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さくらん


 江戸の遊郭 吉原を舞台に、遊女らの思いや悲しみが充満している作品・・・なんですが、土屋アンナ演じるきよ葉・花魁(おいらん)となってからは日暮のキャラクターと 色彩や金魚の扱いなどで見せてくれる斬新な映像や 椎名林檎による音楽などのコラボで、暗くてジメジメした感じにならずに カラッと感情を発散させる感じに描かれていました。正直言って 好きな作品というわけではないのですが、新鮮な感じがして その描き方は おもしろいと思いました。
 きよ葉は 客に媚びないし負けん気強いし遊女でありながらも自分らしく生きようとするだけに辛いこともいっぱいあるけど、でも泣いていてもパワーを感じます。彼女だけでなく花魁の粧ひ(菅野美穂)、高尾(木村佳乃)、客の惣次郎(成宮寛貴)は きよ葉が本気で愛した男で お互い本気だと思ったし、倉之助(椎名桔平)は日暮のことを本気で愛した大名、あっ吉原一の通人であるご隠居(市川左團次)も、玉菊屋の女将(夏木マリ)ほか・・・チラッと出てきた花屋(小栗旬)まで、それぞれに存在感があり楽しませてくれるキャスティングでした。
 特に玉菊屋の清次(安藤政信)は、きよ葉が8歳で玉菊屋に売られて来たときから彼女を見守り続けています。もう初めから気になる存在でした。きよ葉に吉原での生き方をさり気なく諭すなかに、悲しみを共有してくれているような優しさを感じます。逃げようとした幼いきよ葉に、吉原にある咲かない桜の前で「この桜に花が咲いたら、俺がお前を外に出してやる。」というような約束してました。それは、咲くのを諦めた桜だったんですね。彼は常に控えめで感情を表に出さず、きよ葉が成長してきて確かにあると思うんですけど彼女への感情も心の奥に押し込め通しています。彼はどうしてここに居るのかな〜と思っていたら、遊女が生んだ子だったんですね。自分の境遇をよく理解し、彼もまたここでこうして生きるしかなかったのでしょう。
 日暮が倉之助に身請けされて 晴れて外の世界に出られることになったというラストに、あの桜の木を確かめに来た清次、そして日暮までも・・・。女も男も、出て行く者も残る者もそれぞれに、切ない余韻を残しつつも 小気味よさに助けられて後味がよかったです。