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あらしのよるに


 ある嵐の夜に、偶然逃げ込んだ山小屋で出会ったメイ(声:成宮寛貴)とガブ(声:中村獅童)は、暗闇で話をするうちに、自分たちは似た者同士なんだってことがわかって友情が芽生えます。そして二匹は“あらしのよるに”を合い言葉に翌日再会して、一緒にお昼ご飯を食べようと約束します。ところが、ヤギのメイが待ち合わせ場所で待っていると、そこに現われたガブはなんとオオカミだったのです。

 アニメはあまり観ないのでよく分からないけど、UKIUKIのイメージとしてはお子さまアニメって感じがするキャラクターや景色、その絵や動きって感じで、そして音楽も心地良く、UKIUKIはこういう素朴な感じのアニメって好きです。なのにこの違和感はなんだろうっていう思いがジワジワしてくる作品でした。
 オオカミとヤギが仲良くなるなんて自然界の摂理に反しているわけで、だからファンタジーの世界で描かれる二匹の純粋な友情にホンワカ気分を味わいながらも、垣間見られる迷いや葛藤に危険な雰囲気も感じるのです。食うか食われるかの関係なんだから、友達になったら飢え死にする! それはオオカミにとってもヤギにとっても仲間全体の問題!! 確かにその通り、やっぱり彼らはいけない関係なわけですよね。でも、だからこそ二匹の気持ちは強くなっていく。

 彼らそれぞれが自分に言い聞かせるように、そしてそれが嬉しくって堪らないように言っていたように ”私たち(俺たち)は秘密の友達”だったのにね、・・・でも秘密じゃなくなっちゃった。仲間に促されて、お互い相手を騙して情報を聞き出すつもりがそんなこともできず、
「ほんと、えらいことになっちまったっすね。」
「どうします?」
「行くか、帰るか、どっちかっすよね。」
「わたしを食べて終わり!っていうのもありますよ。」
「えっ、ハハハハ、それができりゃ簡単だ。」
ここがとっても印象的。ここで物語が大きく動いていきました。

 こうなったら行く所まで行こうと決意して、「絶対また生きて会いましょうね」と無謀な行動にでるのです。あれは身を投げたのではなく、二匹だけで”生きる”道を選んだんですよね。 そしてもう戻る所はない彼らは、あの険しい山の向こうには緑の森があると信じて旅立ちます。

 メイって男の子なんだか女の子なんだか、それに年齢設定はどうなってるんでしょうね、UKIUKIにはよくわかんないんですけど、なんだか観ているうちに、二匹の間にあるのは友情なんだか愛情なんだかわからないほど、とにかく強い気持ちで結ばれていき、”命をかけてもいいと思う友達”になっていったのです。しかしこれは、お互いの気持ちを受けてこその気持ちだったんですね。

 オオカミたちはけっして彼らを許さない。どこまでも追ってきます。ついに仲間だったオオカミたちとの戦いに挑んだカブは、そこで雪崩に巻き込まれたショックで何もかも忘れてしまいました。

 メイが見た緑の森、これって幻覚の中の世界のような気がします。そして記憶をなくしたカブとの再会。 食いたい!食われたくない!という本来の姿に戻った二匹を見せます。それを観て、悲しいんだけど納得してしまう。
 でも「あらしのよるに」という合言葉を聞いて、カブは二匹の時間を思い出します。そして、彼が願っていた通り、二匹一緒に満月を眺めることができました。「もう私たち、ずっと一緒にいられるんですね♪」「ずっと、ずっと一緒っす!」とっても素敵なラストだけど、でも願いが叶ったのはこれは幻覚の中ですよね。メイは雪の穴の中で、ガブは雪崩で、命の火が消えたのだと思います。

 許されない者同士が貫き通した純粋な友情を描きつつ、実は最後まで許されなかった厳しさを描いていると思いました。