コニー&カーラ (2004)


 麻薬絡みの殺人現場を目撃してしまったためギャングから逃れてシカゴからロサンジェルスまでやって来たコニー(ニア・ヴァルダロス)と カーラ(トニー・コレット)は、”ドラッグクイーン女装した男”になって身を隠すことにしたところ、ゲイ専門ナイトクラブのショーで大人気になり、幼いころから抱き続けたスターになる夢を実現させます。ところがコニーがノーマルな男性ジェフ(ディヴィッド・ドゥカヴニー)に恋心を抱いてしまったり、二人がテレビに映されてギャングに居所がバレてしまったりで、大騒動。

 とにかくショーが最高! ステージのコニー&カーラやドラッグクイーンたちはユーモアたっぷりだけど魅せてくれるんです。そして観客のゲイたちがなんだかとっても温かく盛り上げてくれるんですよね〜。
 ”彼女ら”の中心的存在になってしまったコニーとカーラですが、そこにやって来るまではたいして心惹かれるような歌でもなく冴えないパフォーマンスで、二人の夢見る気持ちだけが上滑りしてるって感じだったのですが、ドラッグクイーンに変装してからの彼女たちは、生き生きとした歌声を聞かせてくれるし、とんでもなくケバいメイクなんだけどみるみる表情が輝いて美しくなっていくので目を見張りました。ニア・ヴァルダロスとトニー・コレットは本当に歌が上手いです。しかもドラッグクイーンっぽく低音を強調した太い声質の歌声(話し声も)にしているので、パワー溢れまくり! 思いっきりあんなふうに歌えたらスカーーーッとして気持ちいいでしょうね。
 でも彼女たちだけになるとやっぱり女性なんだわ〜。女であることがバレないように慌てふためき、恋心に悩み、ギャングの追跡に怯えています。彼女たちが命の危険を感じてギャングから逃げて来てるのがストーリーの根本にあるんだけど、そのくせドラッグクイーンになったことで思ったことが言える快感を味わい、ショーが大ウケして夢のディナー・シアターを実現しようという思いが高まるのです。でもドラッグクイーンだと恋愛が・・・、とっても複雑なんですけど、さっぱりと描かれているのがいいですね。

 ところでUKIUKIとしてはコニーが恋心を抱くジェフを中心に観ているわけで、ディヴィッドって普通の男が普通にもつ微妙な感情を自然に演じるのがむちゃくちゃイイんです。
 ずっと行方不明になっていた兄のロバート(スティーヴン・スピネラ)に会いに来たジェフ、ロバートはコニーたちと同じアパートに住むナイトクラブのバーテンで、電話で自分が女装するってこととかをジェフには伝えたのですが・・・。12才と16才で別れて以来の再会、ジェフは言葉が見つかりません。間違いだったって思ったのはロバートの方で、それからジェフは何とか理解しようと努力する姿を見せてくれますが、そうたやすくはありません。兄がゲイってことをすんなり受け入れられないし、それ以前にゲイそのものが理解できないし、どうして女装したいと思うのかも謎なわけで、でも頭ごなしに軽蔑したりしないのが救いです。それでも、自分がゲイの仲間になったり、そんなふうに思われたりはしたくないわけで、これってすごく普通(?)だと思うんです。そんな複雑な想いを持つ彼の存在が、この作品の世界をUKIUKIに近づけくれているようで、はち切れんばかりのドタバタ感も楽しくてたまらないわけだけどいい意味で作品を落ち着かせていると思いました。

 一方自他共に今がとっても幸せと言えるロバートにも心の傷が見えてきて、進んで家を出てきたわけでもなく両親に理解されなかった痛みを抱え、最近ふと家族のことを想ってしまった結果ジェフが尋ねてくることになったけど、いざ会ってみたら・・・というドラマの展開は、デリケートな感情を刺激してくれます。
 それにしてもロバートって男性姿の方がステキなんですけど・・・、女装した''ピーチ''さんっていかにもってオカマさんです。それに比べて''ピーチ&クリーム''の''&クリーム''さん(アレック・マパ)は女装が嵌り過ぎ、美しいというのではなくオモシロカワイイんですけどね。女っぽいコニーたちがバレないのは”彼女”のような存在があるからなんだわ。

 あっコニーとジェフのドラマを本当は真っ先に書くべきだったかな、ふふっ♪楽しませてもらいましたぁ〜。
 初対面のときコニーはまだ女性ね。ジェフったら流石!あんなふうにドアを開けて爽やかに微笑まれたらドキン☆ コニーのように落ち着いてアリガト〜って言えるかしら。。。
 2回目は素通りだけど、コニーったらハートに火がついちゃって可愛らしいんだ。
 3回目会ったときのシーンが好き。ドラッグクイーン姿のコニーにジェフは、あれっ感じいいなっと思いながら心中複雑、それより女装のロバートを見ていっぱいいっぱいなんですもの。
 4回目コニーの心が揺らいでるし、ジェフは自分はゲイではないことを分かってもらいたいわけで、でも正直な気持ちをコニーには話せているっていうのがいい感じ。
 いちいち二人が鉢合わせっていうの正直あんまり好きではありませんが作品のノリってことで、まあ5回目のはみごとなアクション(?)でしたが〜、コットン棒ですかコメディですもんね。お酒を飲みながら語り合うことに・・・、やっぱり打ち溶け合ってもジェフはノーマルとして頑ななんです。
 6回目、普通じゃないことに怒ってますね。

 兄弟喧嘩しているところにジェフの恋人メアリー登場。作品中で一番緊張感のあるシーンだと思います。ロバートを受け入れられないジェフが、メアリーに兄だと紹介するときの表情が何とも言えません。ところがメアリーに彼らのことを”化け物”と言われて、ロバートや仲間たちはもちろんコニーたちも傷ついたけど、ジェフだって茫然となってたぶん自分の感情と重なって心も痛んだでしょうし、自分が本当に求めていることを考え直すきっかけになったのだと思います。メアリーとも話し合ううちにジェフがたどり着いたのは、・・・彼らは決して化け物ではないし兄を受け入れるべきだと気付き、兄弟の関係を続けたいという思いでした。
 そんな思いをロバートに伝えに行って語り合うシーンは、ロバートの辛い過去も語られるのですが、ジェフの温かい気持ちが静かに広がってとっても素敵、大好きなシーンです。この明るくて元気いっぱいのコメディー作の中にあって兄弟喧嘩から引き続いてシリアスで異質な雰囲気でもあるのですが、なくてはならない大切な物語だと思います。
 そしてジェフは、傷つけてしまったコニーも訪ねて気持ちを伝えます。あらジェフったら、その目はやっぱり特別な気持ちを感じているよね。でも''僕はゲイではない''んですものね。

   さて、''スタンリーのディナー・シアター''オープンニングのショーにはデビー・レイノルズも特別出演して大いに盛り上がろうっていうのにギャングが登場、最悪なドタバタ騒ぎに陥ったものの、ラストは誰かさんに素敵に締めくくってもらいましたわ〜♪ 「ハ〜イ ジェフ!」にビクッとする可愛さとユーモアと祝福の中でのキス♪ お決まりっぽいハッピーエンドな展開でしたがOKでした。「人間 自分に忠実でなきゃ!」この言葉には励まされます。

 オマケ話です。
 ちょこちょこ映ってましたがバンドのオジサマたちが何気にステキなんですけど・・・。ラストの決定的瞬間にあらあらアナタたち賭けてたの!?見破ってたぁ?
 コニーとカーラを追ってきたギャングの手下ティボーが、フロリダ,セントルイス,ブロードウェイin NY・・・と根っから好きなんでしょうね、ノリノリでショーを楽しんでいるのが愉快でした。
 カーラの彼氏マイキーもなんかいい人よね〜。・・・

 ところで実際の社会では差別されがちなゲイやドラッグクイーンがとっても爽やかに描かれていて、その格好やメイクはもし目の前にいたら滑稽に見えるだろうな〜って面白さもあったりするけど、なんか親しみが感じられて彼らとはいい友達になれそうな感じ、いろんな事相談に乗ってくれそうでちょっと違った角度からアドバイスしてくれそうで人の痛みとか理解してくれそうな感じ。ただどんなタイプの人のなかにも、良い人もいれば悪い人もいるし、優しい人も意地悪な人も、強い人も弱い人も、明るい人も暗い人も・・・いるわけで、物語では彼らのいいイメージだけを見せているってことは分かっていますけどね。

 ということでこの作品、見応えある歌やショーが楽しめるし、コニーとカーラの一生懸命さに嫌味がなく、彼女たちの明るく前向きなエネルギーには元気を分けてもらえます。またドタバタしているようでも物語がいっぱい詰まっていて、心に伝わってくる感情に距離感がなく一緒にいるような感じになれるのが良かったです。

 気づいたのですが、主役以外の登場人物それも中にはチラッと何シーンかに出てくる人にだって、作品には描かれていないドラマを感じその人の人生や想いをふと想像してしまう作品に出会うと、すっかりお気に入りになってしまうんです。これもそんな作品でした。ジェフやロバートはもちろん、クラブの仲間やマスターやお客さん、ティボーやマイキー・・・・・あ〜満足!