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かもめ食堂


 フィンランドのヘルシンキで、一人の日本人女性サチエ(小林聡美 )が ”かもめ食堂”という食堂をオーップンさせました。ところが、いつ見ても開店休業で、やっと来たお客は、日本カブレの青年だけ。それから彼がきっかけになってやって来たミドリ(片桐はいり)と、偶然店に入ってきたマサコ(もたいまさこ )が店を手伝うようになり、やがて地元のお客も入ってくるようになって、ちょっとした心温まる交流があれこれ描かれていきます。

 サチエにしたって ミドリだって マサコだって 何故ここにやって来たのか、何となく語られてはいるけど、実際のところ何があってどういう経緯で ひとりここまでやって来たのか、何よりどこでどういう人生を送って来たのか全く分からない人物たちです。異国の地で出会った何も知り合わない者どうし三人に、これまた青年だってお客たちだってその背景はほとんど描かれていないという 地元の人々も加わって、店外のシーンではフィンランドの市場や自然が美しく映され、店内のシーンでは素朴な日本食メニューのお店なんだけど店の収支も全く気にすることなく、だからそこには生活臭といったものは無く、とにかく ゆったりのんびり静かな雰囲気の中で、何がどうってことはないんだけど ほんわかと温かい人と人の交流が生まれていきます。それは何の拘束もない交流なんですよね。それでいて 諸々の事情に左右されないから、裸の魂で触れ合っているような心地よさがありました。キャストの方々の個性とフィンランドの空気のせいでしょうか、あまり湿っぽくなることなく ふとユーモアを感じたりもするのが良かったです。いい意味で現実逃避して、心を休めることのできる映画だと思いました。