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ユナイテッド93


 2001年9月11日、アメリカ国内の空港を飛び立った旅客機4機がハイジャックされ、2機はワールド・トレード・センターに、もう1機は国防総省ペンタゴンに激突炎上したが、残る1機 乗客40人を乗せたユナイテッド航空93便は、なぜかペンシルヴェニア州に墜落した。この作品は、”遺された人々や管制センターはじめ関係機関への入念な取材を行い、当時の状況を可能な限りリアルに再現、ありのままを徹底したドキュメンタリー・タッチの手法で撮り上げた”というノンフィクション・サスペンスだそうです。パイロット、管制官、ほか本職の方が多く出演し、それらの方々と無名のプロの俳優で演じることによっても、現実感を出そうとしたそうです。

 こんな映画ができて、その映画を観ようとしているUKIUKI、遺族にとってどうなのかな〜・・・不謹慎かなぁ・・・って心配で、特典の方から見ました。もう最初っからずっと泣きっぱなしでした。何人かの遺された人たちの思いや、亡くした人の思い出話が語られていました。搭乗者全員の遺族の理解が必要だったと思います。程度や内容に差はあっても、皆さん何らかの迷いがあったでしょうけど、・・・映画は出来上がった! 事実が忠実に描かれていた、誠意を感じた、遺族への敬意を感じたというような何人かの遺族の好意的な感想がいくつか出ていました。

 この映画は、結末の決まっている物語を観ることになります。その時何が起こっていたか、その時人はどうしたか、をたどる映画です。しかし当然機内のシーンは”可能な限りリアル”ではあっても想像です。
 キレイ事になってるかな〜、それでも仕方がないと思って観始めました。でも、そんなふうでもなかったです。そして恐怖は感じたけれど、冷静に観ていました。終盤乗客たちがこのハイジャックは自爆テロだと理解し、何人かは犯人から操縦桿を取り戻そうと犯人たちに立ち向かっていこうとしますが、それと平行して家族に最後の言葉を残そうと電話をする乗客たちのシーンは悲しかったです。でも全体的に、むやみに感動を誘おうとしたり、娯楽性を追及していると感じるつくりでもなく、良かったです。
 脚本・監督はポール・グリーングラス。音声解説での話し方からは誠実な感じを受けました。彼は「ボーン・スプレマシー」の監督、もちろんこれは娯楽映画ですが、お気に入りの作品の監督と思うと何となく信頼感をもって観てしまうような気もしました。
 犯人にとっては長い計画準備期間を経て、しかも命を懸けるほどの信仰と理屈に支配された精神状態でのテロです。それでも思いがけない離陸の遅れから、心の揺らぎが生まれたようです。一方、乗客にとっては日常の営みのなかで突然起こった事件ですし、また管制官ら関係者にとっては誰も想像できなかった不測の事態。ということで観ていくうちにこのハイジャックに対して、NY管制センターとワシントンの連邦航空局F.A.A.さらに軍との情報伝達機能がなんともモタモタした感じで実質働いておらず、上層部からの指示や承認も得られないという状況で、対応や行動がほとんどなされていなかったということが分かってきます。そういうところにいちばん怒りを感じると、インタビューで話している遺族の方がいました。
 UKIUKIが観ていて乗客や犯人の心情などとは別の部分で思ったのは、今 同じ失敗を繰り返したら許されないでしょうが、当時誰も想像していなかった状況への対応は実際難しかっただろうなとか、コックピットのドアを簡単に開けたことが直接的にはいちばんマズイ!って思った瞬間で、コックピットが安全に隔離されていれば自爆による激突や今だったら速やかに実行されるかもしれない軍からの撃墜よりは少ない犠牲で着陸できる可能性があるとか、・・・でもいちばんはこういうテロが起きてしまう前にくい止めないといけないし、その前の問題の方が大きいな〜と思いました。

 監督がラストシーンのことを語っていました。
『乗客がどこまでたどり着いたか正確には不明だ。
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 私にとってはこの映像があの日のイメージだ。
 解決策が見つからない場合の明日のイメージでもある。
 世界の舵を巡る戦い。
 まだ別の道を探す時間はある。』