場で、最後に頼れるのは 自分の能力と勘。」 「危険を恐れていたら、助けられる命も助けられない。」 と考え、チームプレイの意識が薄く、自分はあのときのレスキューとは違って命を投げ出す覚悟で救出活動をするのだ!と熱くなっています。

 西村純は、新潟県中越沖地震で瓦礫の中で生き埋めになっているところを、祐司らに助けられたことで、この道を目指しています。
 その時の回想映像で、現役レスキューとしての頼もしい祐司☆の姿が見られて 嬉しいです。宮内を呼んでます。そのとき宮内もいたのね。隊長は静馬だったのでしょう。
 特救隊の選抜試験に合格した西村に、祐司は 『お前なら、あの過酷な体験、レスキューに活かせる。いいレスキューマンになれるよ。待ってるぞ!』 と激励しに来ます。祐司ったら、光の当たり具合といい、なんとも カッコ良いのだ☆
 西村は、「レスキュー隊にとって、いちばん大切なのはチームワークだろ。」 「人命救助は一人で行うものじゃない。 全員の能力が発揮されて、はじめて人を救えるんだ。」と言って、同じチームでいながら早川とは意識が違います。

 女性初のレスキュー隊員が誕生するか!?と注目される水城マナ(上原多香子)は、選抜試験に合格したのは宣伝目的だったのかと悩みます。
 そんな彼女を はじめは足手まといだと思った榊圭吾(福井博章)、でもレスキューへの熱い思いはあって 正直な感覚の彼の存在もよかったです。
 木村光太郎(蕨野友也)はちょっといい加減ふうで、フツウな感じのあまり目立たない存在に思いました。

 そんなチームが、何かにつけて連帯責任を持ち出す特別講師の現役ハイパーレスキュー隊隊長 大野大介(伊原剛志)のもと、それぞれの熱い思いをぶつけ合い、必死になって厳しい訓練に挑みます。

 ところがその大野教官は、阪神淡路大震災にも出動していたのでした。そして 父親を見捨てたと早川が思っている人物だったのです。
 レスキューを諦めた早川の先輩消防士 沢木(袴田吉彦)は、子どもと引き換えにレスキューへの夢を諦めて、「お前なら解るだろ、遺される側の気持ち。」と早川に言い、勇作とつき合っている救急隊員の長峰由貴(満島ひかり)は、「勇作にもしもの事があったらと、怖くて堪らなくなるの。」と言いますが、それでも早川は 大野教官への反発心から無茶な救助活動をしようとして、大野に訓練から外されます。
 また西村は 火災現場の人命救助をする訓練で燃えさかる炎を目の当たりにして、かつて味わった死の恐怖がフラッシュバックしてパニックを起こします。
 彼らだけでなく研修生たちはそれぞれに挫折や葛藤を通して、仲間の意識が芽生えて成長していきます。
 終盤、実際の地震から発生した火災現場に取り残された少年を助けに入った早川は、壁の向こうの仲間を信じ、少年に向かって「あつし、お前は、”俺たち”が絶対に助ける!」と言うのでした。

 ところで、このドラマが描くレスキューの”魂”とは、ひと言にすれば 信頼関係!! 危険な現場でちゃんと人の命を救うために、何より必要なことなのだと思います。
 大野教官は厳しい訓練と連帯責任を通して、そのことを訓練生たちに理解させようとしています。
 臨時講師としてやって来たハイパーレスキュー隊隊長 篠原静馬(内野聖陽)も、早川にそのことを伝えようとします。技術的な能力を高めようとしない者は仲間に信頼されないのはもちろんだけど、人の命を救いたい思いがどんなに強くても「何より信頼されないのは、自分の命を簡単に投げ出すヤツだ。」と言います。命の大切さを本当に知った者こそ信頼できるレスキューマンだ!!ということですね。
 また、篠原祐司や宮内は、パニックを起こして落ち込む西村に 仲間の存在がどんなに大切かを伝えて励ますのでした。 『・・・あれが俺たちレスキューの最前線だ。 乗り越えろ! みんな、乗り越えてきた。 (宮内「一人で乗り越えるんじゃないぞ。」) そこに隠れている仲間と乗り越えろ。 仲間を信じて、みんなと一緒に乗り越えるんだ。』 信頼関係があれば、弱点も補い合って 高めあっていけるということですね。

 特別出演の内野聖陽さんと伊藤英明さんのシーンは少ないけど、大野と共に静馬と祐司が このドラマで描こうとするレスキュー隊員としてのプロの”魂”とはどういうものかというのを発信しているのでした。

 さて、UKIUKIがなんたって注目しちゃう祐司は、このとき 実力も自信もあるレスキューマンでした☆ 宮内という理解し合える仲間もいました。それなのに、あの事故で”仲間を殺した”という思いを乗り越えられずに辞職したんですね。。。映画では、新しい仕事を始めて頑張ろうとしても居場所が見つからず、レスキューの能力や勘は体が勝手に覚えているというか・・、でも まだ過去を乗り越えられないでいるという 2年前の輝くようなレスキューマンのこのときとは確かに違う祐司がいました。伊藤英明はこういうギャップを滲み出させるのが、上手いよ〜!!
 静馬は早川に「・・・俺にも、この世にただ一人だが、大事な家族がいる。 同じハイパーをやっている弟だ。 だから俺は、現場では死なん、絶対生きて還る!」と言っていたのに、その後あの事故で「俺は (救い出せない部下と共に)ここに残る」と言って、祐司に助け出されたのです。
 祐司は、静馬が兄だったから助けたかったというのもあるかもしれないけど、客観的に見て もう助けられない命と助けられる命が目の前にあったのですから、行動そのものは間違っていなかったと思います。
 二人の言葉や行動や思いが、嘘だったとか辻褄が合わないとかそういうのではなくて、それほど命の現場で生きることって、割り切れない複雑な思いとも日々闘うことになるんだと思いました。あ〜やっぱり、祐司が辞職するまでのドラマも観たかったな〜って気分が ちょこっとぶり返します。