My Comment

フライトプラン


 航空機設計士のカイル(ジョディ・フォスター)は、彼女が設計に関わった最新鋭のジャンボ旅客機内で最愛の娘ジュリアが忽然と姿を消してしまったので、勝手知ったる機内で必死になってジュリアを捜しまわるのですが見つかりません。

 機内のシーンに入るまでのオープニングからしばらく続くシーンで、カイルの置かれている状況がよく分かります。カイルの夫は、彼らが住んでいた建物で自殺と見られる転落死を遂げていた。突然の不幸に、カイルもジュリアも深い悲しみと同時に漠然とした不安感に包まれている感じ。さらにカイルには、夫の気持ちに気づかなかった自分への後悔もあるでしょうし、いえ確かに彼とは穏やかな愛情に満ちていた関係だったはずという思いもある。
 それで、夫の棺と共に二人は実家に戻るために飛行機に乗ってのこのアクシデント。娘には愛情が足りなかったなんて後悔は決してしたくないという思いが異常に大きくなっているようにも見えるカイルの強さ。彼女のほんとうの心は今すごく弱くなっていると思うし、機内でカウンセラと話していたシーンにはそれも垣間見られたけど、とにかく彼女は強引なほど自己主張します。  気持ちは分かるのですが、機長や乗務員また他の乗客に対する心遣いのない彼女の常軌を逸したような態度がここそこに見られ、そのうちにジュリアの姿を見た人は誰もいないとか搭乗記録がないとか搭乗券も見つからないし、さらにジュリアは夫と一緒に転落死していたという報告まで出てきます。でもジュリアの棺はないんですよね。。。
 この物語のメインテーマというか、ジュリアの行方不明はカイルの主張する誘拐かそれとも彼女の妄想かということになっていくわけで、それをあれこれ想像しながら観ているわけです。ところでこれ、”ジョディ・フォスター扮するヒロインが機内でいなくなった娘を探すミステリー・サスペンスで、結末にどんでん返しがあるらしい”という予備知識だけで観始めた作品。っで、もうどうしてもカイルの妄想にしか思えない状況に展開していくんです。だったら結末は誘拐!・・・というのは単純すぎるゾ、まさか宇宙人に誘拐されるってのはないとしても(笑)、なんか一捻りした彼女自身の謎の部分に答えが行き着くのではないかと想像していたら、あ〜そうなんだ〜!という特に度肝を抜かれるというほどではない結末に収まっていきました。

 ところで、カイルはジュリアが機内のどこかにいると確信しているわけですが、周りの人々の反応やもたらされる情報から、妄想だかどうだか本人も実はあやふやになってきたのではないかという感じ、だからそんな自分を許さないためにもあんなふうに狂気に満ちたような突っ走り方になっていったのではないかと思えます。でも、観ていていい感じはしませんでした。だから、後で特典見たら「ジョディは観客に感情移入させられる・・・」とかって語ってみえる方がいましたけど、UKIUKIは彼女に全く感情移入できませんでした。子を想う愛情からだったら、たとえフィクションの映画でだって 何をしてもいいんかい! というか、子を想う愛情から”ということで”ああなっていくことが心地悪かったです。
 機長をやってた俳優さんは悪役が多いそうで、悪者では?と思わせるひっかけだったようですが、UKIUKIとしては彼は乗客全員の安全に責任のある立場だから、カイルには精いっぱい誠実に対処してでも毅然とした判断をしてカッコいいゾと思って見ていました。ラストの彼の謝罪もカッコよかった♪
 そして悪者がUKIUKIには意外な人物たちだったところは、おもしろかったです。彼らの企みは、いっちばん初めの段階から繰り広げられていたというの、気づかなかったよ〜。

   しかーし、あのいちばん普通な感じの結末から逆のぼって物語を振り返ると、納得できない展開や許せない思いを残す後味の悪い作品でした。
 なんといっても、あの結末からすれば、ジュリアの姿を見た人が誰もいないというのはあり得ません。また、最後に犯人をあそこに閉じ込めるだけでよかったやん!って思うのです。あの爆発は必要なかったし、母の姿をけがしています。そしてアラブ人に対する誤解、それは乗客の気持ちを揺らめかす意味もあったのでしょうが、とにかくカイルの勝手な思い違いだったわけで、彼らへの謝罪がないなんて。。。
 まあ、たいがいのことはいちいち突っ込まずに映画を楽しみたいと思っているし、この作品もひと言でいえばふつうに楽しめた感じなのですが、結末があれで感想を書くとなれば、無視できなかったということです。