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バベル


 モロッコで発射された一発の銃弾がアメリカ人女性に命中し、そのことがアメリカ、メキシコ、日本の物語に繋がっていくという物語なのかと思って観始めたのですが、ちょっと違ってました。確かにそれぞれに関わりがあるのですが、それは たまたま ということで、描かれている内容は独立しているように思いました。つまり、それぞれの人の思いや 抱えている問題に、影響しあっている関わりではないと思うのです。だから、関わりがあること自体に、期待していたほどの脚本の妙を感じることはなく、一つの映画に物語をいくつも詰め込む値打ちとかおもしろさを、個人的にはあまり感じませんでした。

 まず初めにリチャード(ブラッド・ピット)とスーザン(ケイト・ブランシェット)夫妻が、二人の時間が必要だからといって・・たぶん3人目の子を突然死で亡くしたことで信頼感が壊れかけてるというのが後から分かってきましたが、突拍子もないモロッコ旅行をしていることが二人の雰囲気からすると不自然で、物語を成立させるためなんだと思えてしまいました。それに、スーザンが撃たれて死にそうで助けを求めるシーンが中心になり、あの状況で二人の絆が修復されていったとしたら、その部分は・・スーザンの気持ちが変化したのが分かるのはあそこかな〜と ほんの少しで、ブラッド・ピットとケイト・ブランシェットなのに、じっくり描かないのは勿体無いって思いましたが、時間的に無理なんですよね。

 リチャード夫妻と、スーザンを撃った少年とその家族やほかモロッコの人々、リチャード夫妻の子たちを世話するメキシコ人乳母アメリア(アドリアナ・バラーザ)とその家族、そしてスーザンを撃った銃の元所有者ヤスジロー(役所広司)とその娘チエコ(菊地凛子)。それぞれの物語が、その人物にとってはけっして軽くない話だとは分かるけど、特にチエコが自分と周りの人との関わりや母親の自殺のことで気持ちに整理がつかなくて苦しんでいるというのは分かるけど、どの物語も ことさら刺激的にまた途中悲観的に描かれているわりに、それほど心に響いてこなかったです。そして結局結末は、何となく生温いところに収まった感じでした。チエコの物語は、最後の父とのシーンに説得力を感じなくて、どうせなら父や母とのことも含めてそれだけで一つの作品にして深くじっくり描けばいいと思うし、他の物語は、映画として観たいと思うほどの内容ではなかったように思いました。

 そうそう リチャード夫妻の子どもマイク(ネイサン・ギャンブル)とデビー(エル・ファニング)が、アメリアに連れて行かれたメキシコでの結婚式やその前後に見せる、思いっきり可愛い笑顔や 不安、驚き、恐れ、悲しみなどの表情が演技とは思えないくらいにリアルで、すごいな〜って思いました。

 またしても、評価の高い(世間の評判は?)作品なのに、UKIUKIはフツウというか・・腹立たしくなるほど嫌 つまんな〜いっていうのが たま〜にありますが、そういうのではなかったんですけど、ただその良さをあまり”感じる”ことができなかったです。初めの印象とか俳優さんのイメージとかを引きずって観てしまったような気もして、自分の感受性を柔軟にしたいな〜って気分です。