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アジアンタムブルー


 山崎隆二(阿部寛)は、エロ雑誌の編集という仕事を割り切ってこなしている。SM女優のユーカもそんな感じ。あるときユーカは、水溜まりに映った景色ばかりを撮っている続木葉子(松下奈緒)を、カメラマンとして山崎に紹介する。

 葉子の撮った写真が、いくつもいくつも作品中に出てくるのですが、とっても素敵です。水面に 景色だったり人だったりが写り込んでいたり、特に子どもの表情がいいしね〜、何でもない建物やちょっとした物が写り込んだりもしています。葉子が言うように本物より綺麗だし、周囲から隔離された一つの世界になってる感じ。

 またこの作品を通して、特に屋外シーンの映像が、雨上がりのように空気にすごく透明感があって 綺麗だと思いました。後半の地中海ニースでの景色はもちろん、前半 葉子が路地裏を歩いていたり、窓が開け放たれた彼女の部屋だったり、窓に映る景色も含めて 何でもないシーンでもそうなんです。よく見ると、隅々に存在する物や、背景や、影まで、細かいところにこだわっているな〜と思います。
 隆二が葉子のことを「土踏まずみたいだったな〜」と言ってるところがあります。彼女だけ ”綺麗”って。そんな映像だな〜と 思ったりもしました。彼女の世界と、隆二やユーカの世界は違っているようで、・・・でも人として求めているものはそんなに違わなかったような気がします。

 隆二は大学時代からの友人川上音彦(佐々木蔵之介)の妻 由希子(高島礼子)と不倫をしていて、でもそれって心から愛しているというのでもない大人の関係のように彼は言っているけど、ほんとうはどうだったのかな。仕事も不倫も上手くいってて、納得した人生を生きているようで、でも何て言ったらいいのか、ぴったりの言葉ではないけど何気に影のある感じの阿部寛が UKIUKIはいいなぁ〜と思いました。彼はコメディーっぽいのもいい味出してるようですけど、少ししか観たことありません。UKIUKIはどうしても渋い役を望んでしまってます。隆二は、彼の個性を際立たせるようなのではない地味な役かもしれないけど、内容はともかく隆二というキャラクターとしては、彼の醸し出す包容力で葉子も作品も支えていく感じがして良かったです。

 前半の物語では、隆二と葉子は出会ってからお互いに心惹かれたまま別々の世界に戻っていきますが、やがてふとした再会をきっかけに愛を意識し一緒に暮らし始めます。葉子は孤独だったんです。両親に見捨てられて祖母に育てられ、今まで見返り無しに人に優しくされた記憶がない。隆二のただのちょっとした優しさが、とっても嬉しかったんですね。ところが隆二の方だって、葉子と一緒にいたら自分は少し変われるかもしれないという、実は彼女に頼るというか支えを求めたようなところがありました、このときは。。。
 UKIUKIは、この二人の生活をず〜っとたどって、二人がどう変わっていくのか、・・・変わらないこともあるかもしれないし、素敵な雰囲気のままだったらいいけど そうでないこともあるかもしれない、でも二人の幸せのゆくえを後半じっくり観せてほしかったです。ユーカのキャラクターがとっても良かったし、他にも周りの人物との絡みのなかで、観せてほしかったです。

 なのに突然 葉子が余命ひと月の不治の病(末期胃癌)に倒れます。それで隆二は全てを捨てて、葉子が憧れていた地ニースで 残された時間を二人で過ごすことにしました。夢のようなロマンチックな展開ではありますが、UKIUKIとしてはお涙頂戴のラブ・ストーリーになってしまったようでガッカリ。後半はもう、現実的な感覚でいろいろ考えたら楽しめないと思い、ただ雰囲気と美しい映像を楽しむことにしました。