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墨攻


 歴史アクション超大作って、どちらかというと苦手なんですけどね。10万人の敵に対して、4千人で戦わずして城を守らせたという男のお話。それだけで感動ですもん! 観たいなぁと思ったんです。あとはどうやって守るのか興味があるし、それをどんなふうに観せてくれているのか!?って思ってました。

 紀元前370年頃の戦国時代の中国を舞台に、攻撃をせずに守り抜く“非攻”と”兼愛”を信念とする集団“墨家”の天才戦術家 革離(アンディ・ラウ)の活躍を描いていました。そうはいっても、梁王に援軍を求められた墨家は拒否をしたので、革離が単独で助けにやって来たのだということで、まあラストでも墨家に戻ってはいかなかったのですから、彼は一匹狼という感じですね。でも彼は墨家の信念で生きているわけで、墨家のなかで革離はどういう存在だったのかについては何も描かれてなくて、ちょっと残念でした。作品的には必要なかったのでしょうけど、UKIUKIは観たかった気がします。

 これ、なんと原作は日本の小説とそのコミックなんですね。中国・日本・香港・韓国合作の映画だそうで、映像と同様 スケールがデカい。スタッフのなかに日本人のお名前が何人もあります。そしてジェィコブ・チャン監督は、この映画に反戦や平和への思いを込めたというのをどちらかで読みました。なんだか合作であることが嬉しいです。

 攻撃から城を守るためには、敵の手を読んだそれなりの秘策が必要で、火のついた矢をを放たれても燃え広がらない工夫やら、地下道を掘ってまで進入してくる敵を迎え撃ったりなどあれこれ、そういう工夫が観ていておもしろかったです。そして、革離が人々の信頼を得ていくところも、いい感じでした。
 革離は常に冷静で、自己の利を求めることもなく、城を持ち堪えさせようと巧みに策を練り人々を動かしているクールな男なんだけど、でも守るだけの戦いでも 多くの敵を殺すことになってしまったことに心を痛めたり、たった一人の子どもや男に無駄な死をさせまいと 必死になって止めたりします。最終的に、革離は心の中では特別な存在になった女性を救うこともできず、梁王は彼に助けを求めておきながら、それが上手くいけば逆に彼の影響力に不安を感じた末に裏切り者のように扱い、彼は城を守りぬいたと絶賛されるヒーローとして描かれませんでした。それが、とってもよかったと思います。革離は 孤児たちを連れて去っていくという結末で、その雰囲気がまたよかったです。

 戦いは位の高い者にとっても低い者にとっても悲しみがいっぱいで、また権力にしがみつく者の心を蝕み卑しくさせたりする。戦うことは、どんなふうにしても 誰にとっても むなしいものです。