ラブ・ファイル (1991)


 ジュリア・ミショナー(Daphna Kastner)は、つき合って2年のジャック(David Charles)にプロポーズされたものの決心がつきません。ジュリアは自分でも何がしたいかわからないけど、このまま惰性で生活するのは嫌で何とか変わりたいと思っています。彼女の気持ちを理解しようとせず、自分の都合だけで結婚を考えているジャックのプロポーズにどうしてもYesが言えないのです。
 そんなジュリアにある日間違い電話がかかってきて、何となく話し込んだ男ダニエル(David Duchovny)に胸の内をはき出します。二人は親にも友人にも言えないような丸裸の自分を語り合って心を通わせるのでした。そして次の日訪れたダニエルは、たった一日のつき合いでジュリアに結婚を申し込むのですが・・・。
 これは二人の男性にプロポーズされ、自分の生き方を見つめ直そうとするジュリアの物語。

 しかーし、この作品UKIUKIにとっては女性との関係を築くことに問題を抱えるダニエルの物語です。ダニエルは知らない女性に電話をかけるのをやめられないのでした。彼は女性と何とか良い関係を持ちたいと思っているのですが、でもずっと一緒にいることで自分の全てが縛られてしまうのを恐れて逃げ出してしまい、関係が長続きしないのでした。そしてまた別の女性に電話をかけるという繰り返しから抜け出せないのです。精神科医との会話のシーンで彼の抱える問題がわかるのですが、ジュリアに対して彼は今までに感じたことのない感情を持つのでした。ジュリアと出会い、問題を乗り越えようと一歩踏み出すことができました。この作品でもDavidが内面の変化を演じているところに、UKIUKIは注目します。

 二人は電話でずーっと会話するのですが、そのほとんどが性的体験談で聞いていて正直面白いものではありませんが、二人が心を解放させてバカな話をしながら、また嘘も交えながらも、本音の部分が滲み出てくる感じがあります。だからこそたった一日でもダニエルは初めて心から女性を愛してしまったのだと思います。でも正直言って、確かに心が通じ合えたとしても、あの会話だけで人を愛せるかっていうと無理があるようにも思えるのですが。。。
 身支度しながら電話で話すダニエル、ジュリアへの気持ちに気づくダニエル、結婚を決めたジュリアとジャックに自分が本当に愛していることを主張するダニエル、電話の内容ではなく彼の姿に集中すると、情けないんだけど真剣で、落ち込んだり調子に乗ったりかっこよくキメたり、優しさやジュリアを心配する様子・・・、実にいろんな感情を見せてくれるDavidに気づきました。UKIUKIは電話の向こうで泣いているジュリアに気づいて、ヤカンを焦がした子どもの頃の話をして、最後に「君のためだったら・・・」と言うダニエルが好きです。
 ラストで、二人の愛は時間をおいてこれから築いていく・・・という感じに終わっていたのが良かったです。無理に思えた部分がやり直せるって感じがしました。

 以前雑誌か何かで読んだDavidのインタビューで、「この作品でやっと映画俳優で食べていけると思った。」とありました。確か一週間ぐらい(短い?違ってたらごめんなさい)の撮影で何百万円かのギャラだったそうで、ほとんど主役だし、ある意味彼の記念作なんだと思って観ています。
 日本ではXファイルのヒットを受けてビデオ化されたのでしょうが、どうも邦題がしっくりこないように思います。