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エターナル・サンシャイン


 2004年バレンタイン・デイ、その日ジョエル・バリッシュ(ジム・キャリー)は目覚めが悪く衝動的に仕事をサボってモントーク駅に向かいます。電車で出会ったクレメンタイン・クルシェンスキー (ケイト・ウィンスレット)は、彼に何かと話しかけてきます。第一印象は鬱陶しい感じ、あんまり好きじゃないな。結局ジョエルはクレメンタインを家まで送るのですが、彼女「ウチで一杯どう?」って出会ったばかりの人に! お互いビビッとひと目惚れというのではないけど、気にはなってるみたい。

 恋人の記憶を消す物語よね!って予備知識だけで観始めました。ある一定の時間の記憶を消すというのではなく、ある人の記憶だけを消すという発想がおもしろい。そういうのUKIUKIの興味を誘います。

 二人は氷の張ったチャールズ川に寝っころがり星空を見上げたり、・・・素敵な時を過ごします。が、突然雰囲気がガラリと変わり、そしてジョエルは
『クレメンタイン・Kは記憶からジョエル・Bを消去
 彼との過去を話さぬよう』(ラクーナ社)
という通知を受け取ります。

 わぁ〜〜〜複雑!だんだん頭が混乱してきます。UKIUKIには理解不能かとめげそうだったのですが・・・。実は冒頭部分はラストに続くシーンで、その後ジョエルも記憶を消してしまった後から始まっていることが分かりました。最後まで観て、リピートするとスッキリです。BGMも素敵だし、UKIUKIとしてはクレメンタインやジョエルが好きになれる人物というのでもないのに、よくできてるな〜いいな〜と思える作品になりました。

 クレメンタインとの出会い、他にもあったんだ。それが前のことだとわかってきます。時間軸を逆のぼっていることや、場面の移動が不思議な感じだったりと、構成がおもしろいです。クレメンタインの髪の色に注目すると、そのシーンがいつなのか、だいたい分かるようになっているようです。  怪しい雰囲気に入っていったかと思えば、ラクーナ社スタッフのいい加減そうな仕事ぶりなど可笑しなところもあったり、またジム・キャリーは面白さを極力抑えて彼だということを忘れてしまうほどシリアスで、そんなジムがすごく良かったし、たまにあ〜やっぱり彼らしいと感じるところも少し見せてくれました。

 クレメンタインが不幸だったかどうかは大いに疑問だけど、自分がまいた種のような現実から抜け出すためか、ジョエルから向けられた侮辱に我慢ができなかったのか、気まぐれか・・・、ジョエルの記憶を消去してしまいました。
 一方ジョエルもラクーナ社のスタッフによりクレメンタインの記憶を消去してもらってる。その過程で彼の”失う記憶”が次々浮かんでくる。この作品の多くの部分はそれがずっと映像として映し出されているのです。彼の能の中のシーン。だから時に幻想的に場面が移り変わっていったりしたんだ。そして幸せな瞬間を思い出していくうちに、ジョエルは素敵な記憶を残したいと思った。さらに途中から戻ろうとして睡眠を覚まそうとするけど、失う記憶の中のクレメンタインと逃げようとするけど、彼女を記憶の底に隠そうとするけどそれは困難なことなのです。
 二人のほんとうの始まり(出会い)の記憶にやってきました。・・・彼女「さよなら」彼「愛してる」彼女「モントークで会いましょう」やった〜〜〜っ♪ 記憶に残ろうとした彼女のそっと囁いたひと言が、潜在意識の中に残ったんですね。冒頭シーンへの逆伏線でした。

 そうそうジョエルの失う記憶のシーンに織り交ぜて、現実のシーンも描かれています。二人と関わる周りの人物、ラクーナ社のDr.ハワード・ミュージワック(トム・ウィルキンソン)とスタッフのメアリー(キルステン・ダンスト)、スタン (マーク・ラファロ)、パトリック(イライジャ・ウッド)らにもまたドラマがあって、それがけっこう物語全体にリアル感を出していると思いました。とくにメアリーが二人をラストに導いた心の内を想うと・・・、これはこの物語への問いかけですね。

 ラストは、お互いに相手を蔑む言葉を残して消去し合ったという事実を知ってしまった二人がどうするか・・・です。
 ところで、クレメンタインの第一印象はあんまり良くなかったと初めに書きましたが、その後もUKIUKIの感じではけっして素敵な二人、素敵な関係ではなかったです。それでも二人は、完璧でなくてもいえ嫌になるような人でもなぜかやっぱり惹かれ合う。・・・そういうのが運命の人!っていうことなんでしょうね。