最高のともだち (2005)


 これはDavid Duchovnyの脚本・監督・出演作品で、2005年4月15日US公開しましたが、日本では公開が延び延びになってもう5年、それでもいつか観たい!と待っていました。さて未公開なまま、DVDが発売(2009年10月23日)されていたことはうかつにもノーチェックでしたが、今回BS放送される(2010年2月4日)のを発見、やっと観ることができました。

 番組表を見ていたときに、小さく書かれた原題に目が行ってラッキーでした。「最高のともだち」だけで、これだ!とは気づかなかったでしょうね。撮影の様子はネットで情報いただいて いくつかシーンを垣間見たりしてましたが、詳しい内容はほとんど知らないままでした。
 作品観てから思うに、とてもひと言では言い切れないよ〜って内容を、なんとも素直で わかりやすい邦題にしちゃったんですね。プロの技です。邦題からしたら、トミー(デビッド・ドゥカブニー、少年時代アントン・イェルチン)とパパス(ロビン・ウィリアムズ)の友情が見どころのメインなんでしょうけど、それだけでなく登場人物それぞれに繊細な思いを感じることができて、よかったです。

 Davidらしいな〜と思える要素があちこちにありました。Davidって、下ネタをカラッと出して平気な 陽気で飾らない人、それでいて繊細な内面を持ち合わせていると思うんです。そんな彼を鏡に映したような雰囲気の作品だと思いました。バスケシーンもあったしね。

 ”13歳のカギ”というのがあって、人は13歳の頃カチッと扉を開けるんですって。未来の可能性が開かれるんですね。大人の世界への扉でもあるようで、日本人の感覚よりは少し早いかなって気がしますけどね。ところがトミー・ウォーショー(デビッド・ドゥカブニー)は13歳の頃からその扉の内に閉じ込められているというのです。いえ、彼は今 パリで家庭を持ち挿絵画家をしています。愛する家族と幸せなんでしょう。客観的には大人になり人生前に進んでいたけど、彼の心は秘密を抱えて30年・・13歳でNYを出ることになった経緯や、パリにやって来て野宿をしながらも挿絵画家としてやっていくチャンスをつかんだという、そんなあれこれを心の内に秘めたままなのです。でも息子オデールが13歳になるのを機会に、妻と息子にその秘密を告白することを決意しました。


 ということで、1973年に戻ってNYを舞台にトミー少年(アントン・イェルチン)の物語が始まりました。
 話のスタートはママ、キャサリン・ウォーショー(ティア・レオーニ)との関係です。父は1年前に癌で他界、その悲しみが癒えないで感情が不安定なママの鎮静剤を(何粒飲んだかと)数える毎日。ママのベッドの下にもぐって寝ます。ママの寝息が聞こえていたら安心ですから。
 親友のパパスは、その頃には遅進者と言われていた人で、トミー通う学校で掃除などの仕事をしています。少し成長がアンバランスなのかな、年齢は大人でも 大人になれてないってところはあるけど、純粋で記憶力がよくって、みんなと一緒に野球もして楽しく遊べるし、見方を変えたら賢いなって感じるところもあります。トミーとパパスは一緒に肉の配達のバイトをして、女子刑務所の外にチップの小銭を隠してます。あと40ドルで緑のレディって呼んでる自転車が買えるんです。二人で他の人以上にけなし合ったりするのも、とっても仲がいいから平気なんですね。
 パパスの父はパパスが遅進者であることを受け入れられなくて、意地悪を言うんです。その意地悪に文句を言うのは、パパスではなくってトミー。父親にしても、自分で言いながら どうにもできない複雑な感情だったのでしょう。30年後(今)のシーンで、亡くなる前には 愛してる愛してるって何度も優しく言ってくれたって パパスが話していました。今思い出してもウルウルしちゃいます。
 トミーはメリッサとの初恋で どうしていいかわかんなくて・・・。ママは、メリッサと学校のダンスパーティーに行ってたトミーが許せません。思春期になったトミーの親離れが不安でしかたないようです。またパパスも、緑のレディを盗んだり、二人で貯めていた小銭を捨ててしまったり。嫉妬なんだと思いました。ママもパパスも、トミーが大人になっていくのが寂しいのね。UKIUKIだってそんな気持ちは共感できるけど、でも同時に喜ぶべきことだと我慢もできますよね。
 トミーは、パパスやメリッサやママのことを窓越しにいろいろ聞いてくれる女子刑務所の囚人レディに、いつの頃からか トミーのほうから話に行ってましたね。トミーからは顔も見えないけど、心を許せる存在になっていったんだと思いました。言葉はぞんざいって感じの女性だけど、彼女は意識してなかったかもしれないけど、なんだかママの代わりにトミーを励ましたり安心させてあげたり背中を押してあげたりって、今になってそんな存在だったような気がしてきました。
 バイト先の女ボスも、いかした心意気だったし。配達先の老母は、一瞬の愛(親子愛)を求めて切なかったし。・・・とにかく、いろんな人とのかかわりのなかで、いいことも悪いことも、楽しいことも辛いこともななどなど、いろいろあるわけで・・・。
 ある日、ママは鎮静剤を飲みすぎて植物状態になってしまいました。見たこともない親戚がやってきて・・・。トミーは堪らない気持ちである行動に!!
 囚人レディはトミーに「走るのよ!」と言って、トミーとの決別を宣言しました。トミーはやっと彼女の本名だけは教えてもらって、”走る”決意をします。そしてパパスに助けられてNYを出ました。パパスはちゃんと見送ってくれましたね。トミーはそのうちに帰るようなこと言いつつ、戻る気持ちはないままになってしまうのです。パパスはどんな気持ちで、その後過ごしていたんでしょう。


 トミーはNYを逃げ出したのでしょうか、それとも前進するために出て行ったのでしょうか。どちらにしても、トミーの秘密を聞いた妻は、過去に戻ってやり直すことを勧めるのでした。それにしても パリの隣人たちはロマンチックやわ〜。

 トミーはNYに戻って、レディを探し当てて訪ねました。母の墓前で寝そべって、ベッドの下でしていたのと同じようにスケッチを描きました。そして、パパスのもとを訪ねました。みんな いろんな変化の中で歳をとりました。でも、変わっても変わらない人と人との繋がりがありました。親友との繋がりを確かめることができて、レディともですね、トミーの心の扉はカチッと開放されて、改めて愛する家族と共に歩み出せるのだと思いました。

 上手く文章にできない思いにあふれた物語でした。でも、Davidらしいユーモアもあるし、それぞれに辛い現実を抱えながらもけっして暗くて重い感じではなくて、ハートウォーミングなラストを迎えました。 (comment 2010.2.12)