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らくだの涙


 モンゴルの遊牧民の生活を映したドキュメンタリー。彼らは、らくだや羊と共に生活していて、らくだの出産期が終わろうとする頃でした。
 難産のショックで育児拒否をしている母らくだ。どうしてやっても赤ちゃんらくだを寄せ付けません。母らくだに甘えられないしお乳ももらえない赤ちゃんらくだは、人間の手から少しはお乳をもらうものの、だんだん弱ってきます。

 何もかもゆっくりだし静かですね。機械音が全くしないんだ。「あぁ〜」「あっ」というらくだへの掛け声は囁くぐらいの声です。他聞こえるのは、らくだの唸り声と足音だけ。それと風の音(砂の音)が時々聞こえてる。赤ちゃんらくだの小さな鳴き声は、悲しげでした。人の話し声や赤ちゃんの泣き声まで静かです。
 砂嵐がやってきたときはすごい音で怖ろしかったけど、あのテントのような家はびくともしてなくてスゴイと思いました。

 お坊さんの話、精霊がどうこうというのはともかく、「今の人間は富を求め大地から奪うばかりで・・・、この地上で暮らすのは私たちが最後ではなく続く世代があるのを忘れてはいけません。」とは、”富を求め大地から奪うばかり”の人たちにはとても見えないのに。。。私たちにこそ、忘れてはいけないことですよね。

 らくだの親子が仲良くなれるよう、県庁の町に行って馬頭琴奏者を呼んでくることになりました。子どもたち兄弟で呼びに出かけます。小さい弟も上手にらくだに乗ります。町にはいろいろな物があってちょっとびっくり。テレビがほしくなる弟、テレビゲームもしたそうです。優しくてしっかりした兄です。
 そして次の日馬頭琴奏者がやってきて”フースの儀式”をするのでした。
 馬頭琴の音色とお母さんの歌声を聞いて、だんだん母らくだの気持ちが落ち着いてくる様子が不思議でした。そして寄り添う赤ちゃんらくだを嫌がらなくなり、ついにお乳を飲ませるのでした。お乳を吸わせて涙が溢れる母らくだ。自然な本能を呼び覚ましたという感じです。これって奇跡のようだけど、こうなるとわかってこの儀式をしているんですね。見つめる人々、大人も子どもも静かに喜ぶ顔が素敵です。「鳴き声が違うな」「よかったよかった」「もう安心だ」「本当によかった」と静かに離れていく人々。うちに入っては「何ともいい気分だ」と、みんなで馬頭琴に合わせて歌を歌ってくつろいでいました。観ているUKIUKIもいい気分です。
 ・・・あれれ、テレビを買ってもらったようですよ。このオチは、ドキュメンタリーにしてはなかなかのもんでした。笑って、おーしまい!って感じでした。

 映像に出ている以上に人々は厳しい自然のなか生活しているのだと思います。’でも’と言うより’だから’かな、みんな静かで穏やかで優しいです。映像に出ていないだけでなく、あまり怒ったりはしないんじゃないかな。だって、言うこと聞かない母らくだにだって怒ったりしていなかったもの。
 ものすごく自然ばかりなようで、焚き木でも乳でもらくだやたぶん羊の毛でも必要な分だけ自然や動物からの恵みを得るということなど、人間本来の生きる姿を存分に見せてもらうと共に、最後の方になって近代文明の産物も浸み込んできているのが分かって、その調和を保てればいいな〜と思いました。けっして加速度的に侵食されることだけは避けてほしいなと願うばかりです。